日経平均株価は高値を更新したけれど…

9月19日、日経平均株価は16,364円08銭まで上昇、昨年末につけた高値16,320円22銭を更新し、アベノミクス相場が始まった2012年11月以降の最高値をつけました。

ところが筆者には、日経平均株価が高値更新したという実感はあまりありません。なぜなら、ここ最近の日経平均株価の上昇によっても、持ち株の含み益はあまり増えなかったからです。日経平均株価が大きく上昇したにもかかわらず、筆者の持ち株の含み益は逆に減少した日さえありました。

こうした「実感のわかない日経平均株価の高値更新」という感覚は、筆者のみならず多くの個人投資家が抱いているのではないかと思います。

そこで日経平均株価以外の株価指数をみてみると、TOPIXは値上がりこそしているものの、最近は日経平均株価と比べて低い上昇率が続いています。そして、新興市場株の実態を表すマザーズ指数は9月に入ってからほぼ横ばいです。

日経平均株価が大きく上昇した間、個人投資家に人気の高い中低位株や新興市場銘柄はあまり上昇せず、銘柄によっては逆に下落したものも少なくありません。これが実感なき日経平均株価高値更新の背景です。

実態は「先物主導」の株価上昇

このように、最近の株価上昇は、日経平均株価採用銘柄を中心としたものであったことがわかります。

現に、NT倍率は9月に入ってから上昇を続け、9月初めに12.1倍程度だったのが9月19日には12.25倍にまで上昇しています。

そして、最近の裁定買い残高の推移をみると、9月12日時点で約3兆4,400億円となっており、1カ月で7,000億円も増加しています。

NT倍率の上昇とともに日経平均株価が上昇、さらに裁定買い残高が大きく増加している状況は、一言でいえば「先物主導の株価上昇」です。

つまり、日経平均先物にまず買いが入り、現物と先物の間にサヤが生じて日経平均株価採用銘柄の現物に買いが入る(裁定買い)ことにより、日経平均株価が上昇したのです。

このような株価上昇パターンの場合、日経平均株価採用銘柄以外には積極的な買いが入りにくいため、「日経平均株価は上がれど我が持ち株は上がらない」という状況になります。

実は、こうしたパターンは珍しいことではありません。代表的な例が2003~2007年まで続いた長期上昇相場(いわゆる「小泉相場」)です。

このとき、日経平均株価は2007年7月に高値をつけましたが、個別銘柄の多く(特に個人投資家が好む中低位株や新興市場銘柄)はすでに2006年初め頃に高値をつけ、その後は下落していたのです。2007年7月ごろに高値をつけた銘柄の多くは、日経平均株価の採用銘柄で、多くの個人投資家が「日経平均株価が上がっても全然儲からないなあ」と嘆いていたものです。

今後の戦略①「強い銘柄につく」

このように、現在の日本株は日経平均株価こそ高値更新したものの、個別銘柄に目を向けると値動きがバラバラな状態にあります。筆者の見る限り、株価が下降トレンドにある銘柄の方が多いくらいです。

こんなときは「とりあえず強い銘柄についていく」のと「現在弱い銘柄のトレンド転換の芽に注意する」の二刀流でいくのがよいのではないかと思います。

現時点では円安が急速に進んでいることもあって、筆者の持ち株の中で比較的強い動きが続いているのは、機械、電機など円安メリットを享受できる銘柄(大雑把にいえば証券コード6,000番台)です。

「強い銘柄についていく」場合、すでに保有している銘柄が強い動きを続けているならば、株価のトレンドが上昇トレンドを維持する限りは保有を続けて問題ないでしょう。もちろん、急激な株価上昇時には一部もしくは全部の利食いも選択肢です。

そして、「強い銘柄」を新規に買う場合は、その銘柄や株式市場全体の過熱感も考慮した上で慎重な判断が必要です。

建設株の動きをみても分かるように、今まで強かった銘柄がある日を境に下げ始めるというのは頻繁に起こります。そして、下げに転じるその日がいつかを事前に予測することはできません。

ですから、もし買った後の株価の動きが思わしくなく撤退を余儀なくされるとしても、その時のダメージがなるべく少ないようにするべきです。具体的には25日移動平均線からのかい離が大きい銘柄は避ける、市場全体が軟調な日になるべく安値で拾う、株価が25日移動平均線を割り込んだ損切りするなどです。

今後の戦略②「物色対象の変化を見極める」

もう1つの「現在弱い銘柄のトレンド転換を注視」とは、株式市場における物色の対象の変化をいち早くつかむために重要な行動です。

例えば、上で述べたように、9月初めまでは、建設株の多くが綺麗な上昇トレンドを描いていましたが、ここへきて調整局面に入っています。

また、8月初めまでは、新興市場銘柄の主力株やゲーム関連株(ミクシィ(2121)コロプラ(3668)KLab(3656)サイバーダイン(7779)など)が非常に強い動きをみせていましたが、それらの多くはその後下降トレンドに転じています。

このように、いつ物色対象が変わるかは分かりません。現時点では円安メリットのある機械・電機銘柄が株価の上値追いを続けていますが、これもいつまで続くかは分かりません。

筆者は現在約300銘柄の株価チャート(日足)を毎日チェックして変化の兆候がないかどうかを注視しています。皆さんも、持ち株の株価チャートだけをチェックするのではなく、将来的に投資対象となりうる銘柄の株価チャートを定期的にウォッチして、物色対象の変化の兆しを感じ取れるようにすることをお勧めします。

そして、気になっている銘柄の株価が上昇トレンドに転じたならばとりあえず買ってみることです。もしその後株価が頭打ちになってしまっても、再度下降トレンド転換時に損切りすれば、損失を小さく済ませることができるからです。