【今日のまとめ】
- フェイスブックの無議決権株式の説明
- アルファベットの決算は悪かった
- アマゾンの決算はAWSの活躍が目立った
- ネットフリックスの決算は、まちまちだった
- IACインタラクティブからスピンオフされたマッチ・グループが注目されている
第1四半期決算が出揃った
インターネット企業の第1四半期決算が、ほぼ出揃いました。そこで今回はそれらの企業の決算を解説したいと思います。
フェイスブック
フェイスブック(ティッカーシンボル:FB)の第1四半期決算は良い内容でした。
EPSは予想62¢に対し77¢、売上高は52.6億ドルに対し53.8億ドル、売上高成長率は前年比+51.8%でした。
Mobile DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー)は9.89億(前年比+24%)でした。
広告売上高は前年比+57%の52.01億ドルでした。また広告売上高に占めるモバイル比率は82%でした。
地域別ではアジア太平洋地域のみが前期比でUPでした。
それ以外の地域が前期比でマイナスになったのは、広告というビジネスの季節性の関係です。
営業マージンは37%でした。
去年の第1四半期は26%だったので前年同期との比較では11パーセンテージ・ポイントの改善となっていますが、前期比では7パーセンテージ・ポイントの悪化となりました。これは営業マーケティング費用、R&D費用比率が再び増加に転じたことによります。
第1四半期の設備投資額は11.3億ドル、フリー・キャッシュフローは18.5億ドルでした。
フェイスブックは新しくClass C株を設けます。Class C株は投票権の無い株式で、Class AならびにClass Bの1株に対し、新たに2株のClass C株を株式配当として配ります。
一般投資家の観点からすれば、1:3の株式分割をしたのと同じ効果があります。つまり現在、皆さんが持っているフェイスブック株が1株から3株に増える代わりに株価は3分の1に下がるわけです。もちろんトータルで見た価値は変わりません。
なぜフェイスブックがこのような無議決権株式の無償割り当てを行うか?と言うと、それはマーク・ザッカーバーグが将来に渡って自分の議決権を維持できるようにする目的があるからです。
フェイスブックは従業員に対するボーナスを出すとき、現金ではなくストック・オプションを主に使います。すると昔の資本ストラクチャでは社員にボーナスを弾むたびに創業者の議決権が薄まってしまうという現象が起きます。
フェイスブックはヴァーチャル・リアリティー(VR)をはじめ、とうぶん利益を生まない色々なベンチャーを手掛けている関係で、将来、株主から圧力がかかる可能性があります。
そこで、そういう少数株主からの反対意見に気兼ねすることなく、長期ビジョンに基づいてザッカーバーグが経営手腕を発揮できるように、今回、新しい無議決権株式を創設するというわけです。
今後、従業員へのボーナスは、この無議決権株式によって支払われます。
これはコーポレート・ガバナンスの観点からは、明らかに好まざる発表です。
なお今回と同様の措置は既にアルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)が導入し、成功しています。
なお、この提案は6月20日の年次株主総会での承認を得る必要があります。
アルファベット
アルファベット(ティッカーシンボル:GOOGL)の第1四半期決算は悪かったです。
EPSは予想$7.96に対し$7.50、売上高は予想203.8億ドルに対し202.6億ドルに終わりました。売上高成長率は前年比+17.4%でした。
アグリゲート・ペイド・クリックは+29%(前期は+31%)、ペイド・クリック・オン・グーグル・サイトは+38%(前期は+40%)、ペイド・クリック・オン・メンバー・サイトは+2%(前期は+2%)でした。
アグリゲート・コスト・パー・クリックは-9%(前期は-13%)でした。
今期の売上高成長率が17%に対し、トラフィック・アクイジション・コスト(TAC)は+18%でした。つまりコストの方が売上高より速いペースで増えているのです。
モバイルはTACの割合が高いので、モバイルへ移行すればするほど、コスト増になります。
このことから同社が今後費用比率を下げてくるのは容易ではないと思います。
実際、今期の一株当たり利益(EPS)成長率は+14%と、売上成長率より低かったです。
この傾向が定着するのを避けるためには、TACの伸びを抑えるとともに、アルファベットが手を染めている数々の不採算事業を整理することが必要になります。
それらは「アザー・ベッツ」という部門に集約されています。アザー・ベッツ部門は売上高1.66億ドルに対し営業赤字は8.02億ドルと大赤字になっています。
