(1)2014年7月22日の週の相場概況

日経平均株価は伸び悩む展開

7月22日の週の日経平均は伸び悩んだ展開でした。週初は上昇しましたが、その後はじりじり下げました。ウクライナ情勢、中東情勢と国際情勢が相場の重しになっている模様です。また、2015年3月期1Q決算発表の前なので、決算動向を確認したいという動きもあると思われます。

セクター別には、トヨタ自動車、日産自動車、富士重工業など自動車株がじり高となりました。反面、先週上がった大成建設、大林組、熊谷組などの建設株が反動で下げました。

当面は、国際情勢をにらみつつ、決算を確認する動きが続くと思われます。

グラフ1 日経平均株価:日足

東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均はじり高に

新興市場は日経平均と逆にじり高の展開となりました。1Q決算を前に好業績期待が大きい日本通信、ミクシィ、好業績観測記事が出たデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム、アナリストの高評価があったCYBERDYNE、フリークアウトなどが上昇しました。

投資家の物色意欲が高い模様で、決算、業績見通し、アナリストレポートの評価などで株価が動きやすい展開が続きそうです。

チャートを見ると、東証マザーズ指数、日経ジャスダック平均ともに、一段高を狙う動きになっています。特に日経ジャスダック平均は前回の1月高値を抜いており、上方にブレイクしやすい状態にあると思われます。決算をにらみつつ、前向きに対処したいと思います。

グラフ2 東証マザーズ指数:日足

グラフ3 日経ジャスダック平均:日足

グラフ4 東証各指数(2014年7月24日まで)を2012年11月14日を起点(=100)として指数化

表1 楽天証券投資WEEKLY

(2)特集:2015年3月期1Q決算の見所-決算コメントと今後の注目点(ゲーム、格安スマホ)

ゲーム決算の見所

今回のテーマは、「2015年3月期1Q決算の見所」です。ゲーム、格安スマホ(MVNO)の4-6月期決算の見所を探ります。

まずゲームです。最大の見所は、ミクシィ(8月8日)、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(7月29日)、コロプラ(7月30日)など、ネイティブアプリ大手の決算です。

特に重要なのが、ミクシィです。ガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」は2012年2月の配信開始後、2013年3月に国内のみで累計1,000万ダウンロードを達成しました。13カ月かかりました。これに対してミクシィの「モンスターストライク」は2013年10月に配信開始してから2014年7月に累計ダウンロード数が1,000万件を超えました(ただし、台湾向けを含む)。9カ月でした。「パズドラ」よりも早く1,000万ダウンロードを達成しており、このまま進めば、1年後には2,000万ダウンロードに達していると思われます。

一方で、ミクシィは1-3月期に課金売上高が急増したものの、金額自体はまだ小さく、広告費や開発費の負担が嵩みました。そこで、4-6月期決算で「モンスト」の収益力を測ることができるのです。ちなみに、7月22日(火)の夜から24日(木)の朝までの1日半、アップストアの課金売上高ランキングで「モンスターストライク」が1位を獲得しました。5月、6月にも1位はありましたが、半日程度でした。ダウンロード数が増えるに従って1位の滞留時間が長くなっています。ただし、グーグルプレイでは同時期に3位になっています。今後の業績数字が注目されます。

また、ガンホー・オンライン・エンターテイメントについては、1-6月期営業利益が約500億円になった模様という日経報道がありました。実際にそうなら、1-3月期の営業利益が287億円だったので、4-6月期は営業利益が減ったことになります。7月29日には「パズドラW」を配信開始してライトユーザーを呼び戻す計画ですが、これで課金売上高を盛り返すことができなければ、営業利益が四半期ベースで減少する局面に入ることになります。

コロプラは、アップストアの「魔法使いと黒猫のウィズ」の課金売上高ランキングが上下変動しています。また、7月から配信開始した「白猫プロジェクト」が人気になっています。これが業績数字にどう結びつくか注目されます。

大手3社の決算からは、業界内部もわかってくると思われます。今のアップストアの課金売上高ランキングでは、1位「パズル&ドラゴンズ」、2位「モンスターストライク」、3位「LINEディズニーツムツム」となっています。4位以下は、コロプラ、サイバーエージェント、KLab、バンダイナムコホールディングスなどが入れ替わる激しい競争になっています。これが、大手3社(ガンホー・オンライン・エンターテイメント、ミクシィ、LINE)プラス数社となって成長する構造となるのか、資金力のある大手3社の激烈な競争によって、大手3社以外は弾き飛ばされる市場になるのか、決算を通じて日本のネイティブアプリゲームの将来増が見えてくると思われます。

グラフ5 ネイティブアプリゲーム大手の主力ゲーム累計ダウンロード数(単位:万DL、出所:各社資料より楽天証券作成、コロプラは端末ごとの重複ダウンロードを含む、それ以外はネット表示)

