日本の、そして世界中の株安が止まりません。日経平均株価は年初からの2週間で一時10%を超える下落、個別銘柄に至っては20%、30%の下落は当たり前です。

今回は、この年明けからの株価大幅下落をテクニカル指標やデータから振り返るとともに、筆者がどのように乗り越えたかをお話ししたいと思います。

騰落レシオ60%割れでも底打ちしない異常事態に

日経平均株価は年末終値19,033円71銭から1月14日の安値16,944円41銭まで、わずか8営業日で2,000円以上、率にして10%以上の下落となりました。本原稿は17日に書いていますが、おそらく18日の月曜日には、14日安値を大きく割り込むことが想定されます。

実は1月12日に、25日平均の騰落レシオが57.8%まで低下していました。騰落レシオが60%を割り込むことはめったになく、2012年11月のアベノミクス相場スタート以来、初めてのことです。

前回騰落レシオが60%を割り込んだ2012年6月4日は、日経平均株価もその日に最安値をつけ、年初来安値銘柄数も678銘柄をつけました。そして翌営業日以降株価は回復、年初来安値銘柄も大きく減少しました。

しかし今回は、騰落レシオが60%を割り込んだ後の14日も年初来安値銘柄が約300銘柄に達し、株価が下げ止まっていないことが分かります。騰落レシオが60%を割り込んだのに底打ちの気配が感じられないというのは、ちょっと気味が悪いといえます。

1月第1週は「外国人売り」「個人投資家買い」のいつもの構図に

先日、1月第1週の投資部門別売買動向が東証から発表されました。それによると、外国人投資家が4,471億円売り越した一方、個人投資家は5,814億円買い越しました。株価が下がったところを買う「逆張り」が多いという個人投資家の傾向が見事に表れています。

しかし、1月第1週の株価下落を喜んで「押し目買い」した個人投資家は、その翌週のさらなる株価下落により、多額の含み損をかかえてしまっていることも事実です。

外国人投資家はアベノミクス相場初期のまだ株価が安いころ、怒涛の如く日本株を買い越していました。逆に個人投資家は、日経平均株価が大きく上昇する過程で、一貫して日本株を売り越していました。

ですから、今年1月に入ってから、外国人投資家は株価が下落しているところを安く叩き売っていて、逆に個人投資家は安いところをうまく拾えているというのは誤解です。外国人は安く買った株を今売っているわけですから、十分に利益が出ます。逆に個人投資家は、日本株がまだ上昇の初期段階だったときには株を売りまくって、今になって少し安くなったところで買っているわけですから外国人投資家よりも「高値掴み」をしていることには間違いありません。

「逆張りは安く買うのだから良いのではないか」と思われる方もいらっしゃると思います。でも、決してそうではないのです。

逆張りの怖いところは、株価が下がっているところを買い向かうわけですから、想定していた以上の大幅な下落になったとき、多額の含み損を抱えてどうしようもならなくなってしまうリスクがある点です。1月第1週の個人投資家の大量買い越しは、安いところでうまく買えているようにみえて、実はそこから株価がまだまだ大きく下がるというリスクに対して備えを持っていない、とても危うい買いなのです。

底値を「予想」するのはもうやめよう

年末年始恒例の専門家による年間の日経平均株価予想は、年初たった2週間で、その多くが「ハズレ」となりました。筆者は以前から、日経平均株価の年間予想は当たらないから無視して良い、と申し上げてきましたが、今年もその通りになりました。

専門家の中には、年間株価予想が外れた理由を、予想の根拠にない「想定外」の動きが年初から起こったためだと言い訳する人もいるでしょう。しかし、そもそも「想定外」が起こったときに大きな損失を避けて生き残ることこそが株式投資では重要なのです。「想定外」の事象を予測できない予想など、個人投資家にとって意味がありません。

そして、株価が大きく下がると、下がった時点で改めて予想をし直す専門家も大勢いますが、下がるたびに「底値はいくらです」と予想を変更していたら、それはいつかは当たります。そんなものは予想でもなんでもありません。

とにかく、株価予想は「想定外」の事象には全く対応できていませんから、個人投資家が想定外の相場で生き残るためには役に立たないことだけは理解しておいてください。

株価トレンド分析なら「想定外」の相場でも十分対応できる

では、「想定外」の下落が起こったとき、どのようにすれば生き残ることができるのでしょうか。それはやはり株価の先行きを予想するのではなく、株価のトレンドに沿って粛々と行動することだと筆者は思っています。そのための手法の1つが、筆者が提唱し、かつ実践している「株価トレンド分析」なのです。

株価トレンド分析では、下降トレンドに転換した銘柄は保有しません。ですから、株価下落の規模が大きくなり、想定外の下落になる前の時点ですでにほとんど保有株はなくなっています。そこからいくら株価が下がっても、もう損失が膨らむことはないのです。

上昇相場では、誰でも簡単に儲けることができます。大事なのは、下落相場になったとき、どれだけ損失を小さく抑えることができるかです。この巧拙により株式投資のパフォーマンスの多くが決まるといっても過言ではありません。

今回の株価下落においては、日経平均株価の下落率の2分の1以下の損失率に抑えられれば上出来です。今回の下落の起点を昨年12月初めの20,000円とすると、17,000円までの下落率は15%、この2分の1の下落率である7.5%以内です。つまり、12月初めの保有株時価+キャッシュに比べ、現時点の保有株時価+キャッシュの減少率が7.5%以内ならば優秀です。そして、この損失率7.5%以内は、株価トレンド分析を用いて下降トレンドに転換した銘柄を順次売却していくことで、十分に達成することができます。

どんな「想定外」の相場であっても生き残ることこそが重要

株式市場という場所は、怖いところです。株価上昇で財産を大きく増やしたとしても、その後の大きな下落相場で対応を間違えれば、あっという間に財産を失ってしまいます。過去、株価の大きな下落により株式市場から退場させられた個人投資家は大勢います。

でも、下落相場での対応さえ正しければ、株式市場はあなたに大きな財産を与えてくれます。そのためには、下落相場での損失を最小限に抑え、生き残ることこそが必要です。

確かにいつ株価が急反発してもおかしくありません。今ここで勇気を出して買わないと、その急反発を取りこぼすかもしれません。でも、それでも良いと筆者は思います。ここからの急反発は、株価が下降トレンドにある中でのリバウンドでしかないからです。

それよりも、ここからの「想定外」の下落で損失をさらに大きくしないように守りに徹し、株価が再度上昇トレンドに転じたら買い直せばよいのです。

筆者のブログ「公認会計士足立武志ブログ」では、日々のADA指数を公開していますが、1月15日にはこれがマイナス4.9%となりました(ADA指数についての詳しい説明はブログをご参照ください)。これは、個別銘柄のほとんどが1月15日時点で下降トレンドにあるため、大部分がキャッシュポジションになっていることを表しています。つまり、保有株がほとんどないためここから株価が急上昇しても利益は見込めない一方、株価がさらに下落しても損失は増えないようにしているのです。

今後株式投資を続けていくにあたり、「想定外」の下落というのは何度も訪れます。その度にできるだけ浅い傷で乗り切ることこそが、トータルの運用成績の向上に直結することをぜひご理解ください。