【今日のまとめ】
- アッヴィはC型肝炎治療薬ヴィキラ・パックで注目されている
- アレクシオンは低フォスファターゼ症での承認がカギを握っている
- アムジェンはコレステロール低下薬に注目
- バイオジェン・アイデックはアルツハイマー症治療薬で注目されている
- セルジーンは強気のガイダンスを提示した
- ギリアド・サイエンシズはC型肝炎治療薬に注目
- リジェネロンはコレステロール低下薬に注目
バイオテクノロジーのおさらい
バイオテクノロジーとは遺伝子工学の切り取り・貼り付け(cut & paste)技術を使うことで病原菌を大量生産し、ピンポイントで病気の原因を突き止め、さらにその原因に直接働きかける薬を作る技術を指します。
近年、この技術による新薬が続々と米国食品医薬品局(FDA)から承認され、バイオテクノロジーは黄金時代を迎えています。
アッヴィ
アッヴィ(ティッカーシンボル:ABBV)は、ヒュミラ(HUMIRA)という関節リウマチ、乾癬、クローン病、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎(小児リウマチ)、腸管型ベーチェット病、潰瘍性大腸炎などの治療に用いられる薬剤を作っています。その他、全部で11種類の薬剤を販売しています。
アッヴィは去年の12月に米国食品医薬品局(FDA)からヴィキラ・パックの承認を受けました。ヴィキラ・パックはC型肝炎治療薬で、治癒率は90%を超えます。C型肝炎治療薬の市場はこれまでギリアド・サイエンシズ(ティッカーシンボル:GILD)の独壇場でしたが、薬効面でギリアドにじゅうぶん対抗しうるライバルが登場したわけです。
C型肝炎治療薬の潜在市場規模は2兆円を超えると言われており、こんにちの米国の新薬のマーケットで最も注目されている市場です。
ヴィキラ・パックは12週間の投与にかかる薬代の総額が996万円(定価)に設定されており、これはギリアドのハーボニの1,130万円より安いです。ただしヴィキラ・パックは処方箋が複雑であり患者にとって少し使い勝手が悪いです。
既にエキスプレス・スクリプト(ティッカーシンボル:ESRX)は価格の安いヴィキラ・パックだけを独占的に販売すると発表しています。エキスプレス・スクリプトは全米最大のファーマシー・ベネフィット・マネージャー(PBM)であり、C型肝炎治療薬の処方箋の28%程度を同社が扱うことになると思われます。
その反面、CVSヘルス(ティッカーシンボル:CVS)、アンセム(ティッカーシンボル:ANTM)などはギリアドのハーボニを支持すると発表しており、ヴィキラ・パックの一方的勝利ではないことは明らかです。
【略号の説明】
DPS一株当たり配当
EPS一株当たり利益
CFPS一株当たり営業キャッシュフロー
SPS一株当たり売上高
アレクシオン・ファーマシューティカルズ
アレクシオン・ファーマシューティカルズ(ティッカーシンボル:ALXN)は発作性夜間血色素尿症(PNH=ヘモグロビン尿症)患者、ならびに非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)患者向けのエクリズマブ(eculizumab、商品名ソリリス)を販売しています。
aHUSは希少な慢性疾患で、全身の血管に血液凝固を生じる血栓性微小血管障害を指します。普通、aHUSと診断された患者さんはすぐに透析や腎移植を必要とします。また多くの患者さんは重度の合併症を発症します。
アレクシオンは去年の12月30日にFDAに対してエクリズマブを低フォスファターゼ症(hypophosphatasia)にも承認を得るべく申請書を提出しました。低フォスファターゼ症はアルカリフォスファターゼ(ALP)と呼ばれる酵素の不足で子供の骨に異常が生じる疾病です。
FDAはこの承認の時期について明示していませんが、早ければ今年の前半にも承認が下りる可能性があります。若し承認されれば、10億ドル程度の追加的売上高が見込まれます。
アムジェン
アムジェン(ティッカーシンボル:AMGN)は白血球増殖剤のニューラスタ/ニューポジェン、リウマチ治療薬のエンブレル、貧血・心不全治療薬のアラネスプ、赤血球増殖剤のエポジェンなどを展開する老舗のバイオテクノロジー企業です。
