2013年6月以降、長らくの間続いてきた日本株の「二極化相場」。しかしこれがいつまでも続くわけではないこともまた事実です。今回は、参議院選挙後に個別銘柄にどのような「変化」が起こっているかを追跡したいと思います。
参議院選挙を境に日本株の物色対象が大きく変化している
7月10日に参議院選挙が行われました。実はこの参議院選挙を境に、個別銘柄の株価の動きが大きく異なっていることにお気づきでしょうか。
筆者は、日々400銘柄ほどの個別銘柄の株価チャートをチェックしていますから、日本株の個別銘柄の物色対象に変化の兆候が現れているかどうかは早い段階で気づくことができます。
参議院選挙後の株価の動きで顕著だったのが、それまで日経平均株価が軟調な局面であっても株価上昇を続けていた好業績・内需系の成長株が一斉に調整局面に入ったということです。筆者はこれらの成長株への投資金額が多かったので、これはすぐに気づくことができました。
その一方で、業績伸び悩み・成長性に乏しいなどの理由から、長期間値下がりを続けていた銘柄の多くが、参議院選挙後になってから株価上昇を始めたのです。
アベノミクス相場開始後の日本株を改めて振り返ってみる
ここで、アベノミクス相場が開始してから現在までの日本株を改めて振り返ってみましょう。
アベノミクス相場がスタートしたのは2012年の11月です。ここから約半年ほど、2013年の5月下旬に日経平均株価が急落するまでの間は、いわゆる「全面高相場」でした。つまり、ほとんどの個別銘柄の株価が大きく上昇し、日本株を持ってさえいれば簡単に利益を得ることができた時期です。中にはバイオ関連株のように完全にバブル化したような銘柄も少なくありませんでした。
しかし、2013年6月以降は、個別銘柄によって株価の動きが大きく異なるようになりました。2013年6月以降も株価が上昇を続けたのは、毎年増収増益が続いているようないわゆる「成長株」でした。一方、成長株以外の大多数の個別銘柄の株価は伸び悩むようになってしまいました。
日経平均株価は2013年6月以降も上昇を続けましたが、スリー・ディー・マトリックス(7777)などのバイオ関連株、大京(8840)などの不動産関連株をはじめ、2013年の5月前後に高値をつけて以降、その高値を更新できていない銘柄は数多くあります。
円高進行により輸出関連株が次々と転落していったここ1年
日経平均株価が高値をつけたのは2015年夏です。それは為替レートの円安のピークでもありました。そのため、日経平均株価の高値と同じ時期に高値を付けている個別銘柄の多くはブリヂストン(5108)、ジェイテクト(6473)、ミネベア(6479)など輸出関連株です。
2013年6月以降も、輸出関連株の多くは円安進行により増収増益が続いていたため株価も上昇を続けていたものの、2015年夏以降に進んだ円高により業績が伸び悩み、それに伴い株価も天井をつけ大きく下落してしまいました。
その結果、円高が業績に悪影響を及ぼさないような、内需系の成長株だけが、2015年夏以降も株価が崩れることなく上昇を続けたのです。
以上をまとめると次のようになります。
- 2012年11月~2013年5月までは何でも上がる「全面高相場」
- 2013年6月~2015年夏ごろまでは増収増益の好業績銘柄が上昇する「二極化相場」
- 2015年夏以降は内需系の好業績銘柄のみが上昇する「さらなる二極化相場」
内需系成長株が30%下落した一方で輸出関連株は50%上昇したこの1カ月
このように、2015年夏以降も高値を更新し続ける銘柄は、内需系かつ増収増益が続くような一部の銘柄に限られていました。逆に言えば、このような銘柄に集中して投資していれば、今年に入ってから日経平均株価が大きく下落する中でも、利益を得ることができました。でも、その動きに変化が生じたのが7月10日の参議院選挙だったのです。
例えば、内需系成長株として株価上昇が続いていた寿スピリッツ(2222)は、7月4日に3,625円の高値をつけた後は大きく下落し、8月5日の2,367円の安値まで、1カ月で30%以上も値下がりしました。また、同様に内需系成長株であるエムスリー(2413)も、7月13日に3,940円の高値をつけましたがそこから8月8日には2,962円まで下落、30%弱の値下がりとなりました。
一方、円高進行により軟調な株価が続いていたミネベア(6479)は、7月8日に614円の安値をつけた後は反発し、7月27日の高値926円まで、わずか3週間たらずで50%も上昇しました。ジェイテクト(6473)も、7月7日の安値1,031円から、8月9日には1,533円まで上昇し、1カ月で50%近く値上がりしました。
次回は、こうした現況を踏まえ、今後の展望および対策について考えてみたいと思います。
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