12月16日
住宅市況の回復トレンド持続を予想、香港上場銘柄が市場シェア拡大

中国不動産市場は過去数年にわたる急成長の後、居住環境の改善や人口構成の変化、在庫物件増大を受けて減速しているが、BOCIは香港上場の本土系不動産銘柄の市場シェアが拡大している現状に触れ、長期の投資価値を指摘している。また、本土の住宅市況については、成約規模や成約率の改善にみられる通り、すでに回復局面を迎えたとの見方。15年も回復トレンドが続くとみて、セクターへの見通しを強気判断に引き上げた。

BOCIが追跡する21都市の物件成約面積は9月30日までの4週間に前年同期比24.4%減少した後、12月14日までの4週間に同7.9%の増加に転じ、市況の回復傾向が鮮明となった。住宅ローン規制の緩和や利下げといった政策的な追い風を受けて買い手の様子見姿勢が変化し、14年上期に積み上がった累積需要の開放が始まったとみられる。

市況回復傾向を示すもう一つの指標は主要8都市における成約率の改善。新規供給面積に対する成約面積の比率は、9月30日までの12週に67.8%にとどまっていたが、先週(12月14日週)までの12週には83.8%に上向き、前年同期の81.7%を上回る水準に達した。また、9月30日以降は在庫処理周期(ICC)も着実に改善。15都市のICCは先週時点で1.44年と、4週前との比較で1.1%縮小した。BOCIは一級の大都市部の住宅市況を相対的に楽観し、その理由として供給過剰リスクが相対的に低いこと、アップグレード需要が見込めることなどを挙げている。

12月前半に開かれた中央経済工作会議では不動産政策は特に論議されず、価格体系の“市場原理化”を目指す政策方針が改めて示唆された。国内景気の下振れリスクから、BOCIは不動産市場の逆風となる政策が導入される可能性には否定的。実際、不動産税の本格導入計画の見送りなど、BOCIの予想を後押しするメディア情報が伝わっている。 一方、不動産開発セクターは付加価値税(VAT)改革の次の対象になるとの見方が優勢であり、15年3月にも現在の営業税(税率5.5%)に変わり、11%のVATが適用される見込み。ただ、専門家の試算では、VAT控除を考慮した場合の実質税負担は軽減される見通しという。実際には還付制限による実質増税の可能性も残るが、BOCIはその可能性は低いとの見方。VATが間接税であり、住宅購入者に転嫁される可能性があることなどをその理由としている。 香港上場のデベロッパー18社の成約額は11月に前年同月比25.6%増の1030億元と好調。1-11月の累計では前年同期比12%増と、中国全体の同9.7%減を明らかにアウトパフォームし、市場シェア拡大が鮮明だった。BOCIは不動産銘柄の株価が1株当たりNAVに対して57.5%のディスカウント水準にあり、ヒストリカル平均の45%を下回ると指摘。ディスカウント率が50%に改善し、不動産銘柄全体で約18%の上値が期待できるとした。個別では中国海外発展(00688)と融創中国(01918)を選好している。