先週は、イギリス離脱後、急落の買い戻しが一巡し、円高基調で再下落へ

先週は、アメリカ株式と為替の動向をみながらもみあいの展開を想定しました。その場合、アメリカの経済の好調さが確認されれば、早期利上げの思惑が生まれてドル買い・円売りとなり、経済の内容が変わらなければ利上げ後退となってドル売り・円買いとなって1ドル=100円を試す可能性があり、日経平均は下落となってくるとしました。

結果的には、アメリカの経済指標は好調となったものの、ヨーロッパでは金融不安の再燃の懸念が生じてアメリカが早期利上げする状況でなくなり、6月雇用統計は非農業部門雇用者数が急回復となったものの失業率や平均時給は予想を下回り早期利上げにつながらず、円高基調となりました。アメリカ株式は、経済指標は好調で、かつ早期利上げは大きく後退した結果となったことで過去最高値を伺う展開となりました。しかし日経平均は円が再び100円を試す動きとなってきたことで4日連続安でした。

より具体的には、週始めはイギリスのEU離脱後の世界株式の急落からの落ち着きで世界の株価が自律反発となり、日経平均も△93円の15,775円スタートとなりました。しかし欧州市場の買い戻しの流れも前週末で一巡し、次にはイギリスのEU離脱によって、他のEU各国への影響が深刻化するのではないかとの見方が再燃しました。イタリア銀行など欧州金融機関の不良債権問題や、スペイン、ポルトガルの過剰赤字問題などからリスク回避の動きとなって、為替市場ではポンド売り・円買いが進行、ドル・円では日米金利差の縮小からのドル売り・円買いとなって円高基調の流れとなり日本株式も売られる展開となりました。5日(火)は▼106円の15,669円、6日(水)は▼290円の15,378円、7日(木)は▼102円の15,276円、8日(金)は▼169円の15,106円と4日連続3ケタの下落となりました。

8日(金)の日本市場が引けたあとのアメリカでは、注目の6月雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は、予想の+17.5万人を大きく上回る+28.7万人の急回復となりました。これを受けてNYダウは今年の4月20日の18,167ドルにあと1ドルという18,166ドルまで上昇し、終値は△250ドルの18,146ドルとなりました。 これに連動しシカゴ日経先物は大証比△220円の15,340円で引けました。ただし、為替はヨーロッパ情勢や6月雇用統計の中の失業率や平均時給が予想を下回ったことで、早期利上げ観測につながり円高基調のままでした。

 

今週は、自律反発のあと為替の動きと経済対策の規模に注目

今週の週前半は、先週末のアメリカ株式の上昇や参議院選挙後の政府の経済対策期待から自律反発となりそうですが、上値は限定的で戻りを試したあとは為替が円安トレンドに転換しなければ調整トレンドは続くことになると思われます。その場合、15,000円水準を守れるのか、それとも15,000円水準(6月24日の終値14,952円、ザラ場14,864円)を下に切って下値模索となるのか注目するところです。これは為替が1ドル=100円を切ってくる動きに左右されることになると考えられます。今の日経平均の動きは、ほとんど為替に連動しており為替の円高の程度によって日経平均の下げ幅も決まるという分かりやすい動きとなっています。その円の動きはイギリスポンドの下落がどこで止まるか、ヨーロッパの金融不安の再燃がどこで落ち着くかにかかっています。ここからのリスクの少ない株式の買い方は15,000円割れを前提に2~3回で買い下がるというのがよいと思われます。イギリスのEU離脱問題が株式市場にはポンドの下落という形で現れており、円はリスク回避の円買いということとアメリカの早期利上げの大きな後退ということで円高に向かっています。市場では100円を切ってくると次のターゲットは95円(柴田罫線チャートでは95円水準)といわれています。その時、日経平均はいくらになるのかということになります。もちろん日本政府の経済政策が出て、目先16,000円台を回復してくると、とりあえず戻りは続くかもしれませんが、為替が105円以下のままですと、輸出企業の下方修正がでてきますのでいずれ下値を試すことになる可能性が高いと思われます。但し、安倍首相による景気対策の中身が、10兆円をこすような大きな規模であれば戻りを試す場合も考えられます。

7月11日(月)は、欧米株高と参議院選で与党の勝利で景気対策期待も加わり△268円の15,375円で寄り付きました。この15,300円台でアメリカ株式の上昇を織り込むと思われましたが、安倍首相が新たな経済政策を盛り込んだ補正予算の編成を指示し、内閣改造も断行するということから一段高となり、15,816円まで上昇して△601円の15,708円で引けました。終値で15,900円台にのせると柴田罫線では短期の買転換となって目先2月12日と6月24日の14,952円のダブル底を確認した形となり、16,000円台回復の期待が持てます。但し、国内要因だけではさらなる上昇は難しく、為替が105円をこす円安とならなければ、いずれ輸出関連企業の下方修正が相次いでくることになると思われます。再び世界的な金利低下による金融相場になる可能性もありNYダウが史上最高値を更新すればさらなる戻りが期待できることになると思われます。

