8日(金)にオバマ大統領のイラク空爆の承認で円高進行し、15,000円割れ

先週の4日(月)の時点では、好調な企業決算と地政学的リスクなどの海外の悪材料との綱引き相場になるとし、ただ、NYダウが7月31日(木)に柴田罫線では上向き先細三角形の下放れる売転換となっており、アメリカ株式の動きに注意が必要だとしました。アメリカ株式の下落が深くなれば、ドルが売られて円高になることも考えられるとし、又SQに絡んだ動きが出てくると、大きな上下動の可能性があるものの、15,200~15,600円のレンジを想定しました。

しかし、週前半は買い材料が乏しく利益確定売りが続き、6日(水)には前日にポーランドの外相が「ロシア軍がウクライナの国境沿いに軍隊を集結しており、侵攻する構えでいる」と発言したことで地政学的リスクが高まり、NYダウが大幅下落となったことで▼160円の15,159円と5日続落となって、15,200円を割り込みました。

そこで、オフィス出島より6日(水)に配信した「一言メッセージ」では、NYダウは26週移動平均線を切っており、その場合は過去の経験則から更に下落の可能性が出てきたとし、一方で円安が102円台で落ち着いていることで、15,000円を下値として15,000~15,500円のボックス相場に戻る可能性があるとしました。NYダウの下げが続けば、15,000円を一時的に切って14,800円水準もアタマに入れておくところとも想定しました。

結局、7日(木)は15,061円まで下げていましたが、GPIF運用改革報道(日本株の運用配分を20%超えに増やす)から6日ぶりの反発となって、△72円の15,232円と反発しました。ところが、8日(金)はウクライナ情勢などの地政学的リスクで前場再び15,000円水準まで下げていたところに、オバマ大統領が記者会見でイラクへの空爆を承認したとの報道が伝わり、為替がリスク回避の円買いとなって101円台半ばまで円高進行となったことで、主力の輸出関連株中心に投げが投げを呼ぶ急落となり、14,753円の安値をつけて▼454円の14,778円と14,800円を切って引けました。この日は8月のオプションの算出日(15,036円)だったことや週末要因もあり、売り仕掛け的な動きもあって、予想を超える大幅下落となりました。

8日(金)のアメリカ市場では、ロシア軍が軍事演習を終え予定通り基地へ戻っている報道や、ロシアの書記がウクライナを巡る緊張が早期に解消されるよう努力すると述べたことでウクライナ情勢への懸念が和らぎ、NYダウは前日の反動高となって△185ドルの16,553ドルと反発し、為替も102円台まで戻して引けました。そのためシカゴ日経先物は△250円の15,010円と15,000円台を回復しています。

 

15,000円台を維持できるかどうかに注目

先週末の8日(金)は、オバマ大統領のイラクへの限定空爆承認をきっかけに為替が1ドル=101円台半ばまでの円高となったことで、▼454円の14,778円の急落となりました。週足の13週移動平均線(8日15,029円)、26週移動平均線(8日14,790円)を切ってしまいました。日足では、75日移動平均線(8日14,944円)も200日移動平均線(8日14,956円)も切りました。但し、この急落はSQ清算日や週末要因が重なり、更に裁定解消売りが出たことが挙げられています。この急落によって、5月21日の13,964円の安値から7月31日の15,759円の高値の上昇幅(1,795円)の1/2押し(14,879円)以下まで下げていますので、今日の急反発での15,000円台が守れなければ、5月21日の13,964円を起点とする上昇はいったん終わる可能性があります。

11日(月)は、シカゴ先物が15,010円となっていたことで△244円の15,022円で寄り付きました。その後は15,000円を巡る攻防となっていましたが、前引けにかけて先物主導で上げ幅を拡大し△329円の15,107円で引け、後場になっても公的年金の運用改革に伴う期待からじりじりと上値を切り上げ、△352円の15,130円で引けました。出来高・売買代金は低水準のままとなっています。

今週は、15,000円を回復したものの不安定な相場となりそうです。ウクライナ情勢を巡るロシアとの対立、イスラエルによるカザ地区侵攻、イラク過激派への空爆など地政学的リスクは高まったままですので、下値不安は根強く、15,000円台を回復しても維持できるかどうかはNYダウ次第になってきました。NYダウの先週末の反発も、まだ自律反発の域を出ていないので注意が必要です。目先の下値は先週末のSQ清算値15,036円となりますが、更に下げた場合は、投資家が下値の目安として意識する200日移動平均線(11日14,960円)を守れるかどうかとなります。但し、チャートで下値確認するためには、いったん反発した後、8月8日の14,778円の安値に対する2番底の動きを待つのが基本ですので、リスクをとらない場合は暫く様子見となります。