表2 アップストアにおけるセールスランキング(全カテゴリー)

MVNO決算の見所

格安スマホのMVNO(仮想移動通信事業者)の決算にも注目したいと思います。最も注目したいのは日本通信(7月31日)です。韓国LGのLTE対応スマートフォン「LG G2 mini」と日本通信の音声SIMを組み合わせた格安スマホの割賦販売プランを、アマゾンと組み8月1日からスタートします。最低価格は月2,980円(端末価格月1,420円×24カ月+音声SIMと高速データ通信1GB付きSIMカード月1,560円)プラス通話料金(20円/30秒)となります。LTE対応スマートフォンの価格が3万4,080円となり、やや高めですが、LTE端末と格安SIMのセット販売が開始されることは、格安スマホの普及に大きな前進でしょう。

また、日本通信は7月18日付けリリースで、NTTドコモに対して、従来卸契約だった音声通話サービスに関して、NTTドコモの音声通信網と同社の音声通信網との相互接続を正式に申し入れたと発表しました。この相互接続には、NTTドコモのVoLTE(LTE回線を使った音声サービス)を含みます。実現すれば、VoLTEや音声サービスのより多様な料金プランが実現します。

このほかのMVNOでは、インターネットイニシアティブ(8月8日)、ワイヤレスゲート(12月決算、8月5日発表)などが注目されます。

決算コメント

重要な決算がいくつか出ました。日本電産(7月23日)が好業績を発表しました。1Q営業利益は255億円(端数切り捨て、以下同様)(前年比41.6%増)と好調で、通期見通しも上方修正されました(営業利益は通期1,000億円→1,050億円(前年比23.4%増)。主力の精密小型モータだけでなく、車載・家電・商業用、電子光学部品が増益となりました。

今後のポイントは本田技研工業から買収した日本電産エレシスの役割です。ミリ波レーダーユニット、車両挙動安定化制御システムユニットなど自動運転に関連する部品を生産しています。自動車向け電装品メーカーになるのが日本電産の新たな目標です。今後を注目したいと思います。

インターネット広告では、6月24日にマザーズに上場したフリークアウト(9月決算)が4-6月期決算を発表しました。前期は未上場なので前年比はありませんが、1-3Q累計決算で売上高23億6,600万円、営業利益1億5,200万円となっており、通期見通しの売上高31億4,000万円(前年比45.2%増)、営業利益1億3,600万円(46.3%減)は十分達成できそうと思われます(今期が大幅減益なのは、開発費の負担です)。リアルタイムビッディングという新しいインターネット広告技術の会社であり、将来に注目したいと思います。

また、サイバーエージェント(9月決算)の4-6月期決算は、売上高512億円(31.4%増)、営業利益40億円(2.5倍)となりました。好業績ですが、会社側の想定営業利益は約50億円であり、それは下回りました。この要因は、大型プロモーションが4-6月期に集中したこと、新入社員が入ったことなどです。部門別に見ると、インターネット広告事業、ゲーム、アメーバ、投資育成の4部門のうちで、主力のインターネット広告事業が増益でしたが、ゲームは減益でした。ゲームはネイティブアプリでヒット作が出ていますが、ブラウザゲームが横ばいから減少トレンドに入ろうとしていることが響いたと思われます。

また、会社側はアメーバ事業の構造改革を発表しました。事業人員1,600名を800名に減らす計画であり、有期雇用契約の終了や配置転換を行います。これによってアメーバ事業の営業利益を今期予想25億円から来期(2015年9月期)100億円にする計画です。

今期(2014年9月期)の会社予想業績は売上高1,800億円(10.8%増)、営業利益200億円(93.8%増)です。来期も二桁増益が続くと思われます。

一方で問題もあります。インターネット広告市場では社歴の長い会社なので、多角化が進み安定成長していますが、インターネット広告、ゲームで、新旧分野の喰い合いが起こっていると思われます。ゲームではブラウザゲーム(自社プラットフォームのアメーバやグリー、DeNA向け)が減少して、ネイティブアプリ(アップストア、グーグルプレイで購入)が増えるサイクルに入っていこうとしていますが、このため、ネイティブアプリが急成長したほど利益は増えていません。

インターネット広告も、最新の広告技術を使った広告(アドテクノロジー分野)は増加傾向にありますが、単純な枠売りが減少する傾向が業界全体にあります。

アメーバの構造改革を早期に始める姿勢は評価できますが、上記のような「喰い合い」という問題点もあるようです。

このほか、アドバンテスト、ファナックが決算発表しました。いずれもスマートフォン関連が業績を牽引しています(アドバンテストはスマートフォン用半導体向け検査機器、ファナックはスマートフォン向け工作機械)。前期に続き今期1Q決算もスマートフォン向けが大きな役割を果たしそうです。

表3 主要企業の2015年3月期1Qまたは4-6月期決算発表予定日