【今日のまとめ】

  • 雇用統計の数字が良かったので利上げの可能性が強まった
  • 銀行の純金利マージンはイールドカーブの傾きで決まってくる
  • 第3四半期のトレーディングの環境は厳しかった
  • シティグループとバンク・オブ・アメリカは、ようやく投資対象に

雇用統計で利上げ観測が強まった

11月6日に発表された非農業部門雇用者数は予想18万5千人に対し、結果27万1千人とたいへん強い数字でした。

このため12月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートが利上げされる可能性が強まりました。

これは超低金利で利ザヤの縮小に悩んでいた銀行にとって歓迎すべきニュースです。

そこで今日は主な銀行の最近の様子についてアップデートします。

銀行の収益構造

銀行はメーカーのようにモノを作って売っているわけではありません。したがって通常、我々が問題にする「売上高」に相当するものは「純金利収入(Net Interest Income)」と「非金利収入(Non-interest Income)」のふたつを足したものになります。なお非金利収入には各種サービス・フィーや投資銀行業務からの売上が含まれます。

純金利収入は調達金利と貸付金利の差で決まります。これを純金利マージンと呼びます。

純金利マージンは、債券のイールドカーブによってほぼ決定されます。

イールドカーブとは、短期金利から順番に、1年、10年、30年……と言う風に、だんだん償還期限の長い債券利回りをグラフ上にプロットした線を指します。

ごく単純化した言い方をすれば、銀行は上のグラフの左側でお金を借りて、右側でお金を運用するのです。

イールドカーブが急こう配のとき銀行は儲けやすく、逆に平坦なときは儲けにくいです。

一般論になりますが、普通、利上げ局面では長期債ほど価格が売られやすいです。

このことから(今後、イールドカーブはもっと急こう配になるだろう)と考えている投資家が多いです。

雇用統計の数字が強かったのを見て、投資家が銀行株を買ったのは、上に説明したような理屈からです。

最近の銀行の経営状況

さて、先に発表された第3四半期で米国の主要金融機関のトレーディング収入ならびに純金利収入は下のようになっていました。

一方、純利益額は下のグラフのようになっていました。

第3四半期中はどちらかといえばトレーディングで儲けにくい市場環境でした。その関係でゴールドマン・サックス(ティッカーシンボル:GS)のような債券トレーディングへの依存度の高い金融機関の利益率は低く、伝統的な貸付業務を得意とするウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)のような銀行が儲かりました。

これまで後回しにされてきたシティグループとバンク・オブ・アメリカ

リーマンショック以降、アメリカで上手く経営されている大手金融機関としてはウエルズファーゴ、JPモルガン(ティッカーシンボル:JPM)、ゴールドマン・サックスの3社の名前が上がることが多いです。

シティグループ(ティッカーシンボル:C)とバンク・オブ・アメリカ.(ティッカーシンボル:BAC)の二行に関しては、先の金融危機で大きく傷つき、その後処理に追われてきました。

正直言ってこの両行は投資対象としては尻込みする内容でした。しかし、ようやく投資対象として考慮する仲間に入れることが出来るところまで回復してきたと言えるでしょう。

シティグループ

先頃発表されたシティグループの第3四半期決算ではEPSがコンセンサス予想$1.28に対し$1.31と良い内容でした。

シティグループはとりわけ国際業務に力を入れています。その関係で、アメリカ経済だけでなく、メキシコや南米などのエマージング・マーケットの経済の影響を受けます。

融資ポートフォリオは消費者向けと企業向けがちょうど半々くらいです。

消費者向け融資の国別内訳は下のようになっています。

一方、企業向け融資の国別内訳は下のようになっています。

ただ(主にアメリカ経済の強さに投資したい)と考えている投資家にとってはシティグループの海外ポートフォリオは邪魔だという風にも言えるでしょう。

バンク・オブ・アメリカ

バンク・オブ・アメリカの第3四半期決算ではEPSがコンセンサス予想33¢に対し37¢でした。

バンク・オブ・アメリカの事業構成は下のようになっています。

このうち消費者バンキングではクレジットカードやホームローンの比率が高いです。

クレジットカードやホームローンの焦げ付きはどんどん低下しており、結果として同行の消費者バンキングにおける貸倒金計上額は減っています。

グローバル・マーケッツのビジネスはメリルリンチの機関投資家向けセールス&トレーディングのビジネスであり、変動が激しいです。

グローバル・バンキングのビジネスは主に貸付けですが、投資銀行フィーなどもここに含まれます。