今日のポイント
- 李克強指数や中国の生産者物価指数の動きを見ると、中国景気が2016年1月から回復に転じ、2017年に入ってさらに回復色が強まっていることがわかる。
- 政治不安・円高不安が日経平均の上値を押さえているが、米国・中国および日本の景気回復が日本株に追い風となっている。
(1)日経平均はボックス圏の動きが継続
日経平均は、以下の日足チャートをご覧いただくとわかる通り、18,900-19,600円で、やや膠着しつつあります。
日経平均日足:2016年11月1日―2017年3月28日
世界景気は順調に回復しつつあり、景気・企業業績だけ見ていると、もっと日経平均が上昇しないのが不思議です。一方、世界中に深刻な政治不安が広がり、円高不安も続いています。政治不安だけ見ていると、もっと日経平均が下落しないのが不思議とも言えます。
日経平均は、強材料(景気・企業業績の回復)と弱材料(政治不安・円高不安の広がり)の綱引きで、今しばらくボックス圏で推移しそうです。
(2)米国・中国が世界景気の回復を牽引
2017年に入ってから、世界景気の改善傾向がはっきりしてきました。GDP規模で世界第1位の米国と2位の中国の回復が、世界経済の好転に寄与しています。
中国景気は、2015年10-12月が大底で、2016年に入ってから回復トレンドに入りました。2017年も、改善が続いています。それが、李克強指数【注】の動きに表れています。
【注】李克強指数:中国の李克強首相は、首相になる前の2007年に「中国のGDP統計は信頼できない。鉄道貨物輸送量・銀行融資残高・電力消費の変化を見た方が実態がわかる」と語ったとされる。その話を受け、鉄道貨物輸送量25%、融資残高35%、電力消費40%の構成で作られた指数。中国経済の実態をよく表していると評価されている。
李克強指数および中国GDP成長率(前年比)の推移:2007年1月―2017年2月
李克強指数を見ると、中国景気が以下のように推移してきたことがわかります。
- 2008年にリーマンショックで悪化。
- 2009年は巨額(4兆元)の公共投資実施で急回復
- その後、2015年まで低迷。
- 2016年以降、回復が継続。
中国景気の現状は、中国の生産者物価指数にも表れています。生産者物価の上昇は、中国経済の体温上昇を示し、下落は体温低下を示します。以下の通り、生産者物価指数は、李克強指数と、ほぼ同じ動きをしています。2012年以降、マイナス圏に沈んでいましたが、2016年から中国経済の回復を映して、大きく上昇しています。2017年2月には、前年比+7.8%に達しています。
中国生産者物価指数(前年比):2007年1月―2017年2月
中国には経済統計が操作されているという疑念が常につきまといます。中国国家統計局が発表するGDP統計を見ていると、いつも安定的に高成長が続いていますが、それを鵜呑みにするわけには行きません。
一方、日本ではいつも「中国景気が悪くなる」という報道が目立ちます。中国景気が構造問題を抱えていることを問題視する内容が多いが、必ずしも短期的な中国景気の実態を表していません。
私は、中国景気の実態は、李克強指数や生産者物価指数に加え、中国でビジネスを行っている日本企業の声から、判断しています。現在、李克強指数の回復が続くだけでなく、中国でビジネスを行う日本企業から、中国での業況改善の声が聞かれます。私は今、中国景気は回復歩調にあると見ています。
(3)なぜ今、世界景気が好転するのか
資源安メリットが、世界景気にプラス貢献するタイミングに入ったと考えています。資源急落の直後は、資源国だけでなく、資源利用国にもマイナス影響が及び、世界景気を悪化させます。ただし、資源急落から1-2年経過すると、世界は資源安ショックから立ち直るだけでなく、資源安メリットが世界経済の拡大に寄与するようになります。
これは、過去にも経験があることです。1980年代前半は、オイルショックが終わって原油価格が大きく下落した時です。1987年は、原油急落によって、産油国からのプラント受注が大きく減少し、先進国の景気も悪化しました。原油安が世界景気を悪化させているという意味で、「逆原油ショック」という言葉が広がりました。ところが、逆原油ショックは、1年しか続きませんでした。1988年になると、世界経済は、資源安メリットから好調に転じました。
今、同じことが起こりつつあると思っています。世界経済は、資源安ショックから立ち直りつつあるだけでなく、逆に資源安メリットを享受し始めています。
日本も中国も、資源を輸入して利用する国です。資源安メリットが、経済に恩恵を及ぼしていると考えられます。中国経済はさまざまな構造問題を抱えていますが、当面、景気が持ち直す局面が続くと考えています。
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