5月19日 
規制要因で短期調整も騰勢回復へ、15年に大幅増益見通し

中国証券セクターの3-4月の直近利益は本土A株市場のラリーを背景に過去最高を記録したが、この間のセクター全体の株価パフォーマンスに2014年11-12月当時ほどの勢いはなかった。証券口座規制の緩和、信用取引に対する監督強化、証券ビジネスの新規参入障壁の引き下げなどが投資マインドに影響した。ただ、BOCIは◇15年通期の大幅増益見通し、◇中国資本市場の発展による委託売買業務の成長余力――を理由に総じて楽観的であり、セクター全般に対して強気見通しを付与している。また、H株4銘柄、中信証券(06030)、海通証券(06837)、広発証券(01776)、中国銀河証券(06881)の株価の先行きにも強気見通しを示し、うち中信証券、広発証券をトップピックとした。

本土A株市場の1日当たり平均売買代金は4月に1兆4000億元。BOCIは年末までこの水準を維持することは難しいとしながらも、15年通年で平均8340億元に達すると予想。業務量の増加が競争激化に伴う手数料率の低下をカバーするとみている。また、伝統的なブローカレッジ業務の利益率はこの先長期的に低下傾向をたどることが確実視されるが、一方で投資コンサルタント業務が解禁される可能性が高く、同部門の利益モデルは今後、流動的な手数料から口座ベースのマネジメント料にシフトする見込み。同時に、ビジネスの焦点も、価格引き下げからサービスの質的向上に変わる見通しという。

当局が監視強化に動いたにもかかわらず、信用取引残高は15年1-4月に79%増を記録した。中国証券監督管理委員会(CSRC)は信用取引のリスク管理強化に繰り返し言及しているが、BOCIは担保(保証金)率の高さなどを理由に、リスクレベルは相対的に低いとの見方。信用取引がこの先さらに増加するかどうかは、相場動向やブローカーのリスク許容度次第とみている。

IPO(新規株式公開)改革を背景に、投資銀行業務は15年以降長期にわたって成長潜在力が大きい。IPOの増加で、株式引受収益は15年に急増する見込み。債券引受業務に関しては、LGFV(地方政府の資金調達会社)による起債案件の減少で手数料率が低下するとみられるが、金融緩和を背景に起債規模そのものの増加が期待できるという。

このほか、自己勘定取引の成績は相場動向次第だが、BOCIは相場の先行きに対して強気。債券市場については前年より弱いと予想し、その理由として低利回りの地方政府債の大量起債が見込まれることなどを挙げた。一方、資産運用業務に関しては今後、主力がウェルスマネジメントにシフトするとみて、利益率の向上を予想している。

H株証券銘柄の現在株価は15年予想PERで平均12.6倍、15年予想PBR(株価純資産倍率)で平均1.9倍の水準。BOCIは15年の大幅増益見通しが高バリュエーションを支えるとの見方。H株株価の一段の上値余地を指摘し、現在25%のAH価格差がこの先15%に縮小するとみている。