【今日のまとめ】

  • シェール革命で先ず天然ガスの増産が起こった
  • 供給過多で一足先に天然ガス価格が崩れた
  • 業者が原油にシフトした関係で、いま原油の需給が崩れようとしている
  • これからはむしろ天然ガスの方が良い

シェールとは?

シェールとは頁岩(けつがん)を指します。頁岩は水中に堆積した泥が固まってできた岩です。シェールは太古の昔に沼沢地帯だったところに多く見られます。この岩は水分や気体を通しにくいです。これは普通の油田が砂まじりの地層に存在するのと好対照をなしています。

いまシェールがどんなものであるかをイメージしやすいよう、鶏がらスープで説明します。

昔の沼沢地には様々な生物が棲んでいました。それらが気象の変化で死滅し、シェールに閉じ込められ、さらにその上に何層もの新しい地層が重なりました。シェールは地下5,000メートル以上の深い位置にあるので、圧力がかかるし、地熱でコトコト煮込んだ状態になります。

いま深いスープ鍋に水を張り、その中に鶏がらを放り込みしばらく煮ると、水面に無数の透明な円が浮かびあがります。これは鶏がらから出る油です。通常の油田は、この水面に浮かび上がってきた油に喩えることができます。その特徴は地表に限りなく近いところにあるので汲み上げやすいという点です。これまでの石油開発は、このような「うわずみ」を探す作業でした。しかし世界中の「うわずみ」は汲み上げ尽くしたので、いずれピークオイル、すなわち石油生産がピークを打ち、減少に転じるということが懸念されたのです。

シェールでピークオイル論が消えた

しかしシェールが開発され始めると、「うわずみ」ではなくスープ鍋の底にある鶏がらそのものにアプローチできるようになったので、採り尽くしの懸念は無くなりました。最近、とんとピークオイルの議論を聞かなくなったのは、そのせいです。

実際、シェールが出てきてから米国の天然ガスならびに原油生産高はどんどん増加しています。先ず天然ガスの生産です。

次は原油生産です。

いずれのケースも米国の伸びが著しい点に注目して下さい。

この増産は需給関係を崩す結果を招き、先ず天然ガス価格が低迷しました。

現在の天然ガス価格は$3.86です。この水準では独立系探索・生産会社にとって天然ガスを生産する旨味はありません。

そこで近年、それらの業者は天然ガスの生産を大胆に絞り込み、その代わり原油の生産に注力しました。その結果、北米リグ・カウント(=稼働油井の数)は下のグラフのようにドラマチックに変わりました。

天然ガスのリグ数は2008年のピークの1,600本から現在は400本を割り込む水準まで下がっているわけです。逆に石油のリグ数は2009年の底値である200本前後から現在の1,600本まで激増していることがわかります。

天然ガスから石油へというシフトは行き過ぎてしまった

さて、問題は、ここへきて「天然ガスから石油へ」というシフトが行き過ぎ、逆に石油がだぶつきはじめたことです。

このため原油価格は低迷しています。

さらに米国のガソリン価格も近年の安値の水準に来ています。

最近の価格急落の一因は、サウジアラビアが原油価格を犠牲にしてまでマーケットシェアを守る動きに出たことにあります。

原油価格が80ドルを割り込むと、北米で操業するシェールオイルの業者の一部は利益を出すことが難しくなります。するとちょうど天然ガス価格の低迷がシェールガスの生産休止を招いたように、今後、休止するシェールオイル油井が増えることが予想されるわけです。実際、サウジアラビアの狙いは米国のシェールオイル業者を減産に追い込むことにあります。

これからはシェールオイルではなくシェールガス株に投資せよ

過去3年のパフォーマンスを見ると、EOGリソーセズ(ティッカーシンボル:EOG)、パイオニア・ナチュラル・リソーセズ(PXD)、コンチネンタル・リソーセズ(CLR)などのシェールオイル主体の企業の株価の上昇が著しかったです。

その反面、シェールガスに傾斜したサウスウェスタン・エナジー(SWN)、チェサピーク・エナジー(CHK)などは冴えませんでした。

既に見たように天然ガスのリグ数はすでに生産調整が完了した水準にあるわけですから価格の底入れは天然ガスの方が早いと思われます。従ってこれからはシェールガスに強い企業の株にシフトすべきだと思います。