11月24日
利下げ環境下で銀行銘柄に慎重見通し、向こう数年の利ざや縮小を予想

国内景気の下振れリスクが高まる中、中国人民銀行(中央銀行)は11月21日に利下げを発表した。BOCIは事前に利下げを予想していたが、期間1年の貸出基準金利と預金基準金利をそれぞれ0.40%、0.25%引き下げるという不均等な利下げ手法についてはやや予想外であり、銀行銘柄に不利との見方だ。また、要求払預金(普通預金や当座預金)の基準金利を据え置いたことも銀行セクターの逆風になるとし、純金利マージン(NIM)が理論上、前年同期比で21ベーシスポイント(8.4%)低下するとの試算結果を示した。また、預金獲得競争の激化を受け、市中銀行が預金金利を上限いっぱいに設定するとみて、実際のマイナス影響はさらに大きくなると予想。NIMが36ベーシスポイント(14%)縮小するとの見通しを示した。また、こうした中で銀行セクターの15年の純利益が前年実績を下回り、「ここ10年で初の減益」となる可能性に言及。BOCIは預金準備率の引き下げや預貸率(LDR)規定の取り消しとともに、今後の追加利下げを見込むが、2008-09年当時とは異なり、利下げが貸出の伸びや不良債権指標の改善に直結する可能性は低いとみて、その理由として経済成長率の減速を指摘している。また、資産の質的悪化リスクは中期的に続くと予想。銀行銘柄の値上がり局面が短期にとどまる見通しを示した。その他金融セクターとの比較で、銀行セクターは利下げ環境下で “負け組”になるとして、セクター全体に対する中立見通しを継続している。一方、証券セクターに関しては緩和を受けた株式相場の活況がプラスになるとし、強気見通しを付与している。

BOCIは今後の追加利下げを見込み、向こう2年間で1年物貸出金利の下げ幅が4.8%に達する一方、預金金利の下げ幅は約2%にとどまると予想。銀行銘柄のNIMはさらに17ベーシスポイント後退し、16年末には約1.98%まで縮小すると予測している。

不良債権残高と同比率に関しては向こう数年間、全上場銀行で2桁増加するとの見方。借り手にとっては利下げが債務負担の軽減につながるとは言え、今のところ支援効果は限定的。融資総量が増加すれば債務者支援効果も鮮明になるものの、NIM縮小や不良債権指標の悪化リスクを受け、銀行側は融資に対する慎重姿勢を維持するとみられる。 債券およびエクイティ市場にとって利下げはプラス。ただ、仲介機能の排除が銀行間の競争激化につながる見通しという。

個別では預金金利設定において相対的に冷静な4大国有商業銀行の業績が、基本的に中小行銘柄を上回る見込み。中小銘柄の中では、BOCIはインターバンク資産の比重が大きい興業銀行(601166)を選好。他に純金利マージンへの依存度が相対的に低く、中小企業向けローンの比重が高い招商銀行(03968)、中国民生銀行(01988)を前向きに評価している。一方、証券セクターについては利上げが追い風になると予想。中信証券(06030)、海通証券(06837)の株価の先行きに対して強気見通しを継続した。