【今日のまとめ】

  • アリババのIPOを契機に中国のネット株に注目が集まる
  • テンセントはソーシャルに強いのでJD.com、58.comに出資しeコマースを強化
  • アリババはeコマースに強いのでウェイボーと提携し、テンセントに対抗
  • バイドゥはテンセントと組み、eコマースに参入

アリババのIPOは米国の投資家が中国のネット株に注目する契機となる

今月、いよいよアリババ(ティッカーシンボル:BABA)の新規株式公開(IPO)のロードショウが始まります。関係者によれば、ロードショウのキックオフは9月8日の週であり、早ければ9月18日前後に値決めが行われるだろうと言われています。今回の売出しは2兆円にも上る過去最大級のスケールであり、これを契機として米国の投資家が中国のインターネット・セクターに注目する可能性が高いです。

そこで今日は中国のインターネット・セクターの近況をまとめてみたいと思います。

市場規模

中国は既に世界で最大のインターネット市場を形成しています。現在、中国では6億人のネットユーザーが存在すると言われており、これは米国の2倍です。

一方、普及率を見ると米国は82%、中国は46%となっています。つまり今後の成長余地は中国の方が大きいのです。

御三家

中国のネット株で売り上げ規模が最も大きいのはテンセント(香港0700)です。第2位がアリババで、第3位がバイドゥ(BIDU)です。

2014年6月期の各社の売上高は下の通りです。

また前年同期比の売上高成長率は下の通りです。

テンセント

テンセントはソーシャル・メディアならびにゲームが事業の中核となっています。同社はQQインスタント・メッセージングで8.29億人のユーザーを抱えています。加えてWeChatでは4.28億人のユーザーを持っています。

同社の売上高は半分以上がオンラインゲームです。

テンセントは3月に「中国のアマゾン」と言われるJD.com(JD)と戦略的業務提携を結びました。テンセントはJD.comに13億ドル出資し、20%株主となっています。

これとは別にテンセントは6月に新聞の三行広告に相当する58.com(WUBA)に7.36億ドル出資し、19.9%株主となりました。

上記二つの資本提携は、テンセントの持つソーシャル・ネットワークのちからで、これらの企業の売上高成長を加速させる意図からなされています。言い換えれば、テンセントが比較的弱い、eコマースの分野でのテコ入れ、そしてアリババへの対抗という意味合いがあるわけです。

アリババ

アリババはテンセントとは逆で、eコマース市場で買い手と売り手を結びつけることをルーツとしています。アリババがどのくらい中国のeコマースに関与しているかを知る指標は、GMV(Gross merchant volume)と呼ばれるもので、取扱高と考えれば良いでしょう。

もうひとつの指標はどれだけのバイヤーを持っているか? という尺度です。

アリババのビジネスモデルはアマゾンのように商品の在庫を取り、自ら商取引の相手方となるのではなく、あくまでも売り手と買い手の仲を取り持ち、それらに対する様々なサービス(=一例としてプロモーション)を提供することへの対価をもらうというものです。従って売上高は一見、少ないように見えます。しかしこれはアマゾンのように、商品そのものの売上が含まれていないことが原因です。その代り、アリババの純利益マージンは78.3%(6月期)と驚異的に高いです。

アリババはモバイル戦略を急いでおり、トランザクションに占めるモバイル比率は着実に伸びています。

アリババの場合、テンセントとは真逆で、もともとeコマースに強く、ソーシャルに弱いので、「中国のツイッター」と呼ばれることもあるウェイボー(WB)と戦略提携しています。

バイドゥ

バイドゥは「中国のグーグル」と呼ばれることもある、検索サービスの会社です。バイドゥは市場調査会社、アレクサによると中国で最もアベレージ・デイリー・ビジター数が多いサイトだと言われています。サーチのマーケットシェアは73%です。

同社の広告主の数は75.3万社で、ヘルスケア、教育、ソフトウェア、オンラインゲーム、旅行、機械、建設など、多岐にわたる業種の顧客がバイドゥを経由して検索広告を出しています。

同社はモバイルからのサーチに特に力を入れており、現在デイリー・アクティブ・ユーザー数は1.6億人、売上高の約30%がモバイルからとなっています。

またバイドゥ・ユニオンと呼ばれるサードパーティーのサイトでの広告を展開しています。但しバイドゥ・ユニオンのメンバー数は去年、-14%でした。これは協賛サイトを絞り込むため、意図的になされたことです。

同社はモバイルでのマップ、動画、ソーシャル、ウォレットなどに力を入れています。特にプリインストールがマーケティング費用上昇の原因となっています。しかしモバイルでのロケーション・ベースト・サービスなどでは、アプリがプリインストールされているか、いないかがユーザー獲得の際、決定的な要因となるので、この面での先行投資は不可欠です。

こうしたマーケティング費用が嵩み、バイドゥの営業マージンは2012年の55%から2013年は40%へと下がりました。それでもこの営業マージンはグーグルの30%より大きいです。

【略号の説明】

  • DPS一株当り配当
  • EPS一株当り利益
  • CFPS一株当りキャッシュフロー
  • SPS一株当り売上高

なおバイドゥはテンセント、ならびに大連ワンダ・グループと組み、eコマース分野への参入を発表しています。