主要株主の株式買い増しが短期の支援材料、ファンダメンタルズには不透明感

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
01988 中国民生銀行 (チャイナ・ミンシェン・バンク)  7.99 HKD
(07/19現在)
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香港証券取引所によると、中国民生銀行の盧志強副会長は7月11-14日、同行A株4億4800万株を総額40億元で取得した。同副会長は泛海控股(China Oceanwide Group)の会長でもあり、中国民生銀行の持ち株比率は15年6月末時点で2.3%。BOCIによると、この間の追加取得で、持ち株比率は4.6%に上昇したとみられる。BOCIは同行株主の多様性や新たな取締役を決める株主総会の開催予定を考慮し、一部投資家が議決権の維持を目的に、株式を追加取得する可能性を指摘。これが思惑買いにつながるとみて、同行A株の目標株価を引き上げ、株価の先行きに対する従来の弱気見通しを中立的にアップグレードした。H株に関しても同じ理由で目標株価を引き上げたが、銀行業況の先行き不透明感に触れ、株価の先行きに対しては中立見通しを据え置いている。

盧副会長による今回の株式買い増しは、同行株主が自らの発言力の維持を望んでいることを示唆した。中国最大の民営の株式制商業銀行(JSB)である同行の株主構成は多様で、筆頭株主の安邦人寿保険でさえ、持ち株比率は17.8%。こうした環境下では一定水準以上の株主(持ち株比率1%超)にとって、議決権の数や取締役会におけるポジションが極めて重要となる。実際、同行株主のうち2社、華夏人寿、東方集団(600811)は互いに連携して同一株主グループを形成する動きに出た。こうした中、同行はまもなく、新たな取締役会メンバーを決めるための株主総会を開催するとみられ、一部株主が株式の追加取得に動く可能性が残るという。

ただ、BOCIは安邦人寿保険の持ち株比率を理由に、激しい経営主導権争いが起きる可能性には否定的。既存株主が追加取得に動いたとしても、議決権維持を目的に、持ち株比率を1-2%引き上げる程度にとどまるとみている。

一方、BOCIは不良債権の算入延期を見込み、同行の16年、17年の利益見通しを増額修正した。国内の銀行システム全体が相対的に長期間(3-5年)をかけて不良債権を処理するとみて、セクター全体の16-17年の不良債権見通しを引き下げた。ただ、純金利マージン(NIM)の縮小と与信コストの上昇を予測し、同行の16-18年の減益決算を見込んでいる。

同行は中小企業向け融資に強みを持つが、うち小規模企業向けに関しては不良債権比率が急上昇している。また、経営陣の刷新もあり、次の成長牽引役は不明。経営体制が安定し、新たな成長エンジンを見出すまでにはある程度時間がかかる見通しという。

BOCIはレーティング見直しにつながる可能性がある潜在リスク要因として、貿易融資、中小企業向け融資に絡む資産の劣化懸念を挙げた。一方、同行のH株、A株は現在、16年予想PBR(株価純資産倍率)0.74倍、1.03倍の水準。BOCIはファンダメンタルズを考慮した上で、値ごろ感に欠けるとの見方を示している。