10月21日
新規の原発プロジェクト認可を年内再開へ、電力会社に最大の恩恵
中国政府は2011年3月の福島第一原発の事故以来、新規の原発建設プロジェクトの認可を見送ってきたが、14年末までには認可再開に動く可能性が高まっている。原発プロジェクトが大気汚染対策や持続可能なエネルギー発展戦略の一環であることが背景。BOCIによると、原発は稼働面での安定性が高い上に、燃料コストの変動リスクが小さく、投資回収率も高いため、認可再開は電力各社に最大の恩恵をもたらす見通しという。一方、発電設備メーカーに関してはファンダメンタルズの改善より、まずはセンチメントの改善という形で恩恵が及ぶ見込み。原発建設が本格化するまでに3-4年を要するとみられることや、設備メーカーがすでに新規プロジェクト関連の受注の一部を計上済みであることなどが理由という。
原発は安全性問題を抱える上に建設に長期を要するが、BOCIによると、安定供給や排ガスゼロ、コスト効率などといった点で、従来型発電方式や再生可能エネルギーより優位にある。BOCIの推定によれば、原発のエクイティIRR(自己資本の投資対効果指標、IRR=内部収益率)は20%と、発電部門全体の15%、石炭火力発電の18%を上回る水準にあり、電力会社にとっては投資上の魅力が大きい。ただ、中国では今のところ、原発の経営支配権を握る資格を持つのは、中国核工業集団公司(CNNC)、中国広核集団公司(CGN)、中国電力投資集団公司(CPI)の3社に限られている。
第13次5カ年計画(2016-20年)期間中にプロジェクト15件が認可を受ける見通しなどから、BOCIは稼働中の原発発電容量が2020年に60.6GWに拡大するとみている。また、原発発電量は13-20年に年平均22%増加するとの見方。この予想値は全電源の予想伸び率(年平均5.5%)、風力発電の予想伸び率(同17%)を上回る。
中国、日本、韓国で原発開発再開や稼働再開が見込まれるにもかかわらず、ウランの供給過剰は2020年まで続く見込み。段階的な需要増に伴いスポット価格が上向く可能性もあるが、BOCIは電力会社のIRRは価格変動による影響をほとんど受けないと指摘。1ポンド当たり20米ドルの幅でウラン価格が上昇しても、原発部門のIRRはわずか0.2%の変動にとどまるとした。また、BOCIによれば、中国はすでに2020年までのウラン需要増加分のうち、少なくとも78%を確保した可能性が高いという。
原発に関しては常に安全性に対する疑念がつきまとうが、先進国から25年ほど遅れて商業化にこぎつける中国の場合、他国の経験を参考にできる点が強み。BOCIは技術的進歩を通じ、事故発生リスクはかなり軽減したとの見方だ。一方、14-16年に予想される原発発電容量の伸びやUHV(超超高電圧)送電網の導入は、石炭火力発電事業にマイナス影響を及ぼす見込み。15年には特に、浙江省、福建省、遼寧省で石炭火力発電の稼働時間数が13年実績を下回る見通しという。
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