先日、アルファベットが、「蹴られても倒れないロボット」の事業を手放すと発表したのも、アザー・ベッツでの赤字を減らす必要に駆られているからです。
現在、グーグルの総従業員数は6.4万人で、その多くがクラウドならびにアプリ開発に投入されていますが、それらの部門でのR&Dの生産性は低いです。
アマゾン
アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)の第1四半期決算は、素晴らしい内容でした。
EPSは予想60¢に対し$1.07、売上高は予想280億ドルに対し291.3億ドル、売上高成長率は+28.2%でした。
また営業利益は予想5.45億ドルに対し、11億ドルでした。
アマゾンはこのところ着実に営業利益で黒字が出せる体質に戻ってきています。その理由は、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の好調によります。
AWSの営業利益は5.88億ドルでした。これは前年比+131%です。AWSの売上高は26億ドル(+64%)でした。
第2四半期の売上高は予想283.4億ドルに対し、新ガイダンス280~305億ドルが提示されました。営業利益は予想8.5億ドルに対し、新ガイダンス3.75~9.75億ドルが提示されています。
ネットフリックス
ネットフリックス(ティッカーシンボル:NFLX)の第1四半期決算は、まちまちでした。
EPSは予想3¢に対し6¢、売上高は予想19.7億ドルに対し19.6億ドル、売上高成長率は前年比+24.5%でした。
国内ストリーミングは予想+175万人に対し+223万人で、総サブスクライバー数は4,697万人になりました。
海外ストリーミングは予想+435万人に対し+451万人で、総サブスクライバー数は3,453万人になりました。
米国売上高は前年比+18%でした。そのうち+14%はメンバーシップ増、残りの+3%はARPU(ユーザー当たり単価)の増加です。
海外部門の赤字1.04億ドルが予想より小さかった理由は、一部コンテンツ費用の発生が今期ではなく、来期以降に繰り越されたからです。このため今回の赤字縮小を(収益性が改善している)と早とちりしない方が良いと思います。
第1四半期中に130カ国で新しくサービスを開始しました。現在のところそれらの国々の大部分では英語による配信のみです。
現在のネットフリックスの長期負債は24億ドルで、負債対エンタープライズ・バリューは5%と低いため、2016年、2017年はジャンク債市場から資金調達する予定です。
マッチ・グループ
マッチ・グループ(ティッカーシンボル:MTCH)はインターネットを通じたデート・サービスを提供している会社で、「Match」、「OkCupid」、「PlentyOfFish」、「Tinder」などのブランドを傘下に持っています。
同社はもともとIACインタラクティブ(ティッカーシンボル:IAC)の一部門でしたが、スピンオフされました。その関係で現在でもIACインタラクティブが84.5%(但し投票権では98.2%)を支配しています。
現在、38言語、190カ国でデート・サービスを展開しています。
同社の売上高はメンバーシップ・フィーが大半を占めており、これは継続して毎月売り上げが見込めるタイプの商売です。その他、特定のアクションやイベントの際、単発での課金もあります。
デート・サービスはユーザーの属性や嗜好によりかなり細分化されたマーケットであり、ひとつのブランドが全てのユーザーに受け入れられるというのではなく、ニッチが大切になります。その関係で、同社のそれぞれのデート・サイトは個々の特色が薄れないように、かなり独立性を持たせて運営されています。
同社の第1四半期決算は良い内容でした。
EPSは予想8¢に対し11¢、売上高は予想2.81億ドルに対し2.85億ドル、売上高成長率は+21.4%でした。
平均課金メンバー数(Average PMC)は前年比+36%の510万人でした。顧客当り単価(ARPPU)は-10%でした。ARPPUの下落はティンダーなどのペイウォールをわざと緩く設定してあるブランドの伸びが著しかったことが理由です。
ティンダーは今期、課金メンバー数が100万を超えました。2016年は前年の2倍のメンバー数になると同社では予想しています。また新しいアラカルト・メニューの導入が成功裡に実施されました。
- 【略号の読み方】
- DPS 一株当たり配当
- EPS 一株当たり利益
- CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
- SPS 一株当たり売上高
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