16年上期の増益見通しも先行き不透明感、下期の減益を予想

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
03968 招商銀行股フン有限公司 (チャイナ・マーチャンツ・バンク)  17.36 HKD
(07/19現在)
 株価
 企業情報
 チャート

BOCIはリテールバンキング業務に照準を合わせた招商銀行の戦略やこの分野の競争力を評価した上で、同行の長期成長力や採算性を楽観視しているが、現在株価のバリエーションを理由に、短中期的な上値余地は限られるとの見方。A株の目標株価を据え置く半面、人民元対HKドル相場の予想値見直し(1元=1.16HKドルから同1.14HKドルに修正)に伴い、H株目標を1.8%下方修正した。16年下期利益が伸び悩む見通しや同業銘柄と比較したバリュエーションの高さに言及し、A株、H株の先行きに対する従来の強気見通しを中立的に引き下げている。

BOCIは純金利マージン(NIM)の堅調推移や不動産ローンを牽引役とする融資増を背景に16年6月中間期の安定成長を見込み、前年同期比5.5%の増益見通しを示した。ただ、不動産ローン需要の後退に伴い、融資の伸びはこの先減速するとの見方。また、資産運用業務についてもプライベート・エクイティに関する新たな政策ガイドライン(中国証券監督管理委員会13号文件)がマイナス影響を及ぼすと予想。16年下期には前年同期比6%の減益に転じる見通しを示した。資産の増加ペースの減速(上期に11.2%、下期に10.6%を予想)やNIMの縮小、引き当てコストの増大などを減益見通しの理由としている。

同行は今後もリテールビジネスに照準を合わせるとみられ、この戦略が長期の利益成長や市場シェアの拡大に寄与する可能性が高い。ただ、短期的には不動産ローン需要は後退するとみられ、クレジットカードローンの伸びも家計消費の減速下で鈍化しつつある。さらに「微信(WeChat)ペイメント」など第三者決済システムとの競合も、向こう数カ月にわたってカード手数料収入に影響する見通しという。

中国証券監督管理委員会13号文件は7月18日に発効し、ファンドのレバレッジや証券会社の資産運用業務にマイナス影響を及ぼす見通しとなった。商業銀行の資産運用業務にとっても、少なくとも短期的には打撃。招商銀行の場合、リテール収入に対する資産運用業務の割合が相対的に高く(BOCIの推定では15年に9.6%と、上場銀行平均の5%弱を上回る水準)、新たな規定が業務規模の伸びに影響する可能性が高い。

一方、今後のレーティング引き上げにつながる可能性がある潜在要因として、BOCIは資産の質の維持を背景に16年下期の利益成長率が予想を上回る可能性、下期に資産運用ビジネスが急速な発展を遂げる可能性――を指摘している。

同行H株の16年予想PBR(株価純資産倍率)は現在0.94倍と、同業平均の0.7倍を上回る水準。BOCIは同1.0倍をあてはめ、H株の目標株価を引き下げた。また、資産劣化リスクを理由に、中期的には目標株価算出上の予想PBRを1.0倍以上に維持するのが難しくなる可能性にも言及している。