閣議決定された成長戦略はサプライズなく目先材料出尽くしへ

先週の予測としては、海外から出遅れ感のある日本株式市場に資金が流入してきており、一本調子の上昇はないものの、3月7日の今年の戻り高値15,312円を突破したことで、上値を試すことが想定されるとしました。但し、もう一段高となるには、閣議決定される成長戦略が事前の内容よりはより具体的なものが期待されているため、期待されている内容になれば一段高、そうでなければ目先材料出尽くしとなって利益確定を誘うことになるとしました。又、テクニカル的な過熱感からみても、騰落レシオが買われ過ぎといわれる130%を大きく上回っているため、利益確定が出やすい状況だと予想しました。

結果的に、週初めはアメリカ株式の上昇や成長戦略への期待から戻り高値を更新する動きとなりましたが、25日(水)は、前日の引け後に成長戦略が閣議決定されたものの、サプライズなく目先は材料出尽くし、騰落レシオは164.1%と記録的な過熱感、更にアメリカ株式の下落を受けて、利益確定売りで▼109円の15,266円となりました。週末の27日(金)は、アメリカの1-3月期GDPが予想を大幅に下回ったことでドルが売られ、地政学的リスクから円が買われて101円台前半の円高となったことで、日経平均は先物主導で15,027円まで売られ、▼213円の15,095円となりました。

23日(月)の時点では、日経平均は15,200~15,500円の中の動きを想定していましたが、24日(火)の成長戦略の閣議決定の内容が事前に伝わっていたことと大差なかったことで材料視されず、下落はきっかけ待ちのため、25日(水)のオフィス出島の有料サイトにおいて発した一言メッセージでは調整待ちとし、15,200円を切ると25日移動平均線(25日時点14,970円)近辺の15,000円水準が目先の下目ポイントとしました。結局、27日(金)にこの日の25日移動平均線(15,033円)を少し下回る15,027円まで下がって、15,095円で引けました。これによって25日移動平均線までの乖離を埋めたので、スピード調整となる可能性があるという見方も出ていました。

 

今週は多くのイベントを控え、高値圏での一進一退の動きか

想定よりも早いスピードで上昇が続いています。前週までの5週間で日経平均は1,200円を越す上昇となっています。1年ぶりの5週連続となります。この急騰を後押しするだけのファンダメンタルズの変化があったわけではありません。先週は、FOMCの結果とイエレン議長が記者会見で「現在の株価水準は、過去の標準から離れているとは考えない」と発言したことぐらいで、新しい材料でもありません。

それでは、急騰の要因は何かというと、売り方の買い戻しによるものだと思われます。私もそうですが、ほとんどの投資家はチャート上から14,000~15,000円のボックス圏の動きを想定し、15,000円を超えた15,200円まではそのボックス圏の上限だと考えていました。そのため、この上限に近づくと売りの仕掛けが出ていました。 13日時点の信用売り残高は5週連続で増加し、2012年3月以来約2年3カ月ぶりの高水準となりました。ウクライナやイラク情勢の緊迫などの不透明感が出て、ボックスの上限を突破するのは難しいとの見方が出ていたためでした。

しかし、19日(木)は主力株中心に軒並み高となり、15,200円を突破し、出来高・売買代金ともに急増しましたが、「売り方」の買い戻しと海外の投資家の出遅れ感からの新規の資金によります。これにより、売り方の信用の評価損は大きなマイナスに転落(13日時点で▼4.6%)しており、こうなると更なる踏み上げによる上昇も期待されるところです。

 

今週は新成長戦略の中身の具体化に注目

国内的には先週成長戦略の閣議決定が終わり、サプライズなく目先は材料出尽くしとなったことで、次は7月1日の日銀短観で増税後の影響がどの程度なのかを確認することになり、影響が限定的であればプラス材料となります。国外的には、アメリカの7月3日(木)の6月雇用統計が注目となり、予想を上回ればドル買い要因となって円安方向の動きとなりますが、一方でウクライナ・イラクの地政学的リスクが円高要因となることになります。

