アベノミクス相場は2013年5月を境に調整局面が続く

2012年11月中旬に始まったアベノミクス相場。スタートしてから早1年半あまりが経過しました。

この間、個別銘柄により株価の動き方はまちまちだったものの、最も多いのが、2013年5月ごろに株価のピークを迎え、その後は高値を超えずにもみ合っている、もしくは下落を続けている、というケースです。

これを基準に考えると、アベノミクス相場は、2012年11月中旬から2013年5月までの上昇局面と、それ以降現在までの調整局面に大きく分けることができます。

株価チャートからの判断では、現在は長期的な上昇トレンドにあります。しかし、長期上昇トレンドといっても、絶え間なく株価が上昇をするわけではありません。1年上昇したらその次の1年は調整、その次の1年は再び上昇・・・といったように、長期的な上昇の間には、何回かの調整局面が訪れます。

そして、その調整局面では意外なほど株価が大きく下落するものです。実際、今回のアベノミクス相場でも、ピーク時の株価の半値以下にまで下がってしまった銘柄が数多くあります。今年に入ってからは、特に新興市場銘柄が大きく下落しましたので、このことは身をもって実感されている個人投資家の方も多いのではないでしょうか。

長期上昇相場といえども調整局面での「バイ・アンド・ホールド」は危険

2013年5月までの上昇局面では、とにかく日本株をたくさん買って、保有しているだけで利益がどんどん膨らんでいきました。2013年5月までは、誰でも簡単に利益を得ることができたわけです。

しかし、2013年6月以降の調整局面において、上昇局面と同じように「バイ・アンド・ホールド」の投資を続けていると、せっかく上昇局面で得た利益を大きく削ることになってしまいます。

もちろん、長期上昇相場であれば、調整局面における株価の下落に耐えて保有を続ければ、やがては株価が回復することになります。それでも、調整局面で想像以上に株価が下落する銘柄が多いことを踏まえれば、調整局面では一旦持ち株を外して、再度買い直した方がよい結果を得ることができます。何よりもいつまで続くか分からない調整局面を、持ち株の下落に耐えながら過ごすのは精神安定上よくありません。株式投資というのは、精神面が安定していないと、思わぬ判断ミスを犯すことになるからです。

突然長期上昇相場が終焉してしまうこともある

そして時には、「上昇局面の途中の調整局面」と思っていたのが、実は上昇局面が終焉を迎え、下落局面に転じてしまうことがある点にも注意しておかなければなりません。

例えば、2006年1月に起こったライブドア・ショックを境に、多くの新興市場銘柄や中小型株は株価の天井をつけ、以降は長期的な下降トレンドに転じました。

日経平均株価やTOPIXはライブドア・ショック後も上昇を続け、高値を付けたのは2007年になってからですが、2006年1月前後に天井をつけた多くの銘柄は、日経平均株価やTOPIXが高値をつけたときも、下降トレンド下での戻り高値にとどまっていました。

ライブドア・ショックの前までは、年間で何億円も稼ぐほど絶好調だった個人投資家も珍しくありませんでした。しかし、ライブドア・ショック後もそれまでと同様の投資スタイルを続けたことにより、彼らの多くは利益を吹き飛ばしてしまいました。信用取引を行っていた個人投資家の中には、利益を吹き飛ばすだけでなく逆に損失が膨らんで借金が残ってしまうケースもあったのです。

筆者はアベノミクス相場がこのまま終焉してしまうとは思っておりませんが、常に頭の片隅で、長期的な上昇相場が終了してしまう可能性も考えておく必要があります。

調整局面をどう乗り切るかが投資成績を大きく左右する

このように、調整局面にあるにもかかわらず「バイ・アンド・ホールド」を続けていると、せっかく上昇局面で積み上げた利益の多くを失いかねないばかりか、場合によっては利益を全額吐き出して損失に転じてしまうこともあります。

ですから、調整局面では、上昇局面で得た利益を「いかに減らさずに乗り切るか」が最も重要になってきます。
そのために役立つのは、やはり株価のトレンドを見極めることです。そして、そのトレンドは日経平均株価やTOPIXなどの株価指数ではなく、保有している個別銘柄ごとに見極めていく必要があります。ライブドア・ショック前後の事例でも説明しましたが、株価指数のトレンドと個別銘柄のトレンドは必ずしも一致しないからです。

下降トレンド転換で持ち株は一旦売却

では、具体的にどのようにすればよいのかを説明していきましょう。

上昇局面から調整局面へ移行する際には、株価のトレンドが上昇トレンドから下降トレンドへ転換します。そこで、下降トレンドの転換を確認でき次第速やかに保有株の売却をすることが望まれます。

日足チャートでトレンドを把握すれば、高値圏で保有株を売却することができますが、トレンド自体が頻繁に転換してしまいますし、「ダマシ」も結構起こります。下降トレンドに転じたと思って持ち株を売却したら、再び上昇トレンドに復帰したのであわてて買い直す・・・ということもよく生じます。

こうした面倒を回避したいのであれば、週足チャートでのトレンド把握でもよいと思います。保有株の売却タイミングは日足チャートを用いた場合よりも遅く(つまり、売却時の株価は低く)なってしまいますが、長期的な上昇トレンド下では、それでも十分な利益を確保できます。そして、日足チャートよりもトレンド転換の頻度が少ないため、下降トレンドに転換したときの信頼度が高くなります。

調整局面であっても株価チャートのチェックは忘れずに

調整局面に入り、保有株を売却したらそれで終わり、というわけにはいきません。長期的な上昇トレンドが続いているならば、調整局面がどこかで終わるからです。次の上昇局面に移行する兆候を見逃さないようにしないと、調整局面での損失を抑えることができても、今度は次の上昇局面で乗り遅れてしまうことになります。

そこで、調整局面入りして保有株を売却した後も、定期的に株価チャートをチェックしておきましょう。調整局面では上昇トレンドにある銘柄が少ない状態が続きますが、再び上昇局面に転じるタイミングでは、個別銘柄が次々と上昇トレンドに転換していきます。この変化にいかに早く気づき、新たに買いを入れることができるかがポイントです。

ちなみに、筆者は日々およそ250銘柄の株価チャートをチェックしていますが、その際の観測では、直近では5月22~23日ごろから上昇トレンド転換銘柄が増え始め、5月最終週が終わったころはかなりの銘柄が上昇トレンドに転換しました(日足チャートベース)。

なお、相場全体(日経平均株価やTOPIXなどの株価指数)が調整局面にあるとしても、保有株全てを売却する必要はありません。保有株のうち、上昇トレンドにある銘柄については、保有を続けて問題ないのです。強い銘柄というのは、相場全体が軟調であっても株価が上昇を続けます。そうした銘柄を売却してしまうのは、逆にもったいないことです。