 

 

(指標)日経平均

先週の予測では、地政学的リスクが根強いなかアメリカ株式が軟調な相場となっており、更に下落が続けば日本株にも影響することになるとしました。但し、好調な決算が相場を支え、15,200~15,600円の中での値動きを想定しました。

しかし、ウクライナ情勢が緊迫感を強めNYダウも下値を模索する動きとなったことで、6日(水)には5日続落の▼160円の15,159円となって15,200円を割り込みました。7日(木)は、15,061円まで下げたところで年金の買いと業績期待で△72円の15,232円と反発しました。ところが、週末の8日(金)は、前日に地政学的リスクからNYダウが3カ月ぶりの安値となり、日経平均もオバマ大統領のイラクへの空爆承認報道をきっかけに全面安となって▼454円の14,778円と15,000円をあっさり切って引けました。日本市場の引け後のアメリカ市場では、ロシアがウクライナの国境沿いから軍事演習の終了として撤退したことで地政学的リスクが和らぎ、NYダウは△185ドルの16,553ドル、為替は102円台の円安水準に戻りました。これを受けてシカゴ日経先物は15,010円と15,000円台を回復しています。

週明け11日(月)は、先週末にNYダウが反発し為替が102円台に戻っていることで、自律反発から15,000円台に戻した後は15,000円の攻防となっていましたが、先物主導でじりじりと上げ幅を拡大し△352円の15,130円の急反発となりました。出来高・売買代金は低水準ですので、本格的に戻りには下値固めが必要といえます。地政学的リスクはまだ不透明なため、NYダウや為替の動きに左右される展開となりそうです。目下15,000円を守れるかどうかに注目するところです。

日経平均

 

(指標)NYダウ

7月31日(木)に16,563ドルとなって柴田罫線の上向き先細三角形を下放れして売転換となり、8月1日(金)には16,437ドルまで下げて下げ幅を縮小しているものの、終値でここを切ってくると下値を探る展開になると想定しました。

週初め4日(月)は、ポルドガル中銀が経営破綻懸念の銀行を救済したことで反発するものの、5日(火)はロシアのウクライナ侵攻懸念から▼139ドルの16,429ドルと大幅反落となりました。6日(水)に小反発した後、7日(木)は地政学的リスクが高まり16,333ドルまで下がって、▼75ドルの16,368ドルと4月25日以来3カ月ぶりの安値となりました。週末8日(金)は、ロシア軍が軍事演習を終えてウクライナ国境から去ったことで地政学的リスクが和らぎ、△185ドルの16,553ドルと大幅反発となりました。

先週末の大幅反発は、自律反発の動きの可能性が強く、ここからは地政学的リスクから上値は重い展開が想定されます。例年8月中旬から8月末までは夏季休暇に入る投資家が多いため、現状のような地政学的リスクがある場合は、休暇をとる前にいったん手仕舞いにするため上値は重くなると考えられます。目先は16,700ドル台が上値抵抗ゾーンとなります。

NYダウ

 

(指標)ドル/円

先週の予測では、経済指標の発表多く、その結果による金利動向を睨んだドル・円の動きとなり、早期利上げ観測を織り込む形でドル買い・円売り基調を想定しました。

結果的には、地政学的リスクが高まり、逆に101~103円のボックスの中でドルの下限を試す動きとなりました。週前半のロシアのウクライナ侵攻報道、欧米によるロシアへの追加制裁とロシアの報復、イスラエルのカザ地区侵攻、アメリカのイラク過激派への空爆などで一時101.51円までリスク回避の円買いが進みました。週末8日(金)は、ロシア軍が軍事演習を終えてウクライナ国境から去ったことで地政学的リスクが和らぎ、102.08円で引けました。

今週は、先週に続いて地政学的リスクが意識され、ウクライナ、イラク、パレスチナなどの紛争が深まればリスク回避の円買いが優勢となりそうです。ただし、下値はGPIFによる外貨建資産への投資増額期待があり、円高は限定的と思われます。

ドル/円

出島昇の柴田罫線をベースとした相場分析

急反発で15,000円台回復だが、本格反騰には下値固めが必要