【今日のまとめ】

  • メガバンクの第1四半期決算が出揃った
  • 収益環境は厳しい
  • JPモルガンの決算は予想より良かった
  • ウエルズファーゴは総じて好調だが石油・天然ガス企業への融資に懸念あり
  • バンク・オブ・アメリカの決算はいまひとつだった
  • シティグループは債券部門が予想より健闘した
  • モルガン・スタンレーの決算は低い事前予想を上回った
  • ゴールドマン・サックスの決算は債券為替コモディティ部門の不振が目立った

第1四半期決算が出揃った

米国のメガバンクの第1四半期決算が出揃いました。そこで今回は米銀の決算について紹介したいと思います。

銀行の収益環境

まず全体の収益環境ですが、銀行が儲けにくい環境が続いています。その最大の理由はイールドカーブが平坦だからです。

イールドカーブは利回り曲線と訳されます。具体的にはアメリカの国債である米国財務省証券の利回りを、短期債から長期債までずらりと一列に並べ、それを線でつなげたものを指します。

上のグラフで横軸は米国財務省証券の償還期限を示しています。1カ月の短期債から始まり30年債まであります。縦軸は利回りです。

水色の線は去年12月21日の利回り曲線です。なぜこの日のデータを持ってきたか? と言えば、それは12月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)の直後だったからです。そのFOMCではリーマンショック以降、初めての利上げが発表されました。

つぎに橙色の線は現在、つまり4月15日の利回り曲線です。

この2つの線を比べると、現在のイールドカーブの方が去年にくらべて勾配(こうばい)が緩く、イールドカーブが「寝そべっている」ことが読み取れます。

これは銀行の収益環境に関して重要な意味を含んでいます。つまり「銀行が儲けにくい環境だ」ということです。

その理由は、一般に銀行は短期市場(上のグラフの左の方)で資金調達し、それを長期市場(上のグラフの右の方)で運用するからです。単純化すれば:

(運用利回り)-(調達利回り)= 純金利マージン

ということになります。純金利マージンとは、すなわち銀行の利ザヤです。

去年、利上げが発表されたときの投資家の期待は(今後、イールドカーブの勾配は急になるだろう)というものでした。しかし実際にはその逆、つまり利ザヤの縮小が起きてしまったのです。

その原因ですが、原油価格の低迷で、引き続きインフレ期待が低いということが大きく影響していると思います。

米国連邦準備制度理事会(FRB)は2016年末の時点での政策金利の予想を、1.4%から0.9%へ下げました。

そのことは今年中の利上げ回数の期待が、これまでの4回から、一気に2回へと減ったことを意味します。

このことは現在のようなイールドカーブが平坦な状況が長期に渡って続く可能性が高いことを示唆しています。

次にリーマンショック以降、ドッド・フランク法により金融機関に対する規制が強化されました。とりわけトレーディングの面では、以前のような高いレバレッジを用いることが出来なくなり、それはメガバンクの自己売買部門の業績低迷の一因となっています。

さらに機関投資家がメガバンクと債券をトレードする際、HFT(高速トレーディング)に代表されるコンピューター化が急速に浸透しつつあります。トレードの自動化で効率的になった分、メガバンク側にとって、債券ディーリングの旨味は無くなってしまいました。

こうした諸々の要因から、メガバンクを巡る収益環境は厳しい状態になっているというわけです。

JPモルガン

JPモルガン(ティッカーシンボル:JPM)の第1四半期決算は主に債券トレーディングの落ち込みが少なかったため、予想を上回りました。

EPSは予想$1.26に対し$1.35、売上高は予想228.7億ドルに対し232億ドルでした。

注目された債券トレーディングは-13%でした。また株式トレーディングも-5%と健闘しました。これらを合わせた市場部門の売上高は57億ドルでした。

投資銀行売上高は債券・株式引受フィーが低調で12億ドルでした。これは前年比-24%です。ただM&Aアドバイスは好調でした。

投資銀行部門のグローバルでの順位(カッコ内はシェア)は:

