今回は、前回の続きとして、筆者が「売買のタイミング」という観点からどのようにかい離率を活用しているかを、具体例を織り交ぜながらご説明していきます。
トレンド転換の判断材料として「かい離率」を参照する
筆者は株価トレンド分析により売買のタイミングを計っています。そして、売買のタイミングとして最も重要と考えているのが、「上昇トレンド転換直後の銘柄の新規買い」と「下降トレンド転換直後の保有銘柄の売却」です。
ここでポイントとなるのが、どのような状況になったら「上昇トレンドへの転換」や「下降トレンドへの転換」と判断するのかということです。このとき筆者が用いるのが「かい離率」なのです。
例えば、株価が25日移動平均線を上回っても、かい離率が0.5%しかなければ、それはまだ上昇トレンドへの移行とは判断しません。2~3%程度かい離した時点で、上昇トレンドへの移行と判断して新規買いを行います。前日の株価の値動きやアメリカ株の動向などによっては、当日の寄り付きが高く始まってしまい、5%以上程度かい離することもあります。この場合でも、好業績の銘柄など、欲しい銘柄であれば「少しかい離が大きいな」と思いつつも新規買いします。
添付のリニカル(2183)の日足チャートをご覧ください。直近の買いタイミングは、11月2日に上昇トレンドへ転換した翌営業日の4日の寄り付き①です。その時の25日移動平均線からのかい離率は10%近くにまで達していますが、好業績が続いていますので、新規買いのタイミングと判断します。
また、例えば11月2日の前場が引けた後の昼休みに株価をチェックして、移動平均線を明確に超えていることを確認した時点②で買えば、11月4日より安く新規買いすることができます。
なお、11月6日に一時1,641円まで下がっていますから、ここで買えばよいのではないかと思われるかもしれませんが、それは結果論です。実際にはここで買うことは難しいと思います。
リニカル(2183) 日足チャート
筆者が新規買いをするかい離率の上限は10%が目安
そして、新規買いをする際のかい離率の1つの目安としているのが「10%」です。なぜなら、買った後に株価が下がって移動平均線を割り込んで損切りとなる際、損失率が10%前後で抑えられるラインだからです。
筆者は、原則として移動平均線を明確に割り込んだ時点で損切りとしています。もし、移動平均線からプラス5%かい離で新規買いした後に移動平均線を割り込んだら、損失率は5%前後と想定できます。プラス10%かい離の場合なら、想定損失率は10%前後です。
そして、筆者は損切りとなった場合の損失率の許容範囲を10%と設定し、それを超えることのないようなタイミングで新規買いしています。もし、移動平均線からのプラスかい離が20%のときに新規買いすると、損失率が20%に達する可能性があります。それでは損失率の許容範囲である10%を大きく超えてしまいます。
これは上昇トレンド転換直後に新規買いをするときだけでなく、すでに上昇トレンドに転換してからしばらく経過した銘柄を買うときにも当てはまります。
上記のリニカルの例でも、③のように、かい離率が20%近くまで達した状態での新規買いはリスクが高くなります。もちろんそこから上昇することもありますが、その場合は運良くそうなっただけ、と心得てください。
保有銘柄の売却時にかい離率が関係するのは「下降トレンド転換」の判定時のみ
筆者の株価トレンド分析では、マイナスのかい離率が関係するのは、保有銘柄の売却の際に下降トレンド転換かどうかを判定するときだけです。
下降トレンド転換の判断基準は、上昇トレンド転換のときと同様、2~3%のマイナスかい離となったときです。そうなれば、保有株は売却するのが筆者の原則的なルールです。
株価が大きく下がると、移動平均線からのマイナスのかい離率がどんどん広がっていきます。時には、マイナスかい離が20%、30%にまで達することもあります。
しかし、筆者はマイナスかい離が20%になろうが、30%になろうが、あまり関心がありません。なぜなら、よほどのことがない限り、下降トレンド転換と判定したタイミング、つまりマイナスかい離がまだ小さいうちに保有株を売却してしまうからです。
なお、決算発表時期の株価急落などで、保有株のかい離率がいきなりマイナス15%やマイナス20%になってしまうこともあります。でも、それは結果論であり、かい離率が大きかろうが原則は一旦売却するというルールは同じです。
かい離率を気にしないと「高値掴み」の危険性が格段に高まる
かい離率を気にせずに売買するとどうなるでしょうか。端的に言えば「高値掴み」と「底値売り」をしやすくなってしまいます。
ただし、底値売りについては、株価トレンド分析を用いて売買する限り、マイナスかい離が小さい段階ですでに売却が済んでいるはずですから、特段問題にはなりません。ですから、ここでは「高値掴み」の危険性について説明しておきます。
株価には「行き過ぎ」というものが付き物です。そして、行き過ぎた後はその反動も大きくなります。例えば、短期的に株価が2倍になった銘柄が、その上げ幅の半分以上調整することも珍しくありません。
そして最近の傾向として言えるのが、「業績の裏付けのない材料などによる株価急騰の場合、ほどなくして上昇前の株価近辺まで戻ってしまうことが多い」ということです。
以下で、高値掴みになりやすい典型的なパターンについてみていきましょう。
業績の裏付けのない株価上昇時は特に注意
ゼネラル・オイスター(3224) は、11月16日に突如株価が反応しましたが、筆者の知る限りでは業績の裏付けのある好材料が出たわけではないようです。
しかし、株価は翌17日も大きく上昇、そして18日も大きく窓を開けて寄り付いたものの、終値では下落し、大陰線をつけて天井形成の可能性が高い株価チャートの形となってしまいました。
もし、ファンダメンタルの面はとりあえず無視して、株価チャートのみでこの株を買うタイミングを判断するならば、17日の寄り付きであればぎりぎりセーフというところです。
なお、仮に17日の寄り付きがストップ高買い気配などであったならば、かい離率が大きすぎて高値掴みの可能性が増しますから、その時点で買いを見送らなければなりません。
かい離率の観点からみれば17日の寄り付き後、株価が大きく上昇した時点で買うのもすでに遅いですし、18日の寄り付きに買ったなら、その後の急落で目も当てられません。そもそも、18日の寄り付きのかい離率は40%近くに達しているのです。
では、大陰線を引いた翌日の19日に新規買いするのはどうでしょうか。この時点でのかい離率は20%近くとまだ高いものの、18日に新規買いするよりはまだましです。
これに関しては、筆者であれば、増益基調が続き、今後の株価上昇が大いに期待できるのであれば、銘柄によっては新規買いをすることもあります。どうしても欲しい銘柄なら、20%の損失を受け入れるだけの価値がある場合もあり得るからです。
ただし、本例のように、業績の裏付けなく上昇した後ならば、新規買いはしません。
ゼネラル・オイスター(3224) 日足チャート
買う前に「損切りとなったらどうなるか」のネガティブ思考を持とう
筆者は、買う前に「失敗して損切りとなったらいくら損失が発生するのか」を把握したうえで新規買いするというネガティブ思考を持つくらいが丁度良いと思います。無駄な高値掴みを減らし、損切りができなくとも塩漬け株の発生を少なく抑えることができるからです。
損切りができるのであれば多少の高値掴みでも大ケガはしませんが、長い目で見れば明らかに高値掴みを避けた方が有利です。そして、損切りが出来ない個人投資家が高値掴みを繰り返していると、塩漬け株のオンパレードで手も足も出なくなってしまいます。
高値掴みを避けるためには、すでに大きく上昇した銘柄の新規買いは我慢する、そして適切な買いタイミングで買えるように日々投資候補銘柄の株価チャートをウォッチしておくことが重要です。
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