「iDeCo」(イデコ)と愛称が決まった個人型確定拠出年金、来年1月からは誰もが確定拠出年金に加入することができます。私たち個人投資家として、確定拠出年金とどう付き合うのが得策なのか、筆者なりの考えをお伝えします。

来年1月から確定拠出年金はこう変わる!

確定拠出年金という制度はすでに10年以上前から存在しています。しかし、2017年1月から、この制度が大きく変わります。それは、国民年金の加入者であれば確定拠出年金に誰でも加入できるようになるという点です。

もともと、自営業者(国民年金の第1号被保険者)や、勤務先に企業年金や確定拠出年金がない会社員は個人型確定拠出年金に加入できます。これに加え、2017年1月以降は公務員や専業主婦(国民年金の第3号被保険者)なども個人型確定拠出年金に加入することができるようになります。

楽天証券でも個人型確定拠出年金には力を入れているようで、他の金融機関に比べて口座管理に要する手数料が安い(年間2,004円)ことは大きな魅力です。

本コラムでは確定拠出年金の制度についての説明は割愛します。詳しく知りたい方は楽天証券の特集ページをご覧ください。

筆者が考える確定拠出年金の最大のメリットは「所得控除」

確定拠出年金のメリットとして一般的に取りあげられるのが

  • 掛け金の所得控除
  • 運用益の非課税
  • 受け取り時の税負担軽減

の3つです。この中で筆者が最もメリットを感じるのが、「①掛け金の所得控除」です。

もちろん、「②運用益の非課税」も大きな魅力ではありますが、そもそも運用がうまく行かなければ恩恵は受けることができません。一方、「①掛け金の所得控除」は、支払う税金が軽減されることが「確定」しています。②は不確実なメリットであるのに対し、①は確実なメリットなのです。

所得控除ですから、所得が大きい人ほどメリットが大きくなります。課税所得が1,800万円の人であれば、掛け金の43%分税金が安くなりますし、課税所得が5,000万円の人なら、掛け金の55%分の税金を減らすことができます(復興特別所得税は無視しています)。

例えば、課税所得5,000万円の人が年間72万円の掛け金を支払った場合、所得税・住民税が39万6千円安くなります。32万4千円で72万円を積み立てたのと同じ効果が生じるのです。定期預金など元本確保型商品にしておけば価格変動リスクを取らずに所得控除の効果を享受できます。投資信託などに投資しても、よほど大きな損失とならない限りは所得控除による税額軽減のメリットの方が優るはずです。

今時、こんなに有利な投資商品は他に存在しないのではないでしょうか。

ただし、専業主婦の方など、所得税・住民税が生じない方については、所得控除のメリットは生じない点には注意してください。所得控除とは、あくまでも所得税・住民税を少なくする効果であり、税金がゼロの人には何ら恩恵がないからです。

確定拠出年金は「長期分散投資+ドルコスト平均法」のスタイルが一般的だが・・・

確定拠出年金では、制度上は個別株式にも投資できるようになっていますが、実態としてはそれらに投資することはできず、「投資信託」という形で運用することになります。

確定拠出年金は、定期的に掛け金を拠出し、何十年という期間をかけて資産運用をしていきます。おのずと書籍等での説明も、「ドルコスト平均法」による「長期分散投資」、つまり株価や相場がどう動こうとも、毎月一定額の掛け金を継続的に投資し、リスク資産を長期間保有し続けるというスタイルを貫く形となっています。

しかし、ドルコスト平均法による長期分散投資をしなければならないという決まりはどこにもありません。運用する投資信託を入れ替えてもよいですし、投資対象とする資産を偏らせる(例えば全額外国株の投資信託で運用する)こともできます。

また、例えば国債がマイナス金利になるなど大きく値上がりしている状況の債券にはあえて投資せず、株式に投資する投資信託に資金を集中させる、という戦略を取ることもできます。

個人投資家は確定拠出年金をこう活用しよう

最後に、個人投資家として確定拠出年金をどう活用すべきか、まとめてみたいと思います。

  • 所得控除というメリットを最大限活用する

繰り返しになりますが、掛け金の全額が所得控除の対象となることにより軽減される所得税・住民税の額だけ、確実にプラスの効果が生じます。特に所得の大きい方については、老後資金の形成手段としてかなり有効です。運用の失敗により資産を目減りさせたくなければ、定期預金など元本確保型の金融商品にしておけば問題ありません。

  • 個別銘柄への株式投資のリスク分散として使う

例えば、筆者が自身で実践している株価トレンド分析による個別銘柄への投資は、下降トレンドになれば保有株を売却します。何年、何十年と保有を続けるということにはなりません。

一方、長期分散投資は、「長期間リスク資産を保有することで、ある程度のリターンを享受しよう」という考え方です。

もし、ご自身の現時点での株式投資のスタンスが「長期分散投資」ではない場合、あえて確定拠出年金を用いて長期分散投資を行ってみる手もあります。普段ご自身が行っている手法とは別の手法をあえて行うことで、運用手法の隔たりによる失敗リスクを軽減させる効果が期待できるからです。

  • 必ずしも長期分散投資にこだわる必要はない

確定拠出年金の書籍のほぼ100%において、「長期分散投資」を主軸に据えた投資手法の説明が行われています。しかし、確定拠出年金は、投資対象とする金融商品を定期的に入れ替えることができますし、投資対象を分散せずに偏らせることもできます。長期分散投資をしないといけないという決まりはありません。

書籍に書かれている内容だけが確定拠出年金の使い方ではありません。ご自身にあった手法をアレンジしていけばよいと思います。

いずれにせよ、確定拠出年金による資産運用は、筆者が日々行っているような上昇トレンドで買い、下降トレンドで売り、といったトレンドに従って売買するスタイルの株式投資とは別枠で、もう少し長い時間軸で考えた方がよさそうです。

そして、確定拠出年金により運用する資産は、原則60歳になるまで引き出せない点も十分注意して運用するようにしてください。