ここまでの相場を振り返ると、5月21日の取引時間中に13,964円をつけた日経平均は翌日から急反発を見せました。6月4日の11営業日で約1,100円を超える上昇となっています。今年の2月から3月(2月5日~3月7日)にかけて、同じような株価反発の場面がありましたが、この時は22営業日で約1,200円の上昇でしたから、今回のリバウンドがハイペースかが分かります。

もっとも、達成感からか、15,000円からの上値は重たくなっていますが、短期のトレンドラインをいくつか引いてみた場合、(1)のラインをとりあえず維持している格好です(下の図1)。

(図1)日経平均(日足)チャートと短期のトレンドライン

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

今後のシナリオ展開を予想する上で、今回はボリンジャーバンドに注目してみたいと思います。ボリンジャーバンドは下の図2のように、真ん中の移動平均線をはさんで上下に2本の線で描かれるのが基本形です。移動平均線からひとつ上の線が「+1σ(シグマと読みます)」、さらに上の線が「+2σ」と呼ばれています。反対に移動平均線から下の2の線は、それぞれ「-1σ」、「-2σ」と呼びます。

(図2)日経平均(日足)のボリンジャーバンド

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

ボリンジャーバンドは「標準偏差」という考え方をベースに作成されます。「偏差」というと、受験生時代の偏差値を思い出しますが、実は偏差値をボリンジャーバンドに当てはめてみると、意外と理解できたりします。

受験生は入試本番前に模擬試験を受けますが、学力の中心となる偏差値50を基準に、偏差値40~60の範囲で受験生全体の約68.3%、偏差値30~70の範囲まで広げると約95.5%が収まります。ボリンジャーバンドも同じような考え方で、偏差値40~60にあたる-1σ~+1σの範囲で株価の約68.3%、偏差値30~70にあたる-2σ~+2σの範囲で約95.5%が確率的に収まるというわけです。

例えば、株価が+2σに到達するということは、「本来95.5%の確率で収まる範囲を超えそうだから、株価は上がりすぎなんじゃないか」と考えることができます。実際に、図3の3月あたまのところを見ると、株価が+2σをつけたところで株価が下落に転じており、逆張りだったら利益がねらえました。

その一方で、「収まるべき範囲を超えたということは、これまでとは違う新たな相場局面に入ったのかも」と考えることができます。同じく図3の直近の動きを見ると+2σに沿って上昇しており、こちらは順張りの投資スタンスの方が利益をねらえそうです。

つまり、+2σにタッチしたときに、逆張り・順張りの「どっちで判断すればいいの?」という感じですが、その判断材料のひとつとしてバンドの幅(広がり)と傾きを見ていきます。

ボリンジャーバンドの幅は株価の値動きの大きさ(ボラティリティ)を表しています。値動きが大きいとバンドの幅が広がり、逆に値動きが小さくなればバンドの幅が狭くなります。バンドの幅が狭くなることを「スクイーズ」と言いますが、このスクイーズの状態から発生するトレンドは強いといわれています。確かに、順張りとなっている足元のバンドの幅を見ると、株価の上昇前は狭くなっており、逆張りとなった前回はバンドの幅はあまり狭くなっていません。ちなみに、こうしたバンド幅のスクイーズから拡大をねらった順張りトレード手法を「ボラティリティ・ブレークアウト」と言います。

(図3)ボリンジャーバンドの逆張りと順張り

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

なお、売買を手仕舞うポイントとして、ローソク足が接していない反対側のバンドの向きが変わったときが注意と言われています。次の図4は前回「ボラティリティ・ブレークアウト」が発生したときの状況です。実はバンドの幅は平行に拡大・収縮しているわけではないのです。

(図4)前回の「ボラティリティ・ブレークアウト」の状況

(出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成)

最後に、ここ直近の株価上昇を短期的な戻りに過ぎないという見方があります。であるならば、今年に入ってからの戻り高値である、4月3日の15,164円、3月7日の15,312円が上値の目処として意識されることになります。これらを抜けるかどうかもトレンドの強さを見極める目安となりそうです。