【今日のまとめ】

  • シンガポールは建国50周年を迎えた
  • 少子高齢化の問題を抱えている
  • 外国人労働者への依存を減らす方向へ
  • 華僑ネットワークを通じて中国とも密接な関係がある
  • 家計部門の負債比率が高い

建国50周年

シンガポールは先日、建国50周年を祝いました。リー・クアンユーの指導の下で同国が驚異的な経済成長を遂げたことは皆さんもよくご存じだと思います。

シンガポールの経済運営については、我々が学ぶべき点が多いのですが、だからといって同国の未来に不安が全く無いかと言えば、それはそうとも限りません。

少子高齢化

まずシンガポールは日本同様、少子高齢化社会です。出生率は日本より低いです。また2010年から2030年にかけての高齢化の速度は国連の資料によると日本よりも速いです。このことは就業年齢人口が総人口に占める割合が今後低下し、日本同様、少ない働き手が多くの老人を支えなければいけない社会が到来することを示唆しています。

外国人労働者の問題

ただシンガポールと日本の大きな違いは、シンガポールの場合、外国人労働者を積極的に受け入れているという点です。

しかしこれについては外国人に雇用機会を解放し過ぎたという反省から、最近では外国人労働者への過度の依存から脱却が試みられています。下のグラフは新規雇用に占めるシンガポール人と外国人の数を表したものです。

外国人労働者はシンガポール人より廉価な労働力なので、それをシンガポール人に置き換えると、効率は悪くなります。

そこで生産性をどう向上させるか? が政府の大きな課題になっています。

シンガポールは高度に知識集約的な経済となっており、その産業構造に見合った労働力が必要になるわけです。

金融センターとしてのシンガポール

シンガポールは周辺国の裕福層からの資本の集積地になっています。華僑ネットワークを通じ、中国経済とも密接なつながりがあります。

シンガポール経済は開放度が極めて高く、その分、周辺国の景気の影響を受けやすいです。お隣のマレーシアは、現在、通貨急落に見舞われています。このため周辺国からの旅行者の減少が懸念されるところです。

シンガポールのGDP成長率は、だんだん落ちてきています。

シンガポールは東南アジアの物流、金融の中心地であり、自国経済の規模に比べて、大変大きな輸入、輸出額を誇っています。

この中には石油精製ならびにその派生商品の輸出も含まれています。同国にはエクソン・モービルの巨大な精油所があり、原油を輸入し、それをエクソン・モービルの精油所でガソリンやジェット燃料に加工し、再輸出するわけです。

原油価格の下落は、このような川下部門を持つ同国にとってプラスに働きます。上のグラフで輸入、輸出の両方の数字が下がっているのは、そのような事情によります。

シンガポールの消費者物価指数は原油価格の下落などを受けて下がっています。

家計部門の負債比率が高い

シンガポールの家計部門の負債比率は、極めて高いです。

このところ家計部門の負債は増える一方でした。

この原因として、外国人誘致政策で住宅価格が高騰したことがあります。この行き過ぎた住宅価格を冷やすため、政府は住宅価格抑制策を打ち出しています。

シンガポール政府は、シンガポール・ドルの変動に関して、以前より大きなボラティリティーを容認する方向を打ち出しています。

しかし上に述べたようにシンガポールはレバレッジが高い経済なので、ボラティリティーの増加は経済のかく乱要因になるかもしれません。