8月8日
16年中間期は生保を中心に苦戦を予想、新契約好調も投資収益悪化が打撃に

本土保険銘柄による2016年6月中間期の決算発表が、まもなく本格的にスタートするが、BOCIは新契約価値の力強い伸びを見込む一方、生保系の大幅減益を予想している。投資収益の悪化に加え、従来型商品をめぐって責任準備金の積み増し圧力が高まっていることが背景。低金利環境の下、EV(エンベディッドバリュー、保険会社の企業価値を示す指標)の長期リスクを評価する上で、「投資家は各銘柄の商品構成を見極める必要がある」との見方だ。個別では長期投資視点から、新華人寿保険(01336)、中国平安保険(02318)、中国太平洋保険(02601)を有望視する半面、中国人寿保険(02628)に対しては慎重見通しを明らかにしている。

保険料収入の急速な伸びとは裏腹に、本土保険セクターの年初からの株価パフォーマンスは業種別で“ワースト”の部類となっている。投資収益の落ち込みに加え、生保各社の資産・負債のデュレーション(資産運用における投資期間と保険金支払いまでの期間)のミスマッチによる逆ざやリスクの高まりに対し、市場が警戒感を高めていることが理由。P/EV倍率(株価EV倍率)を見る限り、生保各社のバリュエーションは過去最低水準にあるが、BOCIは単純に割安銘柄の買いを推奨できる状況にはないと指摘。一部銘柄は短期の利益成長を重視するあまり、長期の採算性を犠牲にしているとした。

保険商品販売の好調を受け、生保銘柄の16年上期の新契約価値は前年同期比30%前後の伸びを達成する見込み。ただ、一部銘柄はEV算出に際して投資リターン想定値の下方修正を迫られる可能性がある。BOCIはこの点で、すでに50ベーシスポイント分の下方修正見通しを予測値に織り込んだものの、一部銘柄の新契約価値は予想をさらに20%余り下押しする可能性があるという。また、一部生保銘柄では資産・負債デュレーションのミスマッチがさらに悪化しているとし、生保系への投資においては各社の商品戦略、価格戦略の違いを見極めることがより重要になると指摘している。

一方、損保銘柄に関しては、自動車保険の料率自由化の流れを受け、6月中間期に経常収益の伸びが減速する見込み。それでも減益率は縮小する可能性が高いという。BOCIは損保各社の保険料収入が前年同期比2.8-12.0%の伸びを示すと予想し、混合率(損害率と事業比率を合わせた損保の収支指標)については全体で94-100%を見込む。続く16年下期に関しては、中国の洪水シーズンが例年より早く始まったことが逆風になるとの見方。農業関連などの各種保険金支払いの増大を予想している。

BOCIは保険銘柄、特に生保にとって最も困難な部分として、資産運用を指摘している。本土A株市場の低迷だけでなく、責任準備コストの増大や低金利、資産・負債デュレーションのミスマッチなどが理由。16年上期の総投資収益に関しては、個別に前年同期比21.1-44.8%落ち込むとみて、運用リスクを最大の懸念材料としている。