【今日のまとめ】

  • 第1四半期は欧州、中国、日本のパフォーマンスが悪かった
  • ドイツ経済に陰りが見え、イタリアの失業率の改善も止まった
  • 欧州中央銀行は大胆な緩和措置を発表した
  • 中国経済への懸念は和らいだ
  • 代わって日本経済への懸念が台頭している
  • ドル安は米国の輸出企業、原油、金、新興国にとってプラス

第1四半期の世界の株式市場のパフォーマンス

2016年も第1四半期が終わりました。そこで今回はサラッとマーケットのこれまでの軌跡を振り返るとともに今後の戦略について考えたいと思います。

まず年初から4月1日までの世界の株式市場のパフォーマンスは下のグラフの通りです。

欧州市場不振の原因

欧州市場は、パリでのテロ事件、メガバンクの自己資本に対する不安が出たことなどを受けて軟調でした。

また中国経済の鈍化に伴い、ドイツの輸出も不振でした。これを受けてドイツの製造業購買担当者指数にも陰りが見られました。

ユーロ圏の失業率は徐々に改善しています。

しかしフランスやイタリアなど、一部の国では失業率が高止まりしたままです。下はイタリアの失業率です。

欧州中央銀行は緩和措置を発表

欧州中央銀行(ECB)はこのような状態をみて、踏み込んだ緩和措置を発表しました。具体的には:

政策金利(Main Refinancing Rate):予想0.05%に対し0.00%

上限政策金利限界貸出金利(Marginal Lending Facility Rate):予想0.30%に対し0.25%

下限政策金利中銀預金金利(Deposit Facility Rate):予想に一致の-0.40%

資産買入れプログラム:これまでの600億ユーロを800億ユーロへ。社債も含める

貸出条件付き長期資金供給オペ第2弾(TLTRO2):融資資産の30%まで担保を持ち込めば4年間、0%の金利で融資

という、かなり踏み込んだ緩和策を発表しました。

なお、マイナス金利は好ましからざる副作用も伴うため、「今後は利下げではなく、量的緩和政策を主に援用する」とコメントされました。

具体的に、もし欧州の景気が回復しないのであれば、次は金融機関の発行する社債を買い入れることが発表される可能性があります。

目先の注目は6月23日に予定されている英国のEU離脱の是非を問う国民投票です。

中国経済への懸念は後退

上海総合指数のパフォーマンスも悪かったですが、中国の製造業購買担当者指数が上向いたことなどから、景気に対する不安は幾分、和らいだと考えられます。

急激な円高で投資家の目は日本へ

中国に代わって、世界の投資家の注目を集め始めたのが日本です。とりわけこのところの急激な円高で、アベノミクスが失敗に終わるリスクが高まっていると感じる外人投資家が増えています。

先頃日銀が発表したマイナス金利導入が、金融機関に不評だったので、「手詰まり感」が出ています。これが日銀のクレディビリティの毀損につながっているというわけです。

円高になると輸出企業は厳しくなりますし、外国人観光客の足も遠のくことが懸念されます。

ドル安は原油、金にプラス

ドル安は、米国の輸出企業にとって朗報であることはもちろん、ドル建てで取引されている原油価格にとってもプラスです。同様のことは、金についても言えます。

原油価格は底打ちを感じさせるチャートになっています。

北米のロータリー・リグカウントは、このところ一段と絞り込まれています。

それがようやく生産の減少にもつながりはじめています。

ドル安は新興国にプラス

ドル安は新興国にとっても朗報です。なぜならブラジルなどの新興国は輸出に占める一次産品の比率が高いからです。

これらの品目は、ドル安局面では上昇しやすいです。

汚職、失政が続いたブラジルでは、ルウセフ大統領を罷免に持ち込みたいという動きがあります。投資家から嫌われている同政権が崩れれば、株式市場はさらに上昇することが予想されます。

新興国に対する資本流入は、過去で最も低調です。

このことはちょっとしたきっかけで新興国のマーケットがリバウンドしやすいことを示唆していると思います。

投資戦略

今後の投資戦略としてはドル安で恩恵をこうむる米国のエネルギー、素材、工業、市況株を物色の中心に据えたいと思います。また新興国株式も、資源輸出国を中心にアウトパフォーマンスが期待できると思います。