筆者が株式投資で実践している手法は、株価チャートと移動平均線を用いて株価のトレンドを把握し、上昇トレンドで買いおよび保有、下降トレンドで売りおよび非保有とするものです(以後この手法を「株価トレンド分析」と呼びます)。

今回は、この「株価トレンド分析」の優位性につき、他の手法と比較しながら説明したいと思います。最近どうも投資成績が振るわないという方はぜひ参考にしてください。

株価トレンド分析は不正確なファンダメンタル分析を補ってくれる

まず、筆者はファンダメンタル分析を用いないのかといえばそんなことはありません。筆者もファンダメンタル分析は実践しているつもりです。

しかし、ファンダメンタル分析が本当に役に立つのは、プロが行うような高レベルの分析をした場合に限ります。

現に、個人投資家が会社四季報や企業発表の業績予想などもとに売買していても、業績予想自体がかなりの頻度で外れるため、失敗が非常に多くなります。会社四季報・決算短信を分析する程度のレベルのファンダメンタル分析では、不正確な判断を下してしまいかねないのです。

プロは会社四季報や企業発表の業績予想を鵜呑みにするのではなく、自らリサーチを行って自身で業績予想を独自にはじき出します。その独自予想と現時点での株価を比較して売買を判断しているのです。筆者も含めて、個人投資家でここまでのファンダメンタル分析ができる方はほとんどいないはずです。

そこで、筆者はファンダメンタル分析に基づき銘柄選択をしつつも、それが失敗する可能性も考慮して、売買タイミングの判断については「株価トレンド分析」により行っているのです。

ファンダメンタル分析だけで売買判断するとどうなるか

では、ファンダメンタル分析のみで売買判断をした場合と、ファンダメンタル分析に株価トレンド分析を併用した場合とでどう異なるか、具体例をあげて説明してみましょう。

ファンダメンタル分析に基づき買い候補銘柄となったA株を買ったものの、株価は意に反して下落し、下降トレンドに転換してしまいました。

下降トレンド転換後の株価の動きは大きく分けて2パターンあります。

  • 株価が早々に下げ止まり、再度上昇トレンドに復帰
  • 下降トレンドのまま株価が下げ止まらず、最終的には買い値を大きく下回ってしまう

(1)ファンダメンタル分析のみを用いる場合

ファンダメンタル分析のみで判断する場合は(ファンダメンタルに変化がない限り)A株を保有し続けることになります。その結果、①の場合は何も影響を受けませんが、②の場合は大きな含み損を抱えてしまうことになります。

確かにファンダメンタル分析の精度を高めれば、②のようなことは少なくなるでしょう。それでも完全にゼロにすることは不可能でしょうし、相場全体が軟調になる「逆バブル」の状態になれば、いくらファンダメンタルからみて株価が割安でも、その状態からさらに株価が下がってしまうのですから全く太刀打ちできなくなります。

ファンダメンタル分析+株価トレンド分析の場合はどうか?

(2)ファンダメンタル分析に株価トレンド分析を併用した場合

株価トレンド分析にもとづけば、下降トレンド転換時にA株を売却することになります。

その後、株価が①の動きになれば、一度売ってしまったA株を再度買い直すことになります。②であれば買い直すことはありません。

この方法の最も優れた点は、②のような株価の動きになった場合(つまり自身のファンダメンタル分析が間違いであった場合)、損失が小さいうちに撤退できることです。一方、①の動きになった場合は、売却時の株価より買い直す際の株価の方が高ければ、その差額分だけ追加的なコストが発生してしまいますが、②になった場合に損失を極小化できるメリットの大きさに比べれば、微々たるものです。

また、下降トレンドの期間が長引くほど、買い直し時の株価が売却時の株価を大きく下回る(つまり安く買い直せる)ことになるため、仮に最終的に当初の買値より値上がりしたとしても、ファンダメンタル分析のみを用いてそのまま保有を続けるより有利になります。

ファンダメンタル分析のみでの売買判断より、株価トレンド分析を併用して売買タイミングを見極める方が、大きな損失を回避できる点をはじめとして優位な方法であると言えます。

なぜ「順張り」が「逆張り」より優れているのか?

株価トレンド分析の特徴の1つは「順張り」です。この対極にあるのが「逆張り」です。

株価にはトレンドがあり、そしてそのトレンドは相当期間続くことが多いのは、株価チャートをご覧いただければ分かります。株価が現時点で上昇トレンドにあれば、今後も上昇トレンドが続く可能性が高く、現時点で下降トレンドであれば、さらに下降トレンドが続く可能性が高いといえるのです。

「順張り」は株価のトレンドに沿った自然な投資行動ですが、「逆張り」は株価のトレンドに逆らった投資行動となります。筆者は逆張りには非常に抵抗があるのですが、個人投資家の多くは逆張りを行っているようです。投資主体別売買動向(投資家別に、株をどれだけ買い越しもしくは売り越しているかが分かるデータ)をみると、個人投資家は株価下落局面で買い越し、株価上昇局面で売り越していることからも明らかです。

「逆張り」は、相当期間続くことが多い株価のトレンドに逆らう方法のため、自分では安く買ったつもりでも、そこからさらに株価が大きく下落してしまうことが珍しくありません。長期的に右肩上がりが続く相場ならば話は別ですが、現在の日本株のように長期的な上昇が疑わしい相場では、逆張りはリスクの高い手法なのです。

さらに、順張りは株価が大きく上昇するときに威力を発揮します。逆張りの場合、保有株を売るときも上昇トレンド途中で売ることになりますが、順張りでは株価が下降トレンドに転じるまでは保有を続けます。すると、昨年前半のように大きく株価が上昇する相場では、非常に大きな利益を得ることができます。

株価が上がったり下がったりを繰り返す日本株のような相場では、株価が上昇しているときだけ株を買い、保有する「順張り」の方が、より効率的に、かつリスクを抑えた株式投資が可能なのです。

株式投資以外のシチュエーションから学ぶ「損切り」の重要性

なお、株価トレンド分析を用いる場合、損切りが必須です。損切りを実行しないと、株価トレンド分析の優位性が失われてしまうからです。特に、直近高値や年初来高値を更新したとき(順張りの場合の重要な買いポイントの1つ)に買う場合、株価がかなり高い時点で買うことになりますから、失敗した際の損失を極小化することが重要です。

損切りの重要性は今さら説明するまでもないのですが、次のように、株式投資以外のシチュエーションでも早目の見切り・撤退という考え方が非常に重要であることが分かれば、改めて損切りの重要性を感じていただけるただけるのではないでしょうか。

戦国時代ならば、戦を仕掛けたものの敵の勢力が明らかに強いような場合、早い段階で撤退を決め、再び出直すのが正しい戦略です。劣勢なのを承知で戦を続けていれば、やがて全滅してしまいますが、「これは勝てない」と察して早目に撤退をすれば、自軍のダメージは最小限に抑えることができ、再度立て直しを図ることができます。

商売においても、例えば脱サラしてラーメン屋を開業したものの、思ったほどお客が入らず、色々な努力をしたものの赤字が続くとなれば、早目に見切りをつけて閉店してしまうのが正解です。開業資金の借金も返さなければならないからといつまでもお店を開け続けていると、赤字が膨らんでどうにもならなくなってしまいます。

損切りなしには株価トレンド分析を用いた売買を行うことができません。どうしても損切りができないという方は、株価が上昇トレンドにあっても高値更新時や株価がすでに大きく上昇してからの買いはできるだけ控えるべきでしょう。そして、1日も早く損切りの重要性を理解し、実行に移されることを強くお勧めします。