  • 債券・株式引受 1位(6.7%)
  • M&A  1位(11.3%)
  • ローン・シンジケーション 2位(6.2%)
  • 投資銀行フィー 1位(8.2%)

でした。

つぎに貸付け業務に目を転じると、注目された貸倒引当金は18億ドルでした。ちなみに去年の同期は9.59億ドルでした。うち石油・天然ガス向け貸付の貸倒引当金は+5.29億ドル(ガイダンスは+5億ドル)、鉱業向けは+1.62億ドル(ガイダンスは+1億ドル)でした。

これらのクレジット・コストはEPSを13¢押し下げる効果がありました。

純金利収入は+7.23億ドルの117億ドルでした。純金利マージンは前期比7bp拡大しました。

株主資本利益率は9%でした(去年同期は11%)

ウエルズファーゴ

ウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の第1四半期決算も予想を上回りました。

EPSは予想98¢に対し99¢、売上高は予想215.1億ドルに対し222億ドルでした。

純金利収入は前期より7,900万ドル増の117億ドルでした。これには買収したGEキャピタルが部分的に貢献しています。

純金利マージンは2.9%でした。

総資産利益率は1.21%、株主資本利益率は11.75%でした。

総融資残高は前期比+7%の9,272億ドルでした。

損金計上は8.86億ドル、前期比+1.78億ドルでした。

貸倒引当金の積み増し額は2億ドルでした。これは石油・天然ガス・セクターの環境悪化によります。

純損金計上比率は0.38%でした。

支払遅延資産を見ると、確かに石油・天然ガス・セクターが増えているのですが、その他のセクターの内容が改善しているので、全体としては危険を感じさせる水準ではありません。

ウエルズファーゴの場合、個人ならびに中小企業に対する融資に強いです。その関係で、大企業に対する食い込みは、JPモルガンなどに比べると弱いです。その関係でウエルズファーゴの石油・天然ガス関連の融資も、どちらかといえば中小企業に対する貸付となっています。

石油・天然ガス企業の場合、零細なところほどこのところの原油価格の低迷で経営が苦しくなっています。そのことはウエルズファーゴのエネルギー企業向け融資ポートフォリオは他のメガバンクのそれよりも劣化のペースが速くなるリスクがあることを意味します。

バンク・オブ・アメリカ

バンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)の第1四半期決算はEPSが予想に一致する21¢、売上高が予想203.2億ドルを下回る197億ドルでした。

総資産利益率は0.50%、株主資本利益率は3.8%と、同行は余り儲かっているとは言えません。

バンク・オブ・アメリカの部門別純利益は下の通りでした。それらはおおむね改善しています。唯一、グローバル・バンキングの利益が前年比で減っている理由は、シェール向け貸付の貸倒引当金を積み増したことが原因です。

貸倒引当金は9.97億ドル(去年同期は7.65億ドル)でした。

エネルギー・セクターに対する貸付は218億ドルで、前年同期より3億ドル減りました。

消費者向け融資のクレジット内容は改善しました。

純金利マージンは2.31%でした。

グローバル・マーケッツ部門の売上高は40億ドル(-2.4億ドル)でした。債券為替コモディティ部門は-17%、株式部門は-11%でした。

シティグループ

シティグループ(ティッカーシンボル:C)の第1四半期決算はEPSが予想$1.05に対し$1.10、売上高が予想174.4億ドルに対し175.5億ドルでした。売上高成長率は前年比-11.1%でした。売上減の主な理由は投資銀行業務が業界全体として低調だったことによります。

