10年本決算は46%増益、利ざや拡大や農村部門の好調が好決算に寄与

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01288 中国農業銀行股フン有限公司(アグリカルチュラル・バンク・オブ・チャイナ)  4.13 HKD
(03/31現在)
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中国農業銀行の2010年12月本決算は、純利益が前年比46%増の948億7300万元と、BOCI予想および市場コンセンサス予想を上回った。主に利ざやの拡大や手数料収入の伸び、コスト管理の成功、貸倒引当金の抑制などが好決算を支えた。10-12月期の純利益は前四半期比1.7%増。営業経費がかさむ一方、利ざやが15ベーシスポイント拡大したことやトレーディング、外為業務の好調、引当金の軽減などが四半期利益の伸びに寄与した。

10年通期決算では、【1】10-12月期にみられた利ざや拡大傾向の加速【2】農村業務部門の好調【3】手数料収入の伸び【4】資産の質的改善――などが前向きの評価を得た。このうち、利ざやの拡大には要求払預金(普通預金など)のウエート拡大や信用引き締め策を背景とした金利決定力の向上が寄与した。預金金利が上期の平均1.28%から下期には1.23%に低下する一方、貸付金利は5.16%から5.27%に上昇した。また、農村部門に目を向けると、期末の貸付残高は期初比26.1%増の1兆5100億元と、融資全体の伸びを6.3ポイント上回り、全体に占める割合は30.4%に達した。預金額も19.0%増と、同行全体平均を0.5ポイント上回る伸び。農村部門では対収入コスト比率も47.69%に低下し、不良債権比率は期末に2.51%に改善傾向を示した(前年同期2.75%)。一方、同行全体の10年通期の純手数料収入は前年比29.4%増の461億2800万元。カード、コンサルティング、決済、eバンキングなどの各種業務が力強い伸びを示した。このほか、資産の質も改善し、同行全体の期末の不良債権比率は2.03%と、9月末の2.08%から一段と低下。不良債権引当率は9月の160%から168%に上昇した。

一方、10年通期決算に示された懸念材料の一つは不動産関連融資の比重の高さ。不動産開発向け融資が期末の貸出残高に占める割合は11.1%と、4大国有商業銀行の中では最も高い水準に達した。さらに不動産担保ローンのウエートも14.9%。中国政府による締め付けを背景に不動産市況が悪化した場合、不良債権リスクが高まる可能性が出ている。また、BOCIは利ざやの拡大ペースに影響するとの理由から、中長期貸付の比重の高さをもう一つのマイナス材料として指摘。さらに配当性向が35%と、4大国有商銀のうち他3行(平均39%)を下回る点にも言及している。

BOCIによると、同行の現在株価は2010年実績PBR(株価純資産倍率)で1.92倍、2011年予想PERで10.10倍の水準。BOCIは農村業務部門の収益拡大や資産の質的改善、さらに利ざやの拡大をプラス材料に挙げながらも、同社株価の先行きに対する従来の強気見通しを中立的な見方に修正している。