今日のポイント
- 第1Q(1-3月期)を終えた内外市場では、国(市場)別のリターンに跛行色がみられる。日本株は年初来で下落に転じたが、欧米株、新興国株、米国債、金は堅調を維持。
- 米中首脳会談を控え、貿易戦争や北朝鮮問題が市場の不安要因。朝鮮半島有事を巡ってはシナリオ別相場見通しを纏めた。「メインシナリオ」は短期決着で市場は安堵へ。
- 4月から5月にかけては、トランプ政治やフランス大統領選挙の行方を巡る不確実性も株価の重石。不安要因が落ち着くに連れ、リスクオフ(回避)姿勢は緩和に向かうと見込む。
(1)跛行色を濃くする内外市場
内外市場では、日米欧の政治(日本では森友学園問題、米国ではトランプ大統領の政策運営、欧州ではフランス大統領選挙)を巡る不安に地政学リスク(朝鮮半島不安)が重なり、リスクオフ(回避)姿勢が強まっています。こうしたなか、市場別に跛行(はこう)色が濃くなっており、年初来ではドル円と日本株が下落した一方、米国株、欧州株、新興国株は年初来で堅調を維持し、「世界株安」とはなっていません(図表1)。日本株は、アジア市場のなかで最も流動性が高く、リスクオフ局面で売りが嵩みやすい特徴が災いとなっています。6日の株価急落については、米国で5日に公表された3月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録で、金融当局によるテーパリング(量的緩和縮小)が年内に始まるとの見方が強まったことも株価を押し下げました。一方、米国債(市場指数ベース)や金は、リスク回避姿勢が強まる局面で買われやすく、年初来では堅調となっています。
(2)朝鮮半島の不安も市場の重石
株式市場や為替相場で警戒されている不確実要因の一つとして、「朝鮮半島で有事が迫っている」との観測も挙げられます。核兵器や弾道ミサイルの開発・実験を重ね、挑発的で好戦的な言動を繰り返してきた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の脅威は高まっており、日米両国にとり安全保障上の危機要因となっています。麻生財務大臣は3月31日の記者会見で、「日本の新聞が書いているより(朝鮮半島情勢は)深刻」と述べました。今週開催される米中首脳会談(6-7日)で、トランプ大統領は中国(習近平国家主席)の事前了解を取り付け、韓国大統領選挙(5月9日)までのいつか(Xデー)に軍事作戦を実施し、「金正恩委員長による支配と核攻撃の脅威を取り除く」との観測が出ています。米政府内では1990年代から北朝鮮の強硬姿勢への対応策として軍事的な手段が断続的に検討されてきましたが、歴代政権と比べトランプ政権には断固たる姿勢が窺えます。実際、米国が軍事作戦に踏み切れば、内外株式はいったん波乱含みとなる可能性があり注意が必要です。ただ、「メインシナリオ」として軍事作戦が短期かつ米国勝利で終わるなら、市場は落ち着きを取り戻すと見込まれます。とは言いながら、リスクシナリオ(想定外のケース)やワーストシナリオ(最悪のケース)に発展する可能性も否定はできず、実際の有事では事態の行方を見極める必要があります。もちろん、「緊張」がこれまで通り続くだけで有事が起きない可能性もあります。ただ、1950年代の朝鮮戦争は現在休戦状態であり終戦に至ってない事実に留意が必要です。参考までに、図表2では、有事発生の場合の「シナリオ別相場見通し」を纏めました。あらゆるケースを冷静に想定しておく必要がありそうです。
(3)警戒を怠れない注目リスクイベント
上述したメインシナリオやベストシナリオには「期待」が含まれており、実際に有事が発生した場合は、どのような事態となるか予断を許しません。こうした不確実性が除去されない限り、予想PER(株価収益率)には下げ圧力がかかりやすく、株価(=PER×EPS)の上値は重くならざるを得ません。下記の図表3では、上述した朝鮮半島情勢以外に、4月から5月にかけて市場の動意に繋がりやすいリスクイベント(材料)を纏めました。特に注目すべきは、(1)トランプ大統領が署名した大統領令「貿易不均衡の原因になっている不正行為がないかの調査」(3月31日署名)に続く米中首脳会談(4月6-7日)の結果、(2)フランス大統領選挙(4月23日・第1回投票、5月7日・決戦投票)の結果、(3)4月7日に発表される米雇用統計の結果と5月2-3日開催予定のFOMC(連邦公開市場委員会)で示される景況感、利上げやテーパリング(バランスシート縮小)のペース、(4)5月25日のOPEC(石油輸出国機構)総会で減産措置が延長されるか否か、などが挙げられます。こうしたリスク要因の展開次第で、株式市場が波乱含みとなる可能性があり警戒が必要です。逆に、それぞれの結果が予想の範囲内となれば、株式市場も安堵(アク抜け)して上向き傾向に回帰していく可能性があると考えています。
図表3:4-5月の主要イベントと注目度(一覧)
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