7月15日 「中立」
国内電力消費が上期に12%増、長期的には燃料コスト増大が懸念材料

鉱工業生産の力強い伸びを背景に、中国の上期の電力消費量は前年同期比12.2%増の2252兆ワット時(TWh)に達した。4月にややスローダウンした後、5月、6月には伸びが加速し、約1年ぶりとなる高水準を記録した。発電量は経済成長ペースを示す指標の一つ。直近のデータにはエネルギー集約型産業の旺盛な生産活動や、電力供給制限を経た後の在庫再構築の動きが示されており、洪水シーズンを迎え、水力発電量の伸びも鮮明となっている。BOCIはこうした点を踏まえ、通年の発電量伸び率に関する予測値を前年比11%から12%に上方修正した。ただ、その一方で、電力会社にとっては燃料コストの増大が長期的な懸念材料となる見通しを示している。また、華潤電力控股(00836)、発電設備大手の東方電気(01072)に対して強気見通しを示しながらも、セクター全体に対しては中立的な見方を継続している。

キーポイント

  • 中国の鉱工業生産は6月に前年同月比15.1%増。うち重工業は同15.6%の伸びを達成した。重工業の電力需要は全体の62%を占め、上期の電力需要の増加率(12%)のうち5%分に寄与した。国内では引き続き、重工業依存型の需要構造が続いている。
  • 6月の発電量は前年同月比16%増と高い伸びを記録した。水力発電量の伸びが環境負荷を緩和しているものの、電力供給制限リスクが再び浮上している。一方、業界全体の設備稼働率は上期に前年同期並みで、火力発電部門の月次稼働率も高水準を維持した。 石炭積み出し港・秦皇島における石炭価格は7月11日までの週に前週比横ばい推移した。前年同月比では7.6-7.7%の上昇率。秦皇島の石炭在庫はやや減少したが、発電所レベルでは通常を上回る在庫水準を維持している。 電力業界における上期の投資は前年同期比11.7%増。水力発電、原発分野で大きく伸びる一方、風力発電部門では減速した。

セクター見通し

  • BOCIは国内業界の設備稼働率がほぼ横ばい推移する見通しを示しながらも、発電能力がひっ迫している沿海部、中部で稼働率が上向く可能性を指摘している。この先の電力価格値上げについては、エンドユーザーレベルで実施される可能性が相対的に高いとみている。
  • また、4-6月期の電気料金値上げや設備稼働率の好調、さらに発電用炭価格の一段の上昇余地が限られる見通しなどから、BOCIは短期的な電力銘柄の値上がりの可能性を指摘したが、セクター全体の長期見通しについては引き続き慎重。その理由として、燃料コストの変動要因や政府当局による電力価格規制、さらにセクター全般の財務の弱さなどを指摘している。