5月27日 
新たな成長段階に突入、政策支援下で年率30%の拡大ペース持続へ

BOCIは中国のオンライン小売セクターに対して強気見通しを付与し、新規のカバレッジを開始した。国内のネット通販業界はすでにユーザー獲得段階を終え、消費カテゴリー全体に浸透し始めたとの見方。この先のプラス要因として、◇利用者の消費力向上、◇従来型の大手企業によるオンラインビジネスへの移行、◇ネット小売事業者の採算化とエコシステムの構築、◇中国政府による全面的な支援――などを挙げた。この分野の有力銘柄は主に、米ニューヨーク証取上場のアリババグループと、米ナスダック上場の京東商城(JD.com)だが、BOCIはうちアリババを選好し、強気見通しを付与。理由として良好な利益見通しと現在株価の値ごろ感を指摘した。一方、香港上場の有力ネット企業・テンセント(00700)と資本提携関係にある京東商城には中立的な見方。同社の2014-17年の増収率を年平均41%と予測し、業界平均を上回る見通しを示している。

中国のネット小売市場が国内全体の小売売上高に占める割合は2010年に3%だったが、14年にはこの割合が11%まで上昇した。ネット通販利用者は14年末にネット人口全体の56%に達しており(先進国では13年に平均62%)、BOCIはユーザー獲得段階はほぼ終わったとの見方。オフライン小売市場を巻き込んだ統合段階を迎えたとしている。消費者の購買力の向上を背景に、あらゆる消費カテゴリーでネット通販の浸透がみられるという。BOCIは政策支援に触れた上で、ネット小売市場が向こう3年間、年平均30%の成長を遂げる見通しを示している。

中国のネット通販市場はこれまでC2C(消費者間の取引)が主体だったが、BOCIはトラフィックの増加やブランド製品/プレミアムサービスに対する需要の伸びを見込み、B2C(企業と個人間の取引)分野の急速な発展を予想。15年にはB2Cのシェアが5割に達するとみている。B2Cのシェア拡大が業界全体の採算性の向上につながる見通しという。このほか、モバイル通販分野に関しても利用増を受けた採算性の急速な改善を予想。この先のO2O(Online to Offline:ネット上の行動がオフラインの実店舗での購買行動を促すこと)ブームを見込み、長期的にはモバイル部門の収益力がPCを上回るとみている。 ネット通販市場で他を圧倒している最大手のアリババグループは、すでに膨大な利用者基盤を抱える。一方、直接販売からスタートした競合各社はトラフィックの取り込みに向け、マーケットプレイス(売り手・買い手が自由に参加できるプラットフォーム)業務を強化している。大手各社の競争は現在すでにエコシステム(業界全体の収益構造)領域に至り、ネット金融やスマートハウス、娯楽、O2O、クラウドコンピューティングなど各分野の産業チェーンを網羅しつつある。BOCIはこうした状況が製品/サービスの拡充や利用者忠誠度の上昇、競争力の強化、さらに長期の利益力を支えるとみている。