【今日のまとめ】
- ロスネフチが19.5%株式の売却に成功
- 原油価格下落と経済制裁のダブルパンチを受けたロシア
- 政府の対応が良かったので、ダメージは比較的軽微だった
- OPEC減産でロシアも恩恵を受ける?
- トランプ政権はロシアに好意的
ロスネフチが19.5%株式の売却に成功
12月7日、ロシアの大手石油会社、ロスネフチが19.5%株式を、スイスのコモディティ商社、グレンコアならびにカタールのソブリン・ウエルス・ファンドに113億ドルで売却しました。
ロスネフチは2014年秋以降の原油価格の低迷と、ウクライナ紛争を巡る米国、EUからの経済制裁のダブルパンチで運転資金に窮していました。今回、まとまった資金を調達できたことでロスネフチの経営は楽になります。
ロシア経済の近況
ロシアのGDPは2015年に-3.73%下落しました。これは2014年の夏から原油価格が崩れ始めたことに加えてウクライナ紛争に絡んでEUならびに米国がロシアに対して経済制裁を決めたためです。
ロシアは過去にも経済危機を経験しています。しかし今回の経済危機は、1997年不況、2008年不況に比べると比較的ダメージは軽微でした。
その第一の理由として、今回は外貨準備が比較的潤沢だったので、資本逃避がマイルドだったことが挙げられます。
またルーブル安が「ガス抜き」効果をもたらした点も指摘できます。
ロシア中銀は銀行セクターへの資本支援ならびに流動性支援を早目に実施しました。それもクレジット・クランチから経済が深い不況に沈むことを防ぐ働きをしました。
現在、銀行への流動性支援プログラムは、もう必要ないので終了しています。
ロシア中銀は2014年12月に政策金利を一気に6.5%利上げしました。これはインフレを鎮静化させる意図でなされたものです。
このような大胆な利上げは失敗に終わることも多いのですが、今回は市場の信頼の回復に役立ちました。
なお経済制裁を受けた関係で対外債務が2年間で1,760億ドルも圧縮できました。これは経済制裁の「予期せぬ効用」であり、逆に経済を安定させる効果をもたらしました。
OPEC減産とロシア
石油輸出国機構(OPEC)は11月30日の総会で減産を発表しました。
現在、非OPEC諸国の中から、この減産に賛同し、協調減産してくれる国を探している最中です。ロシアは、この減産に前向きな姿勢を打ち出しています。
原油価格が戻って来ればロシアの財政収支は改善します。
加えて米国の大統領選挙で当選したドナルド・トランプはロシアに対して好意的な意見を持っていることから、今後、経済制裁の面でも何らかの進展があるかも知れません。
今回のグレンコアならびにカタール政府によるロスネフチ株取得は、ロシア経済の回復を先取りする動きという風にも理解できると思います。
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