【今日のまとめ】
- アバゴ・テクノロジーズは買収で大きくなっている
- IDTIはワイヤレス・チャージャーで注目されている
- マイクロセミは航空宇宙、防衛産業に強い
- NXPは車載エレクトロニクスに強い
- スカイワークスはiPhone 6でシェア・アップを果たしている
多様化する半導体の活躍の舞台
これまでコンピュータと言えばノートPCを真っ先に思い浮かべることが多かったですが、最近はポータブル・デバイスの普及、IoT(インターネット・オブ・シングス)、ウェアラブルなどの登場で、コンピュータは、ありとあらゆるところで活躍しはじめています。
そこで今日はそのような新しいビジネス・チャンスに対して良いポジションにつけている半導体メーカーを紹介したいと思います。
会社名 | コード | 業務内容 |
---|---|---|
アバゴ・テクノロジーズ | AVGO | ワイヤレス、ストレージ向け半導体 |
インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー | IDTI | 4G、データセンター向け半導体、ワイヤレス・チャージャー |
マイクロセミ | MSCC | 航空宇宙、防衛産業を得意とする半導体メーカー |
NXPセミコンダクターズ | NXPI | 車載エレクトロニクス、セキュアーID |
スカイワークス・ソリューションズ | SWKS | スマホ向け半導体 |
アバゴ・テクノロジーズ
アバゴ・テクノロジーズ(ティッカーシンボル:AVGO)は、ヒューレット・パッカード(ティッカーシンボル:HPQ)の半導体部門がスピンオフされて出来た会社です。本社はシンガポールです。全従業員の42%はアジアをベースにしています。
同社は半導体のビジネスで経験豊富なホック・タン氏に率いられています。アバゴは2014年6月に老舗半導体企業、LSIを、8月にはPLXテクノロジーを、それぞれ買収しました。これらのことから、アナログ、ミックスト・シグナルの半導体のデザインから生産まで、幅広いノウハウを持っています。
同社の事業は下の四部門から成っています。
ワイヤレス部門ではスマホ向けRFパワー・アンプ、RFフィルター、基地局向け低ノイズ・アンプなどを作っています。
ワイヤード・インフラ部門ではサーバ、ルーター、データ・コミュニケーション向け光ファイバー・トランシーバー、ASICsなどを作っています。
ストレージ部門ではハードディスクドライブ向けのシステム・オン・ザ・チップ(SoCs)、プリアンプ、ストレージ・システム向けのSCSIならびにRAIDコントローラー、SSD向けカスタム・フラッシュ・コントローラーなどを作っています。
工業向け部門ではクルマのインフォテイメント・システム向け各種製品やLEDs関連製品を作っています。
同社は自社でも半導体工場を持っていますが、大部分は台湾セミコンダクター、ASE、WINセミコンダクターなどのファウンドリーに生産を委託しています。
同社の売上高の18%はフォックスコン向けで、最終顧客ベースではアップルが10%を占めています。
下は同社のグロスマージンの推移です。
同社の決算は10月末〆です。従って下のグラフで2014年とあるのは2014年10月末で〆た1年間の業績になります。また2014年の売上高が急増しているのはLSIとPLXを買収したためです。
- 【略号の説明】
- DPS一株当たり配当
- EPS一株当たり利益
- CFPS一株当たり営業キャッシュフロー
- SPS一株当たり売上高
2014年の利益はLSIとPLXを買収した際の事業統合コスト1.4億ドルを含んでいるため、小さく見えています。
2月25日に発表された同社の第1四半期(1月期)ではEPS予想$1.94に対し$2.09、売上高予想16.4億ドルに対し16.6億ドルと、いずれも予想を上回りました。また決算発表に際して、ファイバー・チャンネルのコネクティビティ部品を作っているエミュレックス(ティッカーシンボル:ELX)を6億ドルで買収すると発表しました。
インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー
インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(ティッカーシンボル:IDTI)は1980年にシリコンバレーで創業された半導体デザイン会社です。
2014年にスカイワークス・ソリューションズ(ティッカーシンボル:SWKS)からグレッグ・ウォーターズが同社に移り、経営改革に乗り出しています。同社の事業セグメントは2014年のアニュアルレポートによれば次の通りです。
しかし今後は:
- ワイヤレス・コミュニケーションズ・インフラストラクチャ
- データセンター向けソリューション
- ワイヤレス・チャージング
の三つに注力する方針です。
ワイヤレス・コミュニケーションズ・インフラストラクチャでは4G(第4世代携帯ネットワーク)向け半導体を作っています。またクラウド・ラジオ・アクセス・ネットワーク(C-RAN)向けの需要が今後拡大すると見られています。C-RANはリアルタイム・ビデオを確実にスマホに届けるためのインフラ・ソリューションです。
データセンター向けソリューションはこのところ成長著しく、先ごろ発表された第3四半期決算では前期比+41%の成長を見ました。その原動力となったのは高性能メモリー・インターフェース製品です。
