悪材料などにより株価が急落した銘柄を逆張りで買い向かうか、それとも手を出さずに様子を見るかは、個人投資家の間でも意見が分かれるところです。そこで今回は株価急落銘柄について逆張りと順張りそれぞれのメリットとリスクを考えるとともに、筆者ならどう行動するかをお話ししたいと思います。
株価が大きく下落した銘柄は「買い時」なのか?
ある銘柄の株価が、不透明な営業手法が表面化したことをきっかけに、大きく下落したとします。この銘柄に対し、個人投資家の間でも様々な思惑が入り乱れていた……。ある投資情報サイトでは、株価が大きく下がったA社株に対し「ファンダメンタルから見れば明らかに売られすぎ。今が買い時」という意見と、「ここまで悪材料が広がってしまったのだからファンダメンタルには明らかにマイナス。まだまだ株価は下がる」という意見が激しく展開されている。果たしてどちらの意見が正しいのか?
このように、株価が大きく下落した銘柄に対して、必ずといってよいほど巻き起こるのが、「買い時」だという意見と「買いなどもってのほかだ」という意見の対立です。
株価急落を買い向かう「逆張り」と手出し無用の「順張り」
株価急落銘柄を買い時と考えて実際に新規買いをしていこうというのは「逆張り」の考え方です。一方、株価が急落している銘柄には手を出さないというのは「順張り」の考え方です。
簡単に言うと、逆張りとは株価のトレンドに逆らって売買をする方法で、順張りは株価のトレンドに従って(逆らわずに)売買をする方法です。
株価が急落している銘柄は、日足チャートでみればまず間違いなく株価が25日移動平均線を大きく下回っており、下降トレンドの状況にあります。逆張りの考え方は、例え株価が下降トレンドの状況にあったとしても、株価が大きく下落して割安な状態にあると判断できれば積極的に新規買いをする、というものです。
一方、順張りの考え方は、株価が下降トレンドの状況にあるならば、そこからさらに株価が下落する可能性が高い、さらには何か隠れた悪材料が存在する可能性も否定できないため、一見割安な状態に思えても新規買いは行わない、というものです。
逆張りのメリット・順張りのデメリット
株 価が大きく下落しているとき、逆張りならその株を買い向かうことになり、順張りなら買わないという判断をすることとなります。この2つの投資手法は「買いタイミング」という点からみて大きく異なるわけですが、当然それぞれにメリットとデメリットがあります。
なお、順張りにも色々な考え方がありますが、ここでは筆者が実際に使っている株価トレンド分析を組み合わせ、25日移動平均線を下回っている間(下降トレンドの間)は新規買いはせず、25日移動平均線を上回った時点(上昇トレンドに転換)で新規買いをする、という手法を前提とします。
例えば、株価が1,500円ほどだった銘柄がちょっとした悪材料により1,000円まで値下がりしているケースを考えてみてください。このとき、25日移動平均線は1,200円の水準にあるものとします。
逆張りの考え方であれば、足元の1,000円という株価水準が、PERやその他のファンダメンタル指標などから、この銘柄の本来あるべき株価より明らかに割安と思えば1,000円で新規買いすることになります。一方、順張りの考え方であれば、株価が25日移動平均線より下にある間は下降トレンドですから新規買いは見送ります。株価が25日移動平均線より上に抜ければ新規買いとしますが、そのためには現時点での25日移動平均線の1,200円近辺まで株価が上昇する必要があります。
すると、逆張りであれば1,000円で買えるところ、順張りの場合は1,200円で買うことになり、逆張りの方が順張りより安く買えることになります。これが逆張りの大きなメリット、順張りのデメリットです。
逆張りのデメリットかつ順張りのメリットとは?
