(1)2014年10月14日の週の相場概況:日経平均株価は続落。

10月14日の週の株式市場も、前週に続き大幅下落となりました。

世界景気、特に欧州景気への不安感の台頭から始まった今回の株価下落ですが、10月14日の週も止まりませんでした。先週に欧州株、アメリカ株が大きく下落しましたが、今週も週初から下落し続け、NYダウは15日に一時重要な節目である16,000ドルを割りました。エボラ出血熱の感染拡大に対する不安も背景にあると思われます。

これを受けて日経平均も続落し、10月14日に前日比364.04円安の14,936.51円となって200日移動平均線を割り込みました。下値抵抗線も割り込んでしまいました。15日は前日比137.01円高となって終値で15,000円台を回復しましたが、16日には15日のNY株安を受けて前日比335.14円安の14,738.38円となりました。前回安値の8月8日終値14,778.37円、ザラ場安値14,753.84円を16日終値14,738.38円、ザラ場安値14,672.55円は割りました。

このように大幅下落しても、まだ底値に到達したかどうかは微妙です。前回の下落局面では、2013年12月30日ザラ場高値16,320.22円からその後の1回目の安値2014年2月5日ザラ場安値13,995.86円まで2,324.36円、14.2%下落しました。これに対して今回は、9月25日ザラ場高値16,374.14円から16日ザラ場安値14,672.55円まで、1,701.59円、10.4%の下落です。17日も前場は安くなっています。

(2)前回の下落と今回の下落の相違点

全くの私見ですが、前回の下落局面(2014年1~5月)では、4月からの消費税増税に対する懸念はあったと思います。しかし、世界景気に対する疑問は今回ほど出ていなかったと思います。また、円安に対する疑問も同様です。

今回は欧州景気の悪化がアメリカに波及することが懸念されています。また、円安による日本の中小企業の経営悪化や実質所得の減少も指摘されています。重要なのは安倍政権が円安に対する疑問を指摘してしまったことです。

2012年11月からの株式市場の上昇と景気回復は、円安を出発点としています。円安が輸出・グローバル企業の業績を拡大させ、それが株価上昇の主因となりました。株価上昇に合わせて、それまで再開発によってじりじり上昇する気配のあった東京の地価が、はっきりと上昇に転じました。民主党政権時代の公共投資も、円安で弾みがついた日本経済を刺激する役割を果しました。その結果、日本経済はある程度の回復を果すことができたと思います。

そして、景気に対して重要な役割を果す地価は、首都圏で持続的に上昇しているだけでなく、地方にも波及し始めています。特に整備新幹線の停車駅がある市町村で地価と家賃が既に上昇しているか、上がり始めており、マンション建設計画がでるなど、ポジティブな波及効果が出始めているのです。東京と地方の地価の差に着目した東京の投資家や外国人投資家の投資需要もあるようです。

ただし、円安になったからといって、直ちに輸出が回復するわけではありません。2009年から4年間続いた1ドル=100円割れの円高の中で、多くの輸出用工場が海外に移転しました。世界の大きな流れは消費地生産主義ですから、海外移転した工場が円安になったからといって日本に戻ることはありません。円安でグローバル企業の業績が改善してきたのは、日本からの輸出が伸びたというよりも、海外工場で稼ぎ出される外貨建て利益の円換算額が増えるからです。例外は自動車や電子部品ぐらいでしょう。

ただし、円安になってそれが持続的であると企業経営者が判断すれば、日本で増産投資をすることになるでしょうが、時間がかかります。既存工場内に新ラインを構築するのは1年でできるでしょうが(既にその動きは出ています)、新工場建設は、例えば電機セクターで企画案があって用地の手当てが済んでいる場合は1~2年程度、自動車セクターで2~3年程度、企画から始める場合は、電機で2~3年、自動車で3~5年かかると思われます。

これが設備投資のタイムラグです。1ドル=100円を回復したのが2013年11月ですから、実はまともな「円安」になってようやく1年経過するところなのです。円安の効果が日本国内の設備投資に結びつくようにするには、副作用があることを承知の上で、円安を長続きさせる必要があると思われます。

また、株価と地価の上昇、即ち資産効果が景気に対して重要な刺激材料になっていますが、これは格差を拡大させます。国民の間に不公平感が出ているかもしれません。ただし、資産効果に頼る以外に景気を回復させる術が乏しいのも事実でしょう。

