アメリカ大統領にトランプ氏が決まり、マーケットも大きく変動しました。足元では株価の乱高下も落ち着き、ボックス相場を上抜こうとしています。この間、株式市場でどのような変化が起きているのか、筆者なりの視点からまとめてみたいと思います。
トランプ・ショックによる急落とその後の急騰に見舞われた日本株
11月9日、「トランプ大統領」の誕生が明確になると、日経平均株価は1,000円以上急落、トランプ・ショックの始まりかと筆者も大いに警戒しました。しかし、株価が急落したのは日本株くらいのもので、ヨーロッパやアメリカではほとんど影響が出ませんでした。
結局、翌10日の日本株は1,000円高と、9日の下落を帳消しにする急騰、その後も株価は順調に上昇しています。
この間、為替レートは円安に振れ、ついに1ドル=110円を突破しました。日経平均株価は為替レートに連動して動きますから、円安が進んだことで日経平均株価も上昇したことは特に驚くことではありません。注目すべきは、この間、個別銘柄でそれまでとは異なる値動きをみせているものが次々と現れているという点です。
突然の銀行株の急騰劇・その背景は?
トランプ・ショックによる急落後の上昇相場で突如動意づいたのが銀行株です。マイナス金利導入から安値圏で這いつくばっていたメガバンク株が一斉に急騰、今年2月以降のボックス相場を明確に上放れています。他の銀行株も、多くが上値追いの動きとなっています。
銀行株の今年に入ってからの株価の値動きをみると、2月中旬と7月上旬の2回安値を付けていることがわかります。2月中旬は、世界同時株安に見舞われたものですが、7月上旬は10年物長期国債利回りがマイナス0.3%と過去最低を記録した時期に重なります。
そして、足元では金利が上昇しており、11月18日には一時プラス0.04%にまで達しました。これは今年2月以来の水準です。
このように、銀行株の動きは、長期国債の利回りと連動していることが分かります。利回りが低下すれば銀行株は下落、逆に利回りが上昇すれば銀行株は上昇、という図式です。突然の銀行株の急騰の背景には長期国債利回りの上昇があります。銀行としては、金利が上昇した方が融資の利ザヤが稼げるためです。
アメリカ長期金利上昇の日本株への影響は?
実は、長期金利が上昇しているのは日本だけではありません。アメリカもヨーロッパも、世界的に「トランプ大統領」誕生後急速な勢いで長期金利が上昇しています。
アメリカ株の場合は、アメリカの長期金利が上昇すると株価にマイナスの影響を与えるといわれています。では、日本株も同様なのでしょうか?
過去の経験則からすると、アメリカの長期金利が上昇すれば、日本株にはプラスの影響がもたらされることが多いです。特に、個人投資家好みの中低位株にはその傾向が強いと感じます。
これは、アメリカの長期金利上昇は、アメリカの景気が良いことの表れであり、それが必然的に日本経済にも良い影響を及ぼす、という理屈です。
足元のアメリカ長期金利の上昇が、好景気を反映したことによるものであるかは微妙です。でも、今回もアメリカ長期金利の上昇と日本株上昇がシンクロしているところをみると、長期金利上昇の理由はともあれ、今のところは日本株にとってプラスの影響を与えてくれています。
全体的な底上げが起こっているように思える動きに
筆者の感覚では、現状でまだ下降トレンドにある銘柄は個別銘柄のうちの30%ほどありますが、これも日々減少する傾向です。
多くの銘柄が買われ、上昇トレンドにあるというのはいわば「全面高の相場」であり、全体的な株価の底上げが起こっているように感じます。特定の銘柄のみが上昇する相場より、全面高相場の方が個人投資家は利益を得やすくなります。
今年の夏ごろまでは、好業績で成長性の高い一部の銘柄のみ買われていましたが、足元の相場では業績がそれほど良くないにもかかわらず株価が上昇する銘柄がかなり増加しています。
ですから、自分自身が以前から気になっていた銘柄が上昇トレンドに転じれば、業績がイマイチでもとりあえず投資してみるのも悪くないと思います。逆に、あまりファンダメンタルにこだわり過ぎると、せっかくの投資機会を逸することになりかねません。
また、大相場になるときは証券株が大きく上昇することがよくあります。これは、大相場になれば売買代金・売買高が増加して証券会社の業績が大きく向上することが期待できるからです。足元でも大手証券株を中心に証券株は底堅い動きですから、今後の動きにぜひ注目しておきましょう。
空売り急増銘柄にも注目!
筆者は絶対に行ってはならないと本コラムやブログ、拙著などでも繰り返していますが、株価が上昇トレンドにある銘柄に対し、上昇の真っ只中に空売りをする投資家は少なくありません。彼らの理屈は、「ファンダメンタルからみてどうみても割高だ。近々株価は下げるだろう」というものです。
しかし、大相場になると、ファンダメンタルを無視して株価が上昇する銘柄が続出します。特に、その時々の「テーマ」に沿った銘柄の場合、上昇途中に空売りを入れてしまうと多大な損失が生じかねません。2013年春の大相場では、バイオ関連株が足元のファンダメンタル一切無視で期待感のみで軒並み急上昇したことが記憶に新しいです。
逆に、買い手の立場からみれば、株価上昇に伴い直近で空売りが大幅に増えている銘柄は、日本株全体が中長期的な上昇局面にある場合、その後株価が上昇する可能性が高くなります。さらなる株価上昇により売り方の含み損が膨らみ、それに耐えられなくなった投資家から損失覚悟の「踏み上げ」が生じるためです。
もちろん、株価が短期的に急騰して25日移動平均線からのかい離率が20%、30%に達している銘柄への新規買いはあまりお勧めしませんが、そこからの押し目が生じてかい離率が10%以下になったタイミングを狙うなどして買い時の到来を待つとよいでしょう。
「トランプ大統領誕生」後の相場はまだ2週間ほどですが、少なくとも現時点では色々な面で、それまでとは異なる動きが生じています。これがいつまで続くのかは誰にも分かりませんが、もし足元の状況が今後3カ月とか6カ月続くのであれば、2013年前半以来の大相場が到来することになります。
株式投資で大きな成果を得るコツの1つが、大相場をしっかりものにするという点です。今はまだ「可能性」の段階ですが、上昇トレンドにある銘柄をしっかり保有しておけば、例え今後大相場が到来しても十分に対応可能です。
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