年初の初日から大幅な株価調整が続いた日本株。大発会からの5日続落は戦後初とのことです。でも、個人投資家の投げ売りも急増している中、筆者は「株価トレンド分析」を実践することでダメージを最小限に抑えることができています。今回は、改めて株価下落局面での株価トレンド分析の優位性をお伝えしたいと思います。

年初からいきなり「世界同時株安」に見舞われた株式市場

2016年年明けの日本株は、中国株の急落による複数回にわたるサーキットブレーカー発動や、それに伴う世界各国の株価下落、さらには為替レートの円高進展や中東での地政学的リスクの勃発など、悪材料が重なりました。その結果、1月4日からの週は、日経平均株価は一時17,509円64銭まで下落、昨年末の終値19,033円71銭からわずか5日で1,500円もの急落となりました。

これを受けて、個別銘柄もフィンテック関連銘柄など一部のテーマ株を除けば株価は大きく下落、8日などはまたしても個人投資家からの投げ売りが大量に発生したようです。多くの個人投資家は、年初から満身創痍の状態に陥っているのではないでしょうか。

個人投資家が株式投資で失敗する理由は2つに集約される

そもそも、個人投資家が株式投資で失敗、言い換えれば大きな損失を被る理由はどこにあるのでしょうか。それは大きく分ければ以下の2点に集約されます。

  • 銘柄選択が誤っている
  • 売買のタイミングが誤っている

このうちより重要なのが②です。仮に銘柄選択が誤っていたとしても、適切なタイミングで売買していれば、大きな損失を避けることが可能だからです。そもそも、将来株価が上昇する銘柄を常に事前に見極めるなど不可能に近いことです。さらには、日本株全体が大きく下落するときは、どんなに優良な銘柄であっても結局は大きく下がってしまうからです。

日本株が大幅下落する際、多くの銘柄を保有したまま抱え込んでしまうことが大きな損失が最も生じやすいシチュエーションです。ですから、株価下落の初期段階で、保有株を減らしてキャッシュポジションを高めておくことが、大きな株価下落を乗り切るために必要となります。そして、保有株を減らすタイミングは、日経平均株価など指数をみるのではなく、あくまでも個別銘柄ごとに決定していきます。なぜなら、指数が弱くても上昇を続ける個別銘柄も中にはあり、そうした銘柄までも売却してしまうのは逆にもったいないからです。

筆者のブログ「公認会計士足立武志ブログ」では、筆者自身の日々の投資可能資金に対する実際の株式投資額の割合を示す「ADA指数」を発表しています。このADA指数の1月4日から8日までの推移(45.1%→39.2%→25.8%→13.2%→11.5%)をみていただくと分かるように、筆者は日本株の調整が進展するにつれ、保有株を順次減らしていきました。なぜなら、株価の調整が進展する局面では、弱い銘柄から順次下降トレンドに転換していくからです。1月8日時点では、筆者が日々株価チャートをチェックしている約400銘柄のうち、90%以上の銘柄は下降トレンドにあります。上昇トレンドを維持できているのは1割に満たないのです。これほどまでに上昇トレンドの銘柄が少ないにもかかわらず、多くの資金を株式に振り向けたままでいれば、大きな損失や含み損を被ってしまうのは必然です。

株価トレンド分析なら余計なことを考えず機械的に行動できる

では、どうすれば適切なタイミングで売買でき、ひいては大きな損失を回避することができるのでしょうか。そのための1つの方法が、「株価トレンド分析」なのです。

株価トレンド分析とは、株価のトレンドに合わせて売買を行う方法で、簡単に言えば「株価が25日移動平均線を上回っている間は新規買いOK+持ち株は継続保有」、「株価が25日移動平均線を下回ったら新規買い不可+持ち株は速やかに売却」というものです。

色々な銘柄の株価チャートをみていただくと分かりますが、順調に上昇していた株価が25日移動平均線を割り込むタイミングというのは、まだかなり株価は高値圏にあることが多いです。それでいて、本当に強い動きを続ける銘柄はなかなか25日移動平均線を割り込みません。ですから、株価が天井をつけた可能性がある銘柄を、なおかつ株価が大きく下がる前に売却できるという利点があります。

もう1つ、株価トレンド分析の優れている点は、「株価が移動平均線の上にあるか下にあるか」という、非常にシンプルかつ客観的なタイミングで売買をすることができることです。

上昇を続けていた株価が反転下落してくると、「もう天井をつけたはずだからそろそろ持ち株を売ろう」「いやいや、好業績が続いているのだからまた高値を更新してくるはずだ」と様々な思いが自分の頭の中で繰り広げられ、適切な判断ができなくなってしまいがちです。

その点、株価トレンド分析では、移動平均線を割れたら売却すればよいですし、その後株価がすぐに持ち直した場合は再度移動平均線を上回ったら買い直しをすればよいだけですから、株価が上下どちらに動いても常に客観的な対応が可能となるのです。

株価が大きく調整すればするほど効果的な株価トレンド分析

そして、株価トレンド分析は、株価が大きく調整すればするほど高い効果を発揮するのが特徴です。その理由は、保有株を「25日移動平均線割れで売り、再度25日移動平均線超えで買い直す」という手法にあります。

ラオックス(8202)の株価チャートを見てください。株価トレンド分析を用いれば25日移動平均線を割り込んだタイミングである昨年8月中旬の470円前後で保有株を売却するという判断ができます。その後、現在(1月8日)に至るまでずっと25日移動平均線割れで推移しています。厳密には下落途中に一瞬だけ25日移動平均線を上回っている箇所がありますが、仮にここで買い直したとしても、その後の再度の25日移動平均線割れですぐ売却すれば少量の損失で抑えられます。そして、1月8日時点の25日移動平均線は235円です。

ラオックス(8202) 日足チャート

つまり、株価トレンド分析にしたがって保有株を470円前後で売却できていれば、ここから足元で株価が反発して25日移動平均線を超えて新規買いするときの株価は25日移動平均線の少し上である250円近辺となるのです。ラオックス株をずっと保有し続けるのに比べ470円-250円=200円以上、率にして40%以上も安く買い直すことができるのですから、投資利回りに換算したらどれほど有利かお分かりいただけるのではないでしょうか。

もちろん、470円近辺で売却せず、例えば株価下落が進んだ350円とか300円で我慢できずに売却してしまうよりも有利なのは言うまでもありません。

そして、ここまで株価が大きく下落してしまうと、ファンダメンタル面にも変化が及んでいることもあります。ですから、今後25日移動平均線を超えてきても、この銘柄の買い直しをしない、という選択肢も可能です。そうすれば、470円近辺という、十分な高値圏でこの銘柄を売却することができたことになります。

もちろん、株式投資における正解は1つではありません。ですから、現にご自身が行っている投資手法でうまくいっている、という方は、無理に「株価トレンド分析」を実行する必要はないと思います。でも、筆者は昨年夏のチャイナ・ショックも、年始からの株価急落も、いつも株価トレンド分析を用いて浅い傷で乗り越えてきているという実績があります。株価が本格的に調整するたびに大きな損失や含み損を抱えてしまうとお悩みの方は、この「株価トレンド分析」を試してみてください。