更に、地価上昇を確実なものにするためには、持続的な公共投資が必要であり、そのためには財源が必要です。オリンピックの準備や、異常気象による災害に対応するためにも公共投資が必要になります。リニア中央新幹線が計画通りにいかない場合は、公費投入の可能性もあります。全くの私見ですが、2015年10月の消費税増税がこの観点から必要だと思われます。政府の対応次第では、建設株などの内需関連株に影響が出る可能性があるかもしれません。

要するに、円安、株価と地価の上昇(資産効果)、景気刺激策としての公共投資、消費税増税はワンセットであり、円安と消費税増税を否定する(例えば消費税増税を先送りする)のであれば、その代替手段が必要になりますが、それが見当たらないのです。例えば、円高傾向になると今回も株価は大幅に下落しました。

(3)とりあえず業績を確認したい

このように今回の下落局面では諸要因が複雑に絡み合っています。このような場合は、相場全体を見渡すことも重要ですが、個々の企業のファンダメンタルズも重要です。業績を確認したいと思います。

来週10月20日の週から2015年3月期2Q決算が始まります。来週の注目決算は、10月21日発表の安川電機、10月22日発表の日本電産です。日本電産は23日午前中に決算説明会を開催し、音声が後日配信されます。

安川電機は日本有数の産業用ロボットメーカーであり、売上地域が日本、米州、欧州、中国、アジアと世界に広がっているため、決算を分析すると世界景気を見る参考になると思われます。

日本電産はHDD用スピンドルモーターから自動車、家電、産業用向けに顧客層を広げています。この会社の決算も世界景気の実相を見る際に参考になると思われます。経営者は強気と有能で知られる人なので、発言内容に注目したいと思います。

また、10月27日の週になると、本田技研工業(10/28)、ダイハツ(10/30)、富士重工業(10/31)、マツダ(10/31)、ソニー(10/31)、パナソニック(10/31)、シャープ(10/31)、村田製作所(10/31)、TDK(10/31)、任天堂(10/29)など、重要企業の決算発表が集中します。

企業の内容は決算を見るのが一番です。来週の決算の内容次第では、株価底入れの第一段の動きが起こる可能性があります。注意して相場に向かいたいと思います。

グラフ1 日経平均株価:週足

(4)中小型株には調整未了感も。ここでも決算を見たい。

中小型株の各指標(東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均、東証2部総合指数)も、先週に続き中途半端な位置にあります。

株価下落の結果、各指数ともにチャート上の重要な節目に到達したか、接近しつつある状況です。節目を示すと、東証マザーズ指数で、800ポイント前後(10月16日終値824.27ポイント)、日経ジャスダック平均で、2,200ポイント前後(同2,168.01ポイント、既に割れています)。東証2部総合指数で3,800ポイント前後(同3,892.51ポイント)です。節目だけを見ると、そろそろ調整終了と見る向きもあるかもしれません。

ただし、この節目の下に下値抵抗線があります。東証マザーズ指数で700ポイント台、日経ジャスダック平均で2,000~2,100ポイント、東証2部総合指数で3,600~3,700ポイントです。過去の経緯を見ると、中小型株は調整するときには下値抵抗線まで下落して調整を終了することが多いため、チャートだけを見ると調整未了感があります。

ここでも決算を見たいと思いますが、中小型株は大型株に比べて決算発表が遅れることが多くなります。主要企業の決算発表日を挙げると、

  • ゲーム:ミクシィ(11/7)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(10/29)、コロプラ(11/12)、
  • 情報通信:日本通信(10/30)
  • インターネット:サイバーエージェント(10/30)、フリークアウト(10/27)、VOYAGE GROUP(10/30)
  • ロボット:CYBERDYNE(11/14)
  • その他:FFRI、トレックス・セミコンダクター(いずれも11月)

となっており、多くの中小型株の決算発表が11月に入ってからとなります。

このように見ると、中小型株は未だ底値を探る展開であり、業績次第の動きとなる可能性があります。業績見通しが不透明な会社の目先の株価の動きについては、少し慎重にみたほうが良いと思われます。

ただし、中小型株の良いところは、会社にもよりますが、大型株に比べて相対的に世界経済の影響を受けにくいことです。株価が大きく下がったところでは、個別銘柄を探す妙味が出ていると思われます。その意味でも業績に注意したいと思います。

グラフ2 東証マザーズ指数:週足

グラフ3 日経ジャスダック平均:週足

グラフ4 東証2部総合指数:週足

グラフ5 東証各指数(2014年10月16日まで)を
2012年11月14日を起点(=100)として指数化

表1 楽天証券投資WEEKLY