営業費用は-3%でした。

融資残高は6,190億ドル(+1%)でした。

一株当たりタンジブル・ブックバリューは、ほぼ2ドル増え、$62.58になりました。

インターナショナル・コンシュマー・バンキング売上高は28.96億ドル(前年比-2%)でした。このうち南米は+2%でした。なおシティグループはブラジル、アルゼンチンなどの消費者ビジネスから撤退を発表しており、コンシュマー・ビジネスはメキシコだけが残ります。それ以外の南米は、法人向けビジネスです。アジアは-4%でした。アジアの低迷は投資商品販売の低迷とカード事業における規制強化によります。

北米コンシュマー・バンキングの売上高は48.74億ドル(前年比-4%)でした。消費者向け融資における焦げ付きは大変低いです。

シティグループは支店網を一層縮小し、一店舗当たりの預金高を増やしています。現在、全体での従業員数は225,000人です。

インスティチューショナル・クライアント・グループの売上高は80.36億ドル(前年比-12%)でした。主な項目としては:

  • 投資銀行 8.75億ドル(前年比-27%)
  • 債券 30.85億ドル (前年比-11%)
  • 株式 7.06億ドル (前年比-19%)

でした。

石油・天然ガスへの融資に関しては、もし原油価格が30ドル近辺で推移すれば14億ドル程度の引当が必要になります。これは前回の決算の際に示した10億ドルというガイダンスより悪いです。

1月、2月のトレーディング環境はたいへん厳しかったです。しかし2月半ばからトレーディング環境は幾分、上向きました。

最後に、分離・処分を決めている資産を管理しているシティホールディングスでは資産売却が進んでおり、現在の資産残高は前年比-44%、シティグループ全体のバランスシートの4%まで縮小しました。この部門は既に重要でなくなっているので、来期以降はシティホールディングスを内訳として開示することを止めます。

モルガン・スタンレー

モルガン・スタンレー(ティッカーシンボル:MS)の第1四半期決算は予想を上回りました。

EPSは予想47¢に対し55¢でした。売上高は予想76.3億ドルに対し77.9億ドルでした。売上高成長率は前年比-21.3%でした。

インスティチューショナル・セキュリティーズ部門売上高は37億ドルでした。これは債券・コモディティ部門の厳しい環境を反映しています。株式セールス&トレーディング、ならびにM&Aアドバイザリーは堅調でした。

次に富裕層資産運用部門ですが、売上高は37億ドルでした。同部門の税引き前マージンは21%でした。純金利マージンは良く、取引関連収入は低調でした。フィー・ベースの預かり資産は59億ドル増えました。

投資運用部門の売上高は4.77億ドルでした。プライベート・エクイティー、不動産などの運用フィーを一部失ったことが足を引っ張りました。

株主資本利益率は6.2%でした。これはモルガン・スタンレーとしては不本意な数字だと思います。一株当たりブックバリューは35.34ドルでした。

今期、株式引受のビジネスは相場環境の悪化によりゼロに近かったです。その後、市場環境が上向いたため株式の引受け案件は今年下半期にかけて戻ってくると見ています。

M&Aのパイプラインは充実しています。債券・コモディティ部門は、なんとか持ちこたえています。

ゴールドマン・サックス

ゴールドマン・サックス(ティッカーシンボル:GS)の第1四半期決算は、いまひとつでした。

EPSは予想$2.50に対し$2.68でした。売上高は予想65.2億ドルに対し63.4億ドル、売上高成長率は前年比-40.3%でした。

株主資本利益率は6.4%にとどまりました。

投資銀行部門売上高は前年比-23%の14.6億ドルでした。M&Aアドバイザリー・フィーは-20%の7.71億ドルでした。引受けフィーは-27%の6.92億ドルでした。また投資銀行部門のバックログは去年に比べて減少しました。

機関投資家向けサービス部門の売上高は前年比-37%の34.4億ドルでした。債券為替コモディティは-47%の16.6億ドルでした。株式は-23%の17.8億ドルでした。

営業費用は-29%の47.6億ドルでした。コンペンセーション比率は不変で、42%でした。

一株当たりブックバリューは$173でした。