同社はエヴォロクマブ(evolovumab=抗PCSK9ヒト化モノクロナール抗体)というコレステロール低下薬を開発中です。早ければ第3四半期頃にも発売できる可能性があります。エヴォロクマブの売上高は20億ドル程度が見込まれています。
バイオジェン・アイデック
バイオジェン・アイデック(ティッカーシンボル:BIIB)は多発性硬化症治療薬のアボネックス、タイサブリなどを展開する企業です。現在の成長の原動力は経口薬テクフィデラです。
同社はアルツハイマー症治療薬を開発中です。1年間に渡り200人の患者に対して行った臨床試験では統計的に意味のある改善が見られました。これに基づき同社は今年中にもフェイズⅢ臨床試験を開始したい考えです。
先日、バイオジェン・アイデックは英国のコンバージェンス・ファーマシューティカルズを買収すると発表しました。コンバージェンスは神経因性疼痛(しんけいいんせいとうつう)向けに新しいタイプの痛み止めの薬を開発している企業です。バイオジェン・アイデックは痛み止め薬の分野はとても有望だと考えています。
セルジーン
セルジーン(ティッカーシンボル:CELG)はレブラミド(Revlimid)というベストセラー薬を作っています。
レブラミドは免疫調節薬(IMiDs)のひとつで、癌細胞を殺したり、癌細胞を攻撃する細胞の働きを支援したり、癌細胞に栄養を補給する血管を作らせないようにする作用があります。これらの機能が総合的に働くことで骨髄腫細胞を減少させます。
セルジーンは第4四半期のEPSガイダンスとして$1.01(前年比+33%)を提示しました。コンセンサス予想は99¢でした。また2015年の通年のEPSガイダンスは予想$3.67に対して新しく$3.71が提示されました。2015年の売上高に関しては予想92.8億ドルに対し、新しい会社側ガイダンスは90から95億ドルが提示されました。さらにレブラミドの売上高に関しては2014年より+14%成長の56~57億ドルになるだろうというガイダンスでした。
ギリアド・サイエンシズ
ギリアド・サイエンシズ(ティッカーシンボル:GILD)は抗ウイルス薬、抗HIV薬の分野でアトリプラ(Atripla)、ツルバダ(Truvada)など充実したポートフォリオを持っています。
それに加えてC型肝炎治療薬ソヴァルディが去年大ヒットしました。同薬はFDAが承認した初の次世代ヌクレオチド酵素阻害薬です。
ギリアドは去年の10月に、ソヴァルディの改良版で、もっと服用が簡単なハーボニを発売しました。この薬は一錠十万円という強気な価格設定がなされており、保険会社をはじめとするペイヤーからは反発の声が上がっています。目先の同社の株価は、そうした批判をどう乗り越えるかにかかっていると思います。
リジェネロン・ファーマシューティカルズ
リジェネロン・ファーマシューティカルズ(ティッカーシンボル:REGN)は滲出型加齢黄斑変性(しんしゅつがたかれいおうはんへんせい、AMD)治療薬、アイリーア(Eylea)でヒットを飛ばしました。
AMDは百万人以上の患者がおり、病状が進行するとクルマを運転できなくなるなど「社会的失明」をもたらします。アイリーアは抗血管新生薬治療法と呼ばれるアプローチを採用しており、血管内皮増殖因子(VGEF)と呼ばれる物質に基づいています。
同社はフランスのサノフィと共同でアリロクマブ(alirocumab)を開発中です。アリロクマブは抗PCSK9ヒト化モノクロナール抗体のコレステロール低下薬です。早ければ第3四半期に発売に漕ぎ着けそうです。アリロクマブの薬効は、アムジェンのエヴォロクマブと同程度だと言われています。
当初、アムジェンの方が早いタイミングでこのコレステロール低下薬を発売するかに見られたのですが、サノフィとリジェネロンはバイオマリンから繰り上げ承認許可証を6,750万ドルで譲り受け、承認待ちの順番を飛び越しました。アリロクマブの売上高は20億ドル程度が見込まれています。
アムジェンは10月に「アリロクマブは、アムジェンのエヴォロクマブのパテントを侵害している」という訴訟を起こしています。若しアムジェンが勝訴すればサノフィとリジェネロンはアムジェンに対しロイヤリティを支払う必要が出ます。
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