 

 

(指標)日経平均

アベノミクス相場は2012年11月13日の8,619円を安値にスタートし、2013年12月30日の16,320円まで上昇して、いったん止まりました。ここからの調整で2014年2月5日の13,995円、4月11日の13,885円と2点底をつけたあと、日銀の異次元緩和を受けて急角度の上昇トレンド(A)へ移行し、この中で2015年6月24日の20,952円、8月7日の20,945円とほぼダブル天井の形となって円の急騰につれ日経平均も急落し、9月29日の16,901円まで下げました。これで2012年11月からの円安・株高によるアベノミクス相場の第1ラウンドは終わりということになります。

その後、12月1日の20,012円を戻り高値に短期の下降トレンド(B)となって今年の1月21日の16,017円まで下げて2月1日の17,905円まで戻し、その後もみあって4月25日に17,613円まで戻したあと再下落となって6月24日に14,864円の安値をつけました。

今年になっての動きは、15,000~18,000円のボックス相場となっており、この中で上値では2月1日の17,905円、4月25日の17,613円と2点天井、下値では、2月12日の14,865円、6月24日の14,864円(終値ではともに14,952円)とダブル底となっています。当面15,000円水準の攻防となりそうです。

14,865円を終値で切ると、その下は14,400~14,500円、その次は13,400~14,000円、その又下は13,700円水準となります。為替が1ドル=95円を切ってくるとこのような下げが想定されます。

今週は、為替が1ドル=100円を守り、日経平均は15,000円水準を守れるかどうかとなります。15,000~16,000円のレンジの中で16,000円を突破できなければ戻りを試したあと欧州の金融不安から円高が継続すれば15,000円を試す動きが想定されます。11日(月)は先週末の欧米株式の上昇に加え与党が参議院選に勝利して経済政策期待が高まり△601円の15,708円と思った以上の大幅反発となりました。16,000円を突破できなければ下値をさぐる展開も考えられます。

日経平均

 

 

(指標)NYダウ

先週の予測では、早期利上げが後退し長期金利が低下していることから、4月20日の18,167ドルを試す可能性があるものの、18,000ドル台からは上値は重いとしました。

結果的には、7月8日(金)は4月20日の18,167ドルより1ドル安い18,166ドルまで上がって18,146ドルで引けました。

連休明けの7月5日(火)は買い戻しが一巡して5日ぶりの反落で17,785ドルまで下落しました。その後は好調な経済指標を受け、反発に転じ週末の7月8日(金)は6月雇用統計の大幅改善を受け△250ドルの18,146ドルで引けました。

今週は、アメリカでのイベントも終わり経済指標の発表も少ないことからイギリスのEU離脱後の急落の反発も一巡したところで、欧州の主要銀行の不良債権問題が生じ再び波乱色を強めていますので、一服となるところです。そのまま上昇して昨年の5月19日の18,351ドルを上回れば別ですが、それだけの材料が今のところ見当たらず、目先的には7月8日(金)の18,166ドルは4月20日の18,167ドルに対するダブル天井となっていますので、いったん調整する可能性があります。

NYダウ

 

 

(指標)ドル/円

先週の予測では、イギリスのEU離脱をきっかけに世界経済が不透明感をもち、アメリカの早期利上げも後退したことで、ドル売り・円買いの流れとなってきているとし、FOMCの議事録で利上げに消極的な意見が多ければ、再び100円を試す可能性もあるとしました。

結局、EU離脱後の世界の株価の急落がいったん反発となって、それが一巡するなかで欧州の金融機関に対する不安や政治リスクが意識されリスク回避の円買いとなり、さらにアメリカの経済指標は好調ながらも利上げ見送りはコンセンサスとなって長期金利が低下し、ドルが売られて再びフシ目の100円を試す動きとなりました。週末の7月8日(金)は100円まで下げて100.41円で引けました。

今週は、ドル・円の下値余地を探る展開となる可能性があります。週末の6月雇用統計は非農業部門雇用者数が急回復となりましたが、失業率や平均時給は予想を下回ったことで、早期利上げにはつながりませんでした。それどころか10年債利回りは1.358%と史上最低水準に低下しており、これは当面の利上げはないとの見方となっているためです。 ドルがどこまで下げるかはポンドの下落とヨーロッパの金融危機への懸念の広がりによります。チャートからは96円水準が目先のフシとなります。

ドル/円