【今日のまとめ】

  • 選挙が終わり、不透明感が払しょくされた
  • 事業主の信頼感は向上している
  • インフレは鎮静化している
  • 財政収支には改善が見られる
  • 構造改革の努力は今後も続けられるべき

国際通貨基金がインドに関する年次協議報告書を発表

国際通貨基金(IMF)がインドに関する年次協議報告書(Article Ⅳ Consultation)を発表しました。そこで今日はインド経済の近況について紹介したいと思います。

先ず全体としてIMFはインドの置かれている状況は良くなっていると評価しています。第一に選挙が終わりインド人民党(BJP)のナレンドラ・モディが首相に就任したことで、政治的な不透明感が払しょくされたことが挙げられます。

新しい経済政策が打ち出され、事業主の信頼感が向上しています。また、折からのコモディティ価格の下落でエネルギーを一部輸入に頼り、しかもエネルギーに対して補助金を出しているインドの貿易収支や財政収支にはフォローの風が吹いています。これらのことから成長は加速すると見られています。

その反面、財政赤字は依然として残っており、それが景気支援策を打ち出しにくくしています。さらに農業、鉱業、発電などの分野で構造的な問題を抱えています。これらが成長抑制要因として働いています。

最近、インフレは鎮静化する傾向にあるとはいえ、未だインドはインフレになりやすい体質なので金利政策は自ずと引き締め気味にならざるを得ません。

GDP

下はGDPのグラフですが2013年にかけて減速したのはグローバルな不均衡ならびに電力をはじめとする供給面での制約などが原因です。

その後センチメントは上向いており、今後、インドは世界の中で最も急速に成長する国のひとつになると考えられています。

物価

インフレ率は2013年11月の11.2%から2014年12月には5%まで下がってきました。これはインドの中央銀行であるインド準備銀行が2013年9月から2014年1月にかけてレポ・レートを75ベーシスポイント引き上げることでインフレ退治をした成果が出たことに加え、農産物価格の安定、原油価格の下落などの要因が考えられます。

インドはディーゼル価格の自由化、LPガス価格の補助金に上限を設けるなどの措置により、政府の補助金負担の軽減を図っています。

財政収支

財政収支は徐々に改善しています。

輸入と輸出

次に輸入と輸出ですが2013/2014年度に金輸入に対する関税を引き上げたことで2013年6月頃を境にゴールドの輸入が急減しました。これが貿易収支改善の一因です。また原油価格の下落も貿易収支にとってプラスです。

外貨準備

海外の投資家はインドが原油安局面で恩恵を受けることを知っているので、インドへの投資に積極的です。海外からの投資資金の流入はルピーの安定を意味します。インドの外貨準備は今後漸増すると見られています。

外貨準備は輸入の6カ月分を上回っており、これは安心できる水準と言えます。

まとめ

総括すれば、インドは方向としては良い方向に向かっていると言えます。しかし経済の構造改革に関しては今後も積極的に取り組んでゆく必要があります。その点、先日発表された予算では、申し訳程度の改革しか盛り込まれていなかったため、モディ首相に期待をかけていた投資家は落胆の色を隠せませんでした。

中国経済が引き続き減速する中、インドは中国との経済的なつながりは小さく、連動性が低いです。そのことは全般的に冴えない新興国経済の中にあってインドがユニークな投資チャンスを提供していることを意味すると思います。