ワイヤレス・チャージングは、スマホやウェアラブルなどのデバイスに、電源ケーブルを使わなくても、充電台に端末を置くだけで充電できる技術を開発しています。
IT調査会社アイサプライは、2015年に8億個のワイヤレス・パワー・トランスミッターならびにレシーバーが出荷されると予想しています。ゆくゆくはスマホやスマート・ウォッチの大半がワイヤレス・チャージャー対応になると思われます。
ワイヤレス・チャージャーには大きく分けてレゾナンス方式と電磁誘導方式という二つの方式があります。現在主流になっているのは、電磁誘導方式です。これは「ファラデーの電磁誘導の法則」を利用しています。具体的には電気を送る側、すなわちトランスミッターが直流を交流に変換し、電磁波を受ける側、すなわちレシーバーに送ります。レシーバーでは交流が直流に変換されます。
スマホや家電のメーカーなど、100社以上が集まって作られた、ワイヤレス・パワー・コンソーシアムという団体は、Qi(「チィ」)という業界規格を打ち出しています。
ワイヤレス・チャージャー向けのソリューションを出している会社は数社ありますが、インテグレーテッド・デバイス・テクノロジーだけが、シングル・チップ・ソリューション、すなわちひとつの半導体の中に全ての制御機能を盛り込んだものを販売しています。
下はインテグレーテッド・デバイス・テクノロジーのグロスマージンです。
インテグレーテッド・デバイス・テクノロジーの会計年度は3月末〆です。従って下の業績の2014年とは、2014年3月30日で〆られた1年間を指します。
マイクロセミ
マイクロセミ(ティッカーシンボル:MSCC)は1960年に創業された半導体企業です。同社は高性能アナログならびにミックスト・シグナルの半導体を作っています。
同社は伝統的に航空宇宙産業や防衛産業に強いです。
それらのマーケットは、参入障壁が高いです。一例として、同社の製品はボーイング787、エアバスA350などに採用されています。防衛関連は、政府が顧客なので防衛費削減の決定があった場合、同社の売上に響きます。
通信向けではLTEインフラストラクチャなどが主なターゲット市場となります。
同社のグラスマージンは下のグラフのように推移しています。
マイクロセミの会計年度末は9月末です。従って下の2014年とは2014年9月28日で〆た1年間を指します。
NXPセミコンダクターズ
NXPセミコンダクターズ(ティッカーシンボル:NXPI)はオランダに本社のある半導体企業です。同社はもともとフィリップスの半導体部門であり、55年の歴史を持っています。2006年にフィリップスが半導体部門をスピンオフしたため、NXPセミコンダクターズが誕生しました。
同社は自動車、セキュアーID、インフラストラクチャ、工業、モバイル・ペイメントなどの市場向けに高パフォーマンス・ミックスト・シグナル半導体を提供しています。主な顧客はアップル、ボッシュ、コンチネンタル、デルファイなどです。
また同社は標準製品も作っており、それらはアロー、アブネット、WPGなどのディストリビューション・パートナーを通じて販売されています。
同社は、いわゆる「コネクテッド・カー」と呼ばれる車載エレクトロニクスの市場の発展の恩恵をこうむります。具体的には車載エンターティメント・システム、車内ネット環境の実現、リモート・ドアロック・システム、レーダー・システムなどを提供しています。
またIoT(インターネット・オブ・シングス)と呼ばれる、家電製品などのインターネットへの接続でもビジネス機会が広がります。具体的にはスマート・ホーム、スマート・ビルディング、スマート・グリッド、インテリジェント・ロジスティックス向けの製品を提供しています。
ウェアラブル市場ではモバイル・オーディオ、高速インターフェース、パーソナル・ヘルス&フィットネス市場向けの製品を提供しています。
セキュリティ市場ではスマホによる決済、スマート・バンクカード、ユーザー認証、エンベッデッド・セキュリティなどのソリューションを提供しています。
同社はさらにNFC(ニア・フィールド・コミュニケーションズ)と呼ばれる技術を提供しています。これはスマホなどのデバイスが、近くにある決済端末などのデバイスと情報をやりとりすることができるシステムを指します。
同社は2015年3月にフリースケール・セミコンダクターを買収すると発表しました。
スカイワークス・ソリューションズ
スカイワークス・ソリューションズ(ティッカーシンボル:SWKS)は高パフォーマンス・アナログならびにミックスト・シグナル半導体のメーカーで、CMOSにとどまらず、ガリウムヒ素など、さまざまなプロセス技術に対してノウハウを持っています。
同社の主な製品ポートフォリオはスマホ向けアンプ、アテニュエーター、コンバーター、デモジュレーター、フィルターなどです。
同社の主要顧客はフォックスコン、HTC、LG、サムスン、シスコなどです。
なかでもアップルのiPhone 6では同社の半導体がシェア・アップを果たしており、それが売上増の一因となっています。
スカイワークス・ソリューションズの会計年度末は9月末日です。従って下の2014年とは、2014年10月3日に〆られた1年間を指します。
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