15年本決算は48%増益、オフィス賃貸好調も店舗市場に不透明感

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
01972 太古地産有限公司 (スワイヤ プロパティーズ)  20.80 HKD
(03/11現在)
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太古地産の2015年12月本決算は、純利益および希薄化後EPSがいずれも前年比47.9%の伸びを示した。予約分譲の好調を背景に不動産開発事業のEBIT(利払前・税引前利益)が12.5%増加したことに加え、投資不動産再評価益の263.8%の急増が寄与した。一回性要因を除く調整後利益は、香港の店舗テナントの売上悪化やホテルビジネスの不振が響き、前年比2.2%増の73億200万HKドルと、BOCIの予想通りだった。BOCIは香港の景気減速を背景とするオフィス・店舗物件市場の不透明感を反映させる形で目標株価を引き下げながらも、同社株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

旗艦投資物件の一つ、「パシフィック・プレイス」のオフィス部分は15年末に入居率100%(14年末は94%)に達したが、契約更新時の賃料の変化率は前年比-1%(14年末は+7%)と、値下げ圧力が続く形となった。

香港における同社の店舗物件の入居率は15年末に100%。少なくともうち45.5%は景気敏感度の低いカテゴリーに属するが、それでも15年10-12月期の小売売上高は「シティゲート」で前年同期比10%減、「パシフィック・プレイス」で同11.8%減。「シティプラザ」では同0.7%の小幅増だった。

ジョーンズ・ラング・ラサールによると、香港のビジネス街セントラル地区のグレードAオフィスの空室率は15年12月に1.2%と、6月の1.7%からさらに低下。賃料相場は12月までの1年間に12.4%上昇した。太古地産の経営陣は中国金融市場の乱調を受けた本土企業による需要減を見込む一方、オフィス賃料の上昇を予想している。

一方、経営陣は香港の店舗需要が委縮すると予想。広州および北京の店舗需要に関しては安定推移を予想している。ホテル事業に関しては厳しい状況が続く見通しという。 15年の不動産販売収益は主に、香港の「Arezzo(瀚然)」「Argenta(珒然)」「Whitesands」の貢献だった。16年には「Miami」の住宅部分の引き渡しと、「Brickell City Centre第1期」の完工が予定されている。また、同社は低負債比率を背景に、香港の商業用地を取得する計画。15年末の負債比率は前年同期比1ポイント低下の15.3%、財務の健全性指標の一つであるインタレストカバレッジレシオは7.8倍の高水準だった。

BOCIは賃料見直しや香港の投資不動産の利益率の変化、さらに高級住宅市場の軟化などを反映させる形で、16年、17年の利益見通しを6-8%下方修正した。新規のプロジェクト情報を加える形で1株当たり予想NAV(純資産価値)を1.7%引き上げ、44.26HKドルとしながらも、香港のオフィス・店舗市場の不透明感を理由に、NAV比38.9%のディスカウント水準まで目標株価を引き下げた。現在株価はNAVを53%下回る水準。BOCIは同社株の低バリュエーションを指摘し、潜在的なマイナス材料は現在株価にほぼ織り込まれたとみている。