でも、業績の下方修正のアナウンス等は会社側から発表されておらず、ファンダメンタルに悪影響を及ぼしていると思われる明確な材料も見当たらないのに、株価が下げ止まらず1,000円が500円になってしまったらどうでしょうか。
このとき逆張りの投資家にとっては、1,000円の株価を割安と思って買ったにもかかわらず、そこからさらに50%も株価が値下がりしていることになります。
もしこの時点で投げ売りしてしまえば、投資金額の50%の損失が生じてしまいます。一方、売らずに保有を続けた結果さらに株価が値下がりし、そこから長期間株価が低迷すれば「塩漬け株」として多額の含み損を抱えた状態の株を持ち続けなければなりません。この銘柄に投資した資金は他に有効活用できず拘束されてしまうことになります。
でも、順張りであれば、株価が25日移動平均線を下回る間は下降トレンドのため新規買いしませんから、株価1,000円の時点での新規買いはもちろん行っていません。株価がさらに下がって500円になろうが300円になろうが、そもそも下降トレンドの銘柄は買わないため、損失を被る余地はありません。
つまり、株価が下落する中で新規買いしたもののそこからさらに株価が大きく下落した場合、損失が大きくなってしまう危険性が高い、というのが逆張りのデメリットです。順張りではそもそも株価下落途中の下降トレンドのタイミングでは買わないので、損失が生じる余地はありません。これがメリットとなります。
本当に大丈夫?株価が下がった銘柄を喜んで買う人たち
投資情報サイトの掲示板などをみていると、株価が大きく下がった銘柄につき、「買い時」とか「あと100円下がったら全力買い」、「ここからは資金が尽きるまでナンピン買い」など、株価下落を絶好の新規買いの機会ととらえている個人投資家が大勢存在することがわかります。株価が直近安値を割れようが、年初来安値を更新しようが特に関係ないようです。そもそも個人投資家は、株価が下がったら買うという逆張りの投資スタイルをとる人が大多数です。
でも筆者が問いかけたいのは、株価の大幅な下落が本当に「買い時」なのか、という点なのです。
筆者は株価至上主義ですから、大した悪材料もないはずなのに株価が大きく下がるということ自体おかしなことだと思っていて、「本当はファンダメンタルに重大な影響を及ぼす何かが起こっているのではないか」と案じてしまいます。
確かにファンダメンタルに重大な影響がないにもかかわらず、1,500円だった株価が500円にまで下落したならば、これはまさに大バーゲンセールといえます。でも、リーマン・ショック級の大暴落でのない限り、そもそもファンダメンタルに重大なマイナス要素がない銘柄の株価が果たして50%以上も下落するのか、というのが大きな疑問です。
もちろん、好業績が続く銘柄であっても高値を付けてから20%程度の調整はよくあります。高値がややバブル的なものだった場合は、30%程度下落することも珍しくありません。でも、ファンダメンタルのマイナス要素が全くないのに株価が短期間に50%以上下落するというのはそうそうありません。絶対にないとは言えませんが、50%も下落するのであれば、単なる株価の調整ではなく、「ファンダメンタルに何かマイナスの影響が生じている可能性が高い」と考えておくべきです。
株価下落の要因は単なる調整なのかファンダメンタルの悪化なのか?
そして株価が20~30%程度下落する、通常起こりうる範囲内の調整といえども、その中身は単なる調整というケースにとどまらず、ファンダメンタルの悪化を織り込み始めた途中経過であるという可能性も大いにありえます。
もしファンダメンタルの悪化が原因で株価が下げ始めているとしたら、高値から80%、90%の下落となってしまうことも決して珍しいことではないのです。
足元での株価急落の理由が単なる調整なのかファンダメンタルの悪化なのかはっきり分からないにもかかわらず逆張りで買い向かうというのは非常にリスクの高い行為です。
もし足元の株価の大幅下落が単なる調整であり、業績には何ら問題がないのであれば、早晩株価は上昇し、上昇トレンドに転換するはずです。無理に逆張りで買わなくとも、上昇トレンドへの転換を待ってから順張りで買えば、ファンダメンタルの悪化は起きていない可能性が高い状況で買えることになります。言い換えれば、順張りならば株価のさらなる下落に巻き込まれてしまうリスクを低減することが可能なのです。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。