日経平均は、年金の買いが続いていることで下値不安は乏しいものの買い上げる材料にも乏しく、15,000円を下値に日柄調整となる可能性があります。下げたとしても、目先の下値ポイントは6月13日の安値14,830円近辺、200日移動平均線(30日時点14,813円)近辺だと思われます。日経平均の指数は下げても中小型株の値上がり銘柄数は多く、今のところうまく循環物色していると考えられます。

本日30日(月)の日経平均は、先週末の大幅下落の反動で買い先行で始まりましたが、為替が1ドル=101.20円台まで円高進行となったことでマイナスに転じ15,052円まで下落するものの、25日移動平均線(30日時点15,051円)にサポートされて反発し、後場になるとプラスに転じて△67の15,162円で引けました。値上がり銘柄数は1,568となっています。今日の動きをみると25日移動平均線が下値サポートとなる可能性もあります。

 

 

(指標)日経平均

先週は、今年の戻り高値3月7日の15,312円を上回ってきたので、引き続き戻りを試すことが想定されるものの、騰落レシオが150%を超す過熱状態にあることからスピード調整も考えられるところとしました。基本的には15,200~15,500円の動きとしました。

結局、週前半は底堅い動きとなっていましたが、24日(火)の騰落レシオが164.1%と記録的な高水準となったことやこの日のNYダウが大幅下落となったことで、25日(水)は▼109円の15,266円となりました。26日(木)は△41円の15,308円と反発したことで15,200~15,500円の中の動きで終わるかと思われましたが、週末の27日(金)は手掛かり材料がないなか為替が円高進行となったことで先物主導で売られ、15,027円まで下げて▼213円の15,095円で引けました。

今週は、先週末の15,027円までの下げが25日移動平均線(27日15,033円)との乖離幅を一気に埋めたことでスピード調整となる可能性もあります。但し、成長戦略が閣議決定されてサプライズ的な内容はなく、目先材料出尽くしともいえますので、地政学的リスクから上値は重たいと思われます。下値では年金の買いが続いており、下値は限定的と考えられます。

週明け30日(月)は買い先行で始まるものの、為替が1ドル=101.20円台の円高進行となったことで一時15,052円まで下落、その後25日移動平均線(30日時点15,051円)にサポートされて反発となり、後場にはプラスに転じて△67円の15,162円で引けました。

日経平均

 

(指標)NYダウ

先週は、高値圏での地政学的リスクとアメリカの景気回復期待との綱引きで神経質な動きとなることを想定しました。又、上値が重くなってきているともしました。

結局、16,800ドル台でのもみあいとなり、26日(木)にはセントルイス連銀総裁発言で早期利上げ観測が浮上し、一時16,746ドルまで売られるものの、金利低下で持ち直しました。週末の27日(金)は△5ドルの16,851ドルで引けました。

今週は、重要な経済指標の発表を控え、特に7月3日(木)の6月雇用統計が注目となります。

柴田罫線でチャートの形をみると、2012年11月16日の12,471ドルからの上昇トレンド(A)の中で、今年の2月5日の15,340ドルの安値をつけてからの上昇の形が上向きの先細三角形B(下値の上昇角度より上値の上昇角度が小さい)となっており、高値圏でこの形となる場合は下放れする確率が高いようです。つまり、17,000ドルを大きく超えることができなければ6月12日の16,703ドルを引線の終値で切るといったん調整となる可能性が高いと思われます。

今週も引き続き高値圏でのもみあいが続きそうです。地政学的リスクが上値を押さえるものの、緩和的な金融政策は長期化するとの見方が下支えすることになります。4日(金)は独立記念日で休場のため、3日(木)発表の6月雇用統計はFRBによる利上げ時期の判断に影響を与えるため注目となります。

NYダウ

 

(指標)ドル/円

先週は、101~103円のボックス圏の動きの中で、地政学的リスクが高まれば円高、閣議決定される成長戦略が期待に沿う内容であれば円安としました。

結果的に、成長戦略は事前に知らされていた内容以上のものはなく円安要因とはならず、逆に地政学的リスクやアメリカの1-3月期GDPの大幅下方修正を受けてドルが売られ円高への動きとなり、一時101.29円と5月21日以来の円高水準となりました。

今週も地政学的リスクから円買い圧力は強いものの、アメリカの経済指標が好調であればドルが買い直されてくることになります。100.5~102.5円のレンジを想定。

ドル/円