7月12日
不良債権拡大リスクが続く、緩和観測も国内経済の下振れ懸念が痛手

国内経済の減速や世界経済の鈍化懸念を受け、BOCIは中国人民銀行(中央銀行)が2016年下期に銀行システム向けの流動性供給を拡大する可能性を指摘している。銀行銘柄にとって、預金準備率(RRR)引き下げは採算性向上の点からプラスに働くが、利下げはマイナス。また、流動性拡大は不良債権リスクを後退させるが、中国経済の先行き不透明感は銀行資産の劣化懸念につながる。BOCIは銀行銘柄の16年4-6月期の業績低迷や欧州銀行銘柄の株価の乱調に加え、国内銀行銘柄の現在株価が短期的に上限レベルに近づいている点を指摘し、7月中の利益確定売りが選択肢の一つになり得るとしている。また、銀行セクター全体に対して中立見通しを継続。個別では出遅れ感などを理由に、重慶農村商業銀行(03618)の株価の先行きに対する見方を強気に引き上げている。

BOCIによると、RRR引き下げは効率的な資金運用につながる点で銀行銘柄にプラスとなる。ただ、超過準備率の高さなどから、実際の利益押し上げ効果は限られる見込み。理論上では0.5%のRRR引き下げに伴うインターバンク業務、有価証券投資、貸し付け業務の純利益押し上げ効果はそれぞれ0.31%、0.66%、1.28%になる。一方、0.25%の利下げが行われた場合、純金利マージンは4ベーシスポイント低下する見込み。その結果、17年通期の純利益が年率2.7%目減りするとの試算結果を示している。

銀行資産の質はファンダメンタルズ面から改善する可能性は低いものの、短期的には流動性拡大が不良債権の増大を抑制する見込み。ただ、国内銀行が直面している不良債権リスクは構造上の問題であり、中長期的には流動性拡大による資産の改善効果は限定的となる見通しという。BOCIは不良債権の計上ペースの鈍化を見込んだ上で、16年末時点のセクター全体の不良債権比率が2.3%に悪化すると予測。例えRRR引き下げや利下げが行われたとしても、この水準への上昇が予想されるとしている。

中国人民銀行は15年2月以来、6度のRRR引き下げと5度の利下げを実施したが、過去の事例を見る限り、こうした緩和措置の発表を好感した銀行H株株価への支援効果は限定的で、A株に対してよりプラス効果が大きかった。

一方、16年4-6月期決算について、BOCIはセクター全体で前年同期比2.2%の減益を見込んでいる。ユーロ資産はほとんど保有していないものの、欧州銀行銘柄の株価の乱調が間接的にマイナス影響を及ぼす可能性があるという。

銀行H株の現在株価は16年予想PERで5.0倍、同PBR(株価純資産倍率)で0.67倍の水準。BOCIは3年タームで見た場合の上値余地を指摘しながらも、短期的にはPBR0.7倍の上限水準に接近しつつあるとしている。個別では相対的に低リスクかつ低バリュエーションの銘柄を選好し、中国建設銀行(00939)や下値余地が限定的とみられる招商銀行(03968)の株価に対して強気の見通しを示している。