ついにトランプ大統領が就任しました。相変わらず過激な言動を続け、マーケットにも動揺を与えています。予測不可能な「トランプ発言」、そしてそれを受けた「専門家の予想」に振り回されないために、個人投資家が気を付けるべきことを考えてみたいと思います。
「予想」をやめれば株式投資が格段に楽になる
突然ですが、読者の皆さんは、将来の株価や為替レートなどの見通しを「予想」していますか?筆者は基本的には予想しません。なぜなら「予想」をしても当たらないからです。
そもそも、トランプ氏が大統領選挙で勝利した後のマーケットの動きが、「円安・株高」と専門家の予想とは正反対であったことが何よりの証拠です。
実は、トランプ氏勝利後の日本株の上昇にうまく乗ることができた個人投資家はそれほど多くありません。
例えば、信用買いをしている個人投資家の含み損益を示す信用評価損益率をみると、昨年11月4日(金)のマイナス12.36%から、今年1月27日(金)はマイナス7.20%と、わずか5ポイントしか改善していません。
もちろん、マイナス幅が縮小していますから、恩恵を受けてはいるのですが、「大きく利益が増えた」という個人投資家は意外に少ないのではないでしょうか。
なぜそのような結果になったかといえば、専門家の「予想」に引きずられたからだと筆者は思っています。
筆者がトランプ相場に乗り遅れなかった理由とは
個人投資家だけでなく、多くのプロ投資家も含め、大部分の投資家が「クリントン氏が勝利する」「万が一トランプ氏が勝利したら強烈な円高・株安になる」と思っていました。しかし現実には、トランプ氏が勝利後、円安・株高が進行しました。
こうした動きを目の当たりにして、個人投資家はおそらくこう思うはずです。「あれ?トランプ氏が勝利した。でも株価が上昇して、為替も円安になっている。おかしいなあ」と。
つまり、自分が思い描いていたことと違ったことが現実に起きると、多くの人は思考停止に陥ってしまうのです。そしてその次に思う感情が「マーケットの動きが間違っている。そのうち予想通り円高・株安になるだろう」というものです。
この思考状態により、円安・株高がどんどん進んでも、日本株を買うことができなかったのです。
でも、筆者はアメリカ大統領選挙の結果発表後、上昇トレンドに転じた個別銘柄から順次新規買いしていきました。これは、「公認会計士足立武志ブログ」の昨年11月のADA指数の推移をご覧いただければお分かりいただけます。
なぜ筆者にそのようなことができたか、それは「予想」に従うのではなく「マーケットの動き」に従って投資行動をしたからです。
もう少し正確に言えば、予想と異なる方向にマーケットが動いた場合、予想に引きずられることなくマーケットの動きについていきます。
筆者自身も、クリントン氏が勝利する、万が一トランプ氏が勝利した場合、円高・株安になると思っていました。筆者はマーケットの動きが予想と異なった場合、マーケットの動きを優先して動きます。だからトランプ氏当選後の株価上昇に伴い、買いポジションを膨らませていくことができたのです。
トランプ発言に関する専門家のコメントに右往左往するマーケット
同じようなことが、最近のトランプ大統領就任後の発言についての専門家のコメントについても言えます。
最近は、「一部外国人の入国禁止」や、「日本の為替政策批判」によりマーケットが変動しました。日経平均株価は1月27日(金)の19,486円68銭から2月3日(金)には18,830円89銭まで下落し、25日移動平均線を明確に割り込んでいます。また、ドル/円レートも1月27日(金)の115円30銭から2月2日(木)には112円47銭まで円高が進み、2カ月ぶりの水準となっています。
こうしたマーケットの変動に対し、個人投資家はどのように行動するべきだったのでしょうか。
実は個別銘柄をみると、上昇トレンドを維持している銘柄も多数ありますし、1月27日(金)から2月3日(金)までの間、逆に上昇を続けたり、昨年来高値を更新した銘柄も少なくありません。
日経平均株価やドル/円レートの軟調な動きをみて、さらに専門家の発言を鵜呑みにしてしまい上昇トレンドの保有株まで売却してしまうと、結局はその後の上昇を逃してしまうことになってしまったのです。
ではどうすればよかったのか、実は筆者が取った行動はいつもと全く変わりませんでした。それは、「上昇トレンドの銘柄は保有を継続し、下降トレンドに転じたら売却すること」です。
筆者は、1月27日(金)から2月3日(金)にかけ、確かに保有株は少し減らしてはいますが、これは日経平均株価の下落や円高の進行により慌てて売却したわけでは決してありません。保有株の一部が25日移動平均線を明確に下回り下降トレンドに転じたため売却した結果に過ぎません。
個人投資家は予想するよりマーケットの動きについていくべき
こうしたトランプ氏の予測不能な「発言」、そしてそれを踏まえた専門家の「予想」に振りまわされないためには、まずは自分自身で正確な知識を持ち、専門家の予想に対してその真否を冷静に判断することが求められます。
とはいえ、筆者も含め、専門家の予想の何が正しく、何が間違っているかを正確に判定することはまず不可能です。そこで私たち個人投資家が用いるべきは、マーケットの動きそのものなのです。
例えば、自動車産業に対するトランプ氏の過激な発言以降、自動車関連株には値下がりを続けるものが目立ち、多くは下降トレンドとなっています。
筆者であれば、「自動車関連株の値下がり」という事実をもって、トランプ氏の今後の政策が、日本の自動車関連株には逆風とマーケット関係者の多くが判断しているのだと推測します。そして、少なくとも下降トレンドにある間は買いを控えよう、と判断します。
この判断過程において、筆者は一切「予想」をしていません。「トランプ氏の自動車メーカーへの過激発言」→「自動車関連株の下落」→「下降トレンド続く」→「自動車関連株への投資は現時点では見送り」という思考プロセスに、筆者自身の主観が全く入っていないことを、ぜひご理解ください。
「予想」とはいわば「主観」です。筆者は、株式投資ではいかに「主観」を排除するかどうかが、成果を出すためには重要だと思っています。いくら個人投資家が将来を予想したところで、大して当たりません。答えが出ないことに頭を使うより、「こうなればこう行動する」と、客観的に行動できるようなルールを作って実行した方が、株式投資は格段に楽になるはずですし、成果も出しやすくなるはずです。
<おしらせ>
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