今日のまとめ
- 足下の半導体需要はまずまず
- インテルの営業キャッシュフロー・マージンはピカピカである
- マキシム・インテグレーテッド・プロダクツはウェアラブルの恩恵をこうむる
- スカイワークス・ソリューションズはスマホへの依存度が高い
- テキサス・インスツルメンツはアナログ半導体への傾斜を強めている
- ザイリンクスはIT業界の新製品開発活動の指標になる
足下の半導体需要はまずまず
ワールド・セミコンダクター・トレード・スタティスティックスによると2013年の世界の半導体の売上高は前年比+4.8%の3,056億ドルでした。またブック・ツー・ビル・レシオは1.02で、注文が出荷を上回る状態が維持されています。
地域別では北米が+17.3%、欧州が+11.3%、アジア太平洋地域が+8.3%、日本が-4.7%となっています。
製品別ではDRAM、NANDなどのメモリー・チップも好調ですがマイクロプロセッサーの需要もしっかりしています。
こうした好環境を背景に、半導体株は2011年から2013年まで続いた低迷期からようやく抜け出し、上昇トレンドに入っているものが多いです。
インテル
インテル(ティッカーシンボル:INTC)はマイクロプロセッサーの大手メーカーです。同社の売上高の6割はパーソナル・コンピュータ向けであり、この市場は殆ど成長していません。インテルはスマートフォンなどの携帯デバイスへの進出を試みていますが、これはなかなか上手く行っていません。その一因は現在スマートフォンに採用されているプロセッサーの大半は基本設計の時点から消費電力の極小化に気を配り、必要最小限の機能性しか想定していないのに対し、インテルはデスクトップ・パソコンで育ったルーツがあるので、どうしても汎用性という発想から抜け出せないことにあります。
インテルは絶えず線幅の微細化に取り組んでおり、その度ごとに生産工程上の難問を克服してきた実績があります。一般に新しい生産ラインの歩留りは低く、それを次第に改善することでマージンを改善させてゆくわけです。歩留りは同社にとって極秘情報であり外部の人間が知ることはできません。しかし四半期決算で明らかになるグロスマージンから、工場での歩留りがどれほど良かったかをある程度類推することはできます。また会社側が提示するグロスマージンのガイダンスは生産工程チームの先端技術に対する習熟度を、かなり率直に反映します。現在の同社のマージン・ガイダンスは60%で、これは2013年の実績に対し20ベーシスポイントの改善を示唆しています。
同社の2013年の営業キャッシュフロー・マージン(=CFPS÷SPS)は39.5%で、これは大変立派な数字です。
【略号の読み方】
DPS一株当たり配当
EPS一株当たり利益
CFPS一株当たり営業キャッシュフロー
SPS一株当たり売上高
同社のバランスシートには134億ドルの負債が載っていますが、これは自己資本の18%に相当します。バランスシートは強固です。
マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ
マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ(ティッカーシンボル:MXIM)はアナログ半導体のメーカーです。温度、音、モノがぶつかる衝撃など、自然界の発する信号は、アナログです。それを「01101010……」というデジタル信号に置き換えてやる半導体が、アナログ半導体です。従ってこのタイプの半導体は自動車やスマホのタッチスクリーンなど、様々なコンシュマー・プロダクツ、ならびに医療分野、工業分野で使用されています。
昔は出来合いの標準アナログ半導体を、家電、自動車、通信機器、医療機器メーカーのエンジニアが、カタログをめくって自分の設計している製品に合うスペックのものを注文するのが普通でした。こうしたニーズにこたえるため、マキシムは何十種類もの標準製品を常に提供してきました。
しかし最近はスマホも軽量化し、一回のチャージで長く使用できるよう、消費電力の少ない半導体が要求されるようになってきています。その要求に応えるためにはいろいろな機能を司る雑多な半導体を、ひとつの統合されたシステム・オン・ザ・チップ(SoC)として提供できなくてはいけません。
マキシムの場合、バイオセンサー、動作センサー(MEMS)、ゼスチャアなど、特殊なチップのノウハウを豊富に揃えています。従ってフィットネスやヘルスケアなどのウェアラブル・デバイスが今後沢山出回るようになると、同社のビジネス・チャンスが広がると考えられます。
2013年の同社の営業キャッシュフロー・マージンは33.5%と半導体セクターでは高い方です。
スカイワークス・ソリューションズ
スカイワークス・ソリューションズ(ティッカーシンボル:SWKS)はスマホ向けアナログ半導体の会社です。とりわけパワーアンプ、RFサブシステムなどに特化しています。
同社は他の半導体メーカーよりスマホへの依存度が高いため、スマホ市場の成長で追い風を享受しています。同社の過去5年間の営業キャッシュフロー成長率は年率+28%で、これは半導体業界では最高の部類に入ります。少なくとも向こう数年間はスマホの普及が進むと思われるため、同社の売上高は年率+11%前後で今後も成長してゆくと見られます。
スカイワークス・ソリューションズは無借金経営で、バランスシートには約6.5億ドルのキャッシュが載っています。
テキサス・インスツルメンツ
テキサス・インスツルメンツ(ティッカーシンボル:TXN)はデジタル・シグナル・プロセッサー、アナログ半導体など多岐にわたる商品を作っていましたが、最近はデザインの寿命が長く、高付加価値の分野に特化してゆく企業戦略を打ち出しています。この尺度に叶う商品分野はアナログ半導体とエンベッデッド・プロセッサーで、とりわけ売上高の半分以上を占めるアナログ半導体に力を入れています。またレガシーのワイヤレス半導体のビジネスはフェイズアウト中であり、同社の売上高成長率が足踏みしているようにみえる一因となっています。
同社はアナログ半導体の商品の幅広さでは、いちばんマキシム・インテグレーテッド・プロダクツに近似しています。
テキサス・インスツルメンツのバランスシートは強固で、財務運営は保守的です。
ザイリンクス
ザイリンクス(ティッカーシンボル:XLNX)はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)と呼ばれる、ソフトウェアにより回路の機能性を自在に規定することができる半導体を作っています。
FPGAは最先端の製品で、未だ大量生産に踏み切ることが出来ないハイテク商品に採用されることが多く、設計から製品化までの時間の短縮が、何よりも重要である場合に重宝されます。その関係で、FPGAの需要はハイテク業界全体の新製品開発競争の忙しさに左右されるとも言えます。
FPGAは回路のデザインが同じであるため、ファウンドリーが最先端のプロセス技術を導入するとき、その実験台として真っ先に試作されることが多く、常に線幅の面で最先端を走っています。その反面、作り置きや買いだめが出来る関係で、チャンネル在庫と呼ばれる仮需が業績やマージンの圧迫要因になることもあります。
顧客は通信機メーカー、家電メーカー、自動車メーカー、医療機器関連、防衛関連など多岐にわたり、それらの企業内のデザイン部門にどれだけザイリンクスのソフトウェア・ツールを使ってもらうかがマーケットシェアの決め手になります。
同社のバランスシートは強固です。
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