今日のまとめ

  • 今週からブラジルでワールドカップが開催される
  • ブラジル経済は中国経済の減速もあってこのところ低成長が続いている
  • ブラジル中銀はインフレ対策に追われている
  • 雇用市場が安定し、実質賃金も年々上昇している
  • このため消費はちょっとしたことで活性化しやすい
  • 投資対象としては内需関連が良い

ワールドカップとブラジル

6月13日から7月14日にかけてブラジルでワールドカップが開催されます。そこで今回はブラジル経済の現況ならびにブラジルの投資機会に関してまとめてみたいと思います。

GDP

ブラジルのGDPは2004年以降、急成長を続けてきました。しかし輸出の19.9%を占める中国経済が鈍化したこともあり、ここ数年の成長率は低迷しています。

コンセンサス予想では2014年のGDP成長率は1.5%程度になると見られています。

消費者物価指数

ブラジル経済はインフレ体質です。近年の消費者物価指数は5~6%で推移しており、これはGDP成長率が大幅に鈍化したことを考慮に入れれば残念な高さです。

政策金利

ブラジル中銀はかなり大胆に政策金利を変更する中央銀行として知られています。景気テコ入れが必要であると判断すればザックリと利下げし、逆にインフレ退治をする必要があると感じればどんどん利上げします。

現在はインフレ対策がブラジル中銀の主な関心事です。

失業率

ブラジルの失業率は歴史的に低い水準にまで下がっています。冴えないブラジル経済の中で、失業率の低さだけは明るい材料です。

こうした雇用市場の安定を背景にブラジルの実質賃金は着実に上がってきました。

このことは景気が加速すれば、それはすぐ消費に跳ね返ってくる可能性が高いことを示唆していると思います。

投資対象

ブラジルに投資するにはETF(上場型投資信託)が便利です。代表的なものとしてiシェアーズMSCIブラジル・キャップトETF(ティッカーシンボル:EWZ)があります。こちらのETFはイタウ・ウニバンコ(ITUB)、アンベブ(ABEV)、ブラジル石油公社(PBR)、バンコ・ブラデスコ(BBD)、ヴァーレ(VALE)などの有名な大企業が組み入れられています。

ブラジルの中小型株へ投資するETFとしてはマーケット・ベクトル・ブラジル小型株ETF(BRF)があります。こちらは内需中心であり、ワールドカップに伴う消費ブームを狙うのであれば、むしろこちらのETFの方がテーマに沿っているかも知れません。

個別銘柄でいかにもワールドカップらしい銘柄となるとアンベブ(ABEV)を挙げないわけにはゆきません。同社は南米最大のビール会社です。同社はまたペプシコーラのブラジルにおけるボトラーでもあります。

ブラジルは年間122億リットルのビールを消費しており、その多くはバーやレストランで消費されています。このためブラジル国内に100万か所以上もある小規模店舗にビールを効率よく届ける販売網が競争上重要になります。

アンベブの2013年のマーケットシェアは67.9%でした。

同社の主力ブランドはスコール、ブラマ、アンタークティカなどです。

アンベブの議決権の61.9%はABIという持ち株会社によって支配されており、そのABIはジョルジ・パウロ・レマン(Jorge Paulo Leman)というスイス系ブラジル人の富豪によって所有されています。

レマンは3Gキャピタルというプライベート・エクイティー・ファンドを運営しており、最近ではウォーレン・バフェットと共同でケチャップ・メーカーのハインツを買収したことで有名です。

レマンはレバレッジを用いず企業を買収し、持続可能な経営改善を施すことで企業価値を高める経営スタイルです。アンベブもレマンの経営哲学に基づき、きわめてしっかりと経営されています。

去年、ブラジルは天候不順に見舞われ、アンベブの業績も悪化しました。ルウセフ政権の拙い経済運営も同社にとって逆風となりました。

しかしビールは中産階級の所得向上が最も需要に跳ね返りやすい品目であり、ワールドカップのもたらす経済効果の恩恵に浴することが予想されます。

【略号の説明】(為替レートは1ブラジルレアル=0.44米ドルを使用)

DPS=1ADR当たり配当
EPS=1ADR当たり利益
CFPS=1ADR当たり営業キャッシュフロー
SPS=1ADR当たり売上高