TD-LTE規格が始動、マルチモード端末が成功のカギに

現地コード 銘柄名 株価 情報種類
00941 中国移動(チャイナ・モバイル)  76.55 HKD
(11/15現在)
 株価
 企業情報
 チャート

BOCIのアナリストはチャイナ・モバイルに招かれ、11月15日に香港で開催された「グローバル TD-LTE イニシアチブ・サミット」に出席。同イベントで基調講演を行ったチャイナ・モバイル、ソフトバンク、クリアワイヤの経営陣に次世代通信規格「TD-LTE」に関する話を聞き、レポートをまとめた。要旨は以下の通り。

  • チャイナ・モバイルが開発した次世代モバイル通信規格「TD-LTE」は、ソフトバンクが11月1日より日本で商用サービスを開始。大手キャリアによる初の商用化を果たした。同社は中興通訊(00763)および華為技術の基地局と、エリクソンのネットワーク設備を導入。12年末までに日本の人口の90%に相当する地域をカバーする計画。
  • ソフトバンクによると、ワイヤレスデータ通信量は向こう10年間倍増を続け、5年後の2016年には現在の32倍、10年後の21年には1,000倍に膨らむという。TD-LTEは、現行の4Gで主流のFDD-LTE方式と違い、送信と受信で同じ周波数帯域を使って伝送するため(TDD方式)、より低コストで効率的なデータ伝送が可能。ARPU(加入者1人当たりの売上高)が伸び悩む中、事業者は通信網キャパシティの拡大を迫られているため、今後の需要拡大が見込まれる。
  • チャイナ・モバイルは12年半ばに北京で実施している第2期のTD-LTE運用テストを完了し、13年に国内商用サービスを開始する予定。海外ではソフトバンクのほか、米モバイルWiMax事業者のクリアワイアが現行のWiMaxシステム上にTD-LTEを導入する計画。マレーシア、シンガポール、欧州、南米のWiMax事業者もTD-LTEの導入を検討している。TD-LTEと同じTDD方式をベースとしたWiMaxの事業者は現行のネットワークインフラを利用したままTD-LTEにアップグレードできるため、多大な投資をせずにサービスの大幅な改善を図ることができる。
  • イベントに参加した関係者は、TDDとFDDの両方式に対応するマルチモード端末がTD-LTE規格の成功のカギを握ると口を揃えた。クアルコムを含む7-8社がマルチモード端末のチップセット開発に取り組んでいるとみられ、すでに複数のマルチモード端末が試用段階にあるという。ソフトバンクは、12年中にTD-LTEおよびWCDMA/GSM対応のマルチモード端末を投入する計画。

BOCIは、TD-LTEが通信密度の高い都市部で高速データ通信を提供する規格として圧倒的優位にあると指摘。また、現行のTD-SCDMA基地局からTD-LTEへのアップグレードはソフト上の変更にとどまるため、チャイナ・モバイルの設備投資額は初期のネットワーク構築の1割程度とみている。BOCIは同社の今後の株価について強気見通しを継続。ただ、マルチモード端末の登場が中国の携帯電話市場に影響を及ぼすとみて、同端末の開発状況が明らかになった段階でレーティングを見直す方針を示している。