3月29日
不良債権増大で先行き不透明感、 当面は利益成長も困難に

BOCIは中国本土の銀行セクターが向こう2-3年以内にシステミック危機(金融システム全体の機能不全)に陥る可能性はないとしながらも、収益性や資産の質の点でセクター全体が厳しい環境下にあるとの認識を示している。純金利マージンの縮小と信用コストの増大を理由に、利益成長の確保が難しい状況にあるとの見方。この先、不良債権処理が進む可能性を指摘しつつも、貸し倒れそのものは段階的かつコントロール可能な範囲で増大していくと予想。セクター全体に対して中立見通しを継続している。

中国経済の減速を背景に向こう2-3年間にわたり企業業績の悪化が見込まれる中、銀行セクターは資産劣化リスクに直面している。BOCIによると、不良債権問題は銀行各行が対処できるレベルにあり、流動性緩和や銀行セクターの収益力、中国政府による金融システム支援などを理由に、深刻な金融危機が到来する可能性は排除できるという。ただ、2016-17年の企業業績の悪化を受け不良債権比率が上昇する見込み。同比率が最悪10.9%に達する可能性に触れ、「18年末時点で6.6%との予測が妥当」としている。

BOCIは債券投資やオフバランスシート項目に関しても、景気減速下でリスクに直面しているとの見方。上場銀行銘柄のリスク資産に絡む損失がピークレベルで4.2兆-11.3兆元に達する可能性を指摘した。この数字は18年末の総資産の2.7-7.2%に当たるという。BOCIはまた、CPI(消費者物価指数)の上昇や人民元安が金融緩和策に影響し、結果的に銀行セクターの不良債権増大につながる可能性にも言及している。

銀行の不良債権処理に猶予を与える政府方針は金融市場の波乱リスクの抑制や社会的な安定を後押しするとみられるものの、結果的に銀行の高リスクビジネスの比重が高まり、企業の再編の遅れにもつながる見込み。BOCIは金融資産の再配置の遅れが経済改革の停滞を招きかねないとの認識。問題の先送りが次の金融危機の火種にもなりかねないとしている。

銀行セクターの引当前業務純益の伸びは今後、純金利マージン(NIM)の縮小を受けて減速する可能性が高い。EPS(1株当たり純利益)も16年の優先株配当の支払いでさらに鈍化する見込み。配当性向の引き下げを受け、1株当たり配当もさらに下向く可能性があるという。一方、この先、銀行セクターの成長エンジンになるとみられるのはリテールバンキング部門。また、政府認可が下りさえすれば、証券、プライベート・エクイティ・ファンドなど新規ビジネスへの参入が長期の牽引役となる可能性が高い。

BOCIは銀行銘柄の現在株価の16年予想PBRが0.68倍と、歴史的低水準にあるとし、年内の一段の下落余地は限られるとの見方。同時に、不良債権拡大懸念から上値余地も限られるとみている。個別では資産劣化リスクが相対的に小さく、かつリテールビジネスの面から成長性が高い招商銀行(03968)と中国建設銀行(00939)を選好している。