【今日のまとめ】
- いよいよオリンピックが来年8月に迫っている
- 中国の建設ブームが去ったのでブラジルの輸出セクターが苦しんでいる
- ペトロブラスの再国有化は海外の投資家に後味の悪さを残した
- 経済のファンダメンタルズは軒並み悪化している
- 投資家のセンチメントは陰の極か?
リオデジャネイロ五輪まであと400日
ブラジルでは2016年8月にオリンピックが開催されます。同国がオリンピックの招致に成功したときは、ずいぶん期待が盛り上がったのですが、その後、景気後退やスキャンダルが相次いだことでブラジル株は世界の投資家から見放されてしまった感があります。
そこで今日はブラジル経済の現況についてまとめてみたいと思います。
中国の建設ブームの終焉
ブラジルは中国の建設ブームの恩恵をこうむってきました。一例としてビルの建設には鋼鉄製の梁(はり)や鉄筋を必要とします。ブラジルはオーストラリアと並んで、その原料となる鉄鉱石の輸出国です。
その他、インフラストラクチャにまつわる、あらゆるコモディティの価格が中国経済の減速で下落しています。ブラジルの輸出セクターが苦戦しているのはそのような理由によります。
ペトロブラス再国有化という失策
ブラジルは石油会社ペトロブラスがリオデジャネイロ沖の大深水油田を発見した際、これまでの方針を180度転換し、過半数株式を取得することでペトロブラスを再国有化しました。さらに油田の鉱区の入札から外国企業を締め出す措置を取りました。
そのペトロブラスには「入札に際して度重なる談合があったのではないか?」という疑惑が生じ、検察による捜査が入っています。そのためCEOが引責辞任した他、幹部の多くが入れ替わりました。
世界の企業は、政治的リスクを懸念してブラジルへの投資を敬遠しました。このことはブラジルが外資を導入することが困難になったことを意味します。
悪化する経済のファンダメンタルズ
ブラジルはインフラストラクチャの整備が立ち遅れています。従って、先ずインフラを整備することが経済成長にとって欠かせないのですが、海外からの投資資金の離散と政府財政の悪化で十分な投資が出来ませんでした。
ブラジルのGDP成長率がマイナスになった一因は、ここにあります。
ブラジル・レアル安は輸入品のインフレをひきおこします。このためインフレはだんだん悪化しています。
コモディティ価格の下落と景気後退の影響で政府の税収はプレッシャーを受けており、基礎的財政収支は悪化しました。
経常収支も悪化しました。
外貨準備は今のところ十分ですが、取り崩される傾向にあります。
外国からの投資資金が低迷しているので信用成長による消費ブームも持続不可能になっています。
雇用と賃金上昇は、ブラジル経済にとって明るい材料だったのですが、このところの経済の低迷を受けてそれらの面での改善もストップしてしまっています。
消費者と経営者のセンチメントは、どちらも悪いです。
これらに追い打ちをかけるように、ブラジルは水不足に悩まされており、これは同国の得意分野である農業にも暗い影を落としています。
ブラジル政府は財政収支改善のため年金や失業保険の支給基準の厳格化、電力の補助金の廃止、燃料、マイカー保有に対する増税などを発表しています。
投資家のセンチメントは陰の極か?
このようにブラジルには明るい材料はありません。しかし2011年以来、かれこれ3年半も冴えない経済が続いてきたので、投資家はブラジルに対して、何の期待も抱いていません。そのことはオリンピックを前に少しセンチメントが好転するだけで、ブラジルの経済や株式市場が底入れしやすい環境になっていることを示唆しています。
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