7月23日
安定成長維持へ15-16年にインフラ投資拡大、投資全体の伸びは鈍化へ

中国では住宅在庫の処理や従来型産業の生産能力削減、地方政府の債務処理を受けて固定資産投資の伸びが鈍っており、これが14年以降の経済成長鈍化の元凶となっている。政府当局はこうした状況に対処するために金融緩和に動き、その後、住宅物件の売れ行きや一部のインフラ投資は明らかに改善した。それでも不動産開発投資は売れ残り物件処理の必要性や中長期の住宅需要に対する慎重見通しを受け、引き続き減速傾向。地方の土地依存型の資金調達活動も委縮している。地方政府債務に関する規制強化や新たな予算法の施行、地方当局の成果評価法の見直しを背景に、地方の借り入れと投資は短期的に伸び悩む見込み。ただ、BOCIはこうした状況が長期的な経済成長モデルのシフトを促すとの見方だ。中国経済に関するキーポイントとして以下の点を指摘している。

中国政府はインフラセクターの価格決定や運営、投資、資金調達に明らかに介入しており、国有企業の市場シェアは60%以上。インフラ投資の拡大は政府にとって、安定成長を維持するための主要手段となっている。中国では過去20年間で4度のインフラ投資ブームがあったが、うち3回はデフレ下での景気刺激策だった。

地方のインフラ投資を支えるのは土地関連資金。地方政府は「地方融資平台(LGFV)」と呼ぶ仕組みを通じ土地譲渡収入に依存する形で融資を獲得してきた経緯があり、これが比較的オープンな一般財政予算とは異なる“影の財政システム”を生む要因となった。

不動産市場では土地市場の鎮静化と地方政府の資金力の後退を受け、在庫物件の処理が加速している。BOCIは地方政府債務に関する規制強化や新たな予算法の施行、地方の司法・規律システム改革などが、地方投資の重石になっているとの見方。鉄道関連の固定資産投資は上向いているが、インフラ投資全体は15年上期に減速傾向を示した。

中央政府としては地方政府債務問題の処理と経済安定成長のバランスを取る必要があり、この点に対処するために債務「置換」計画を導入している。これはLGFVが持つ高金利の債務を低金利の債券にスワップすることを認める手法。また、「43号文件」では、建設中のプロジェクトを抱える一部LGFVに対して銀行借り入れを認める方向で規定を緩和。さらにインフラプロジェクトの推進に向けて民間資本を導入する、いわゆるPPP(官民連携)を奨励するとした。

債務の再編は地方政府の債務負担の軽減につながるが、起債を通じて新たに調達した資金の大半は借り換え用に回され、新規建設プロジェクトに振り向けられるのはその一部。LGFVを通じた従来型の資金調達はすでに難しい状況にある。一方、PPPモデルの奨励を受け、民間資本によるインフラ投資は拡大するとみられるが、LGFVの退場による資金不足を全面的にカバーするのは短期的には困難。BOCIは15年のインフラ固定資産投資の伸びを前年比22%と予測し、16年については同20%を見込んでいる。