8月18日
高成長期入りの生保銘柄に強気見通し、株価EV倍率は過去最低レベル

香港株式市場では中国本土の保険銘柄が全体相場をアンダーパフォームし、5月の高値から25%を超えて調整、年初からの値上がり分がほぼ消える形となった。BOCIは2015年予想P/EV倍率(株価EV倍率:株価を1株当たりエンベディッドバリューで割った値)が約1.0倍まで下げたとし、特に生保銘柄の売られすぎ感を指摘している。また、政策的な追い風を受けた事業環境の改善に触れ、生保系各社の成長持続を予想。保険セクター全体に対して強気見通しを示し、個別では中国人寿保険(02628)、中国人民保険(01339)、新華人寿保険(01336)をトップピックとしている。

BOCIは生保銘柄が高成長期にあることや、業界全体で逆ざやが発生している状況にはないことなどに言及し、理論的にP/EV倍率1.0倍以下への株価下落は考えにくいとの見方。香港市場では、保険銘柄は「本土A株市況の代理銘柄」と見なされがちだが、BOCIによると、A株相場と各社の主要業務指標は必ずしも連動せず、A株相場が底にあった08年には既契約価値(VIF)と生保EVの伸びがそれぞれ平均27%、14%に達した。また、政府が保険会社に対する投資規制を段階的に緩和していることも、投資収益の確保においてプラス。BOCIは中国の低金利政策が長引くようなことがない限り、投資収益見通しの一段の下方修正余地は小さいとみている。

P/EV倍率とは別に、BOCIは利益見通しの点からも、生保系銘柄のバリュエーションが魅力的水準にあるとみている。現在、同セクターの株価は15年予想PERで平均10.4倍と、ほぼ過去最低レベル。利益見通しを考慮すれば、現在株価はヒストリカル水準や全体相場に比べ値ごろ感が強いとしている。

中国の生保業界はこれまで以上に力強い成長局面に向かっており、各銘柄はかつてないほどの高成長見通しを享受している。12年に保証利率改革が行われた後、生保各社は顧客のニーズに対応するため、より幅広く多様な商品を扱うことが可能となった。また、15年上期には従来型生保商品の収入保険料が初めて配当付保険を上回ったが、BOCIはこれで業界全体の商品ミックスの優良化が進んだと評価。こうした傾向が今後も続く見通しを示している。

一方、生保業界を取り巻くリスクは向こう12カ月間にわたる大幅利下げ(基準金利の引き下げ)の可能性と、低金利環境が長期にわたって続く可能性。仮にそうなれば、各社とも保証利回りの見直しに動く可能性がある。

BOCIは基本的な事業環境とバリュエーションの両面から、損保より生保を選好している。生保銘柄に関しては高成長見通しに触れた上で、この先40%を超える上値余地を指摘。個別では損保の中国人民財産保険(02328:中立見通し)を除く各保険銘柄の株価の先行きに対し、強気の見通しを示している。