3月22日
事業環境の不透明感が長期リスクに、金融改革やオフバランス取引で収益性に課題も
本土銀行セクターの事業環境はより不透明感が増し、長期リスクがバリュエーションに影響し始めた。BOCIは、銀行銘柄が当初の勢いを失い、セクターに対し徐々に警戒感が高まると予想。利益成長の減速と不透明な政策がセクターバリュエーションの上昇に歯止めをかけるとみている。
中国経済が金融緩和策を背景に2013年上期に強い成長を示した場合、下期にはインフレ圧力に直面する可能性が高く、そうなれば再び金融引き締め策が求められることになるだろう。これは銀行銘柄の株価下落を招く要因になりうる。また一方で、現在の比較的緩い金融政策が経済成長につながらない場合、政府がさらなる緩和政策により景気の底上げを図れば、一時的に銀行銘柄は上昇するものの、債権リスクの上昇からセクターのバリュエーションは長期的には下方修正されることになるだろう。
業界をめぐる不透明な状況と多くの課題により、13-14年の本土銀行セクターの利益成長はそれぞれ前年比6.21%増、3.7%増にとどまるとBOCIは予想している。中国上場企業の利益成長が12年のマイナス成長から13年はおよそ10%増に好転するとの推測があるのに対し、銀行セクターが同様の業績を示す可能性は低く、過去数年間にみられたような市場を上回る成長率は最早達成できないとBOCIは指摘している。
金融改革の進捗もセクターに様々な影響が予想される。金利や為替レートの改革、特に金利決定メカニズムの変更は、利ざやで稼ぐ従来のビジネスモデルに大きな影響をもたらす。金利自由化は緩やかに進むとみられるものの、銀行の利ざやは中長期的に圧迫される見通し。さらに、証券、保険業界との競争激化も圧力となるだろう。
銀行の富裕層向けビジネスが近年成長している。12年末の市場規模はBOCIの推定でおよそ7兆6000億元。信託、証券、ファンドとの提携により、銀行は合法的に規制をくぐりぬけ、富裕層向け投資商品で収入を増やした。こうしたオフバランス取引は今後、より厳しい規制の導入により減速が見込まれる。
不透明な事業環境により、銀行セクターの収益性は今後低下する可能性が指摘される。流動性の高さや12年業績への期待から現在は投資家による銀行銘柄の見直しが進んでいるが、やがて規制リスクや引き締め観測が強まれば、銀行株の魅力は失われるだろう。BOCIは現在のバリュエーション水準からの上値余地は限定的とみて、投資判断を中立の見方に据え置いている。セクター内では比較的利益成長が高く、割安なバリュエーションの銘柄として重慶農商銀行(03618)および中国農業銀行(01